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茶川ルート

じっと茶髪の彼を見つめていると、ぱちりと目が合う。

すぐにそらされたけどドキりと心臓が高鳴った。


「あれが男…?」

なぜ魔女の国にはいないのか、とても不思議だけど今はどうすればいいかを考えよう。


しばらく街を歩いていたところ学校の先生が向かえに来てくれて、道中は一波乱あったけど住む家まで案内してもらった。


おかげというのはおかしいけど委員長というのは名前ではないと知ることが出来てよかった。


夜の道を歩いていた所、一人で歩く茶川くんを見かけた。


こんな時間に人間が出歩くのは危険ではないか、声をかけなくては。

しかし、追い付くことは出来なかった。


菜園時君の屋敷から出てきたところ、茶川君とバッタリ出会(でくわ)した。

少しこちらを睨んでいるようだが、何かいけなかったのだろうか。


「まあお屋敷に住んでいるお嬢様なら菜園時と知り合いでもおかしくないか…」

一人で理由を考えて納得したようなので、説明する必要はないらしい。


「そういえば昨日の晩、家の近くで茶川君を見かけたんですけど…夜道の一人歩きは危険では?」

「ああ…塾の帰りだよ。ていうかそういう君も夜道を歩いてるってあたり危ないのは一緒じゃない?」

…そうかな?ああ、人間の世界では魔女もを使えないから、確かに危険だと思った。


「あと、同い年なんだから敬語はいらないよ普通に話してくれる?」

「わかった」

ですます口調を使わないと素が出て王女だとバレてしまうんじゃないかと、思っていたけどこれが普通なんだ。


「じゃ俺は買い物があるから」

「うん、さようなら」

お互い手を降って、別方向へ歩いた。


--


「なんか、騒がしい」

お祭りでもやっているのだろうか?


「おはよう」


茶川くんが後ろから声をかけてくれた。

「菜園時が登校してきたから、それだと思うよ」


「なんで?」

菜園時さんが学校に来たから、どうして騒いでいるの?


「菜園時が登校しているなんて珍しいから」

はっとして、土曜日に言われたことを思い出した。

たしかに今まで来なかった人がいきなり登校してきたら驚くのも無理はない。


「まあ、あいつが登校してきた理由はなんとなくわかるよ」

「理由?」

何か目的があるのだろうか?


「…君が来たから?」

「え?」


「アイツとは幼稚園のときからずっと同じだったんだけど…とは言えアイツのことを何でもわかるわけじゃないし…」

「茶川くん…」

なんだか寂しそう。


「早く教室入ろうか」

「うん」


文字がわからないまま放心して放課後。


「ちょっといいかな」

「顔かしてよ」

5人くらいの集団が私の手を引く。


用件も言わずに、なんて失礼なんだろう。


「あんた今朝は茶川くんと楽しそうにしゃべってたよね?」

「クラスメイトだからって調子のんなよっつーの」

「マジ腹たつんですけど」

顔も知らない女子がベラベラと私が茶川くんと話をしたことに文句を言う。


「百桃さん先生が…」

先生に頼まれて私を呼びに来たのか、茶川くんが現れた。


「茶川くん!」

「君達…なにしてるの?」

「ちっ違うのよ茶川くん!?」

「何が違うの?集団で転校生を虐めてるようにしか見えないけど」

「私達は茶川くんのために…」

「は?なんのために俺のクラスメイトを揖斐ってるの?」

「ほっほら茶川くん委員長で忙しいから…」

「転校生のシツケはあたしたちが…」

「躾って…君達頭おかしいんじゃない?思い上がりもいいとこだよ」


「だって茶川くんの彼女はあたし達ファンクラブの中から…」

「ファンクラブってなに、俺君達のこと全然知らないんだけど…」


茶川くんは私の手をひく。


「転校生の面倒も委員長の仕事だし、取らないでくれる?問題ふっかける人はクラスメイトだけで手一杯なんだよね」


そのまま連れていかれた。


教室につき、繋がれた手をはなされた。


「茶川くんは、崇拝物アイドル?」

「違うよあれはあの人達が勝手にやってるだけ」


茶川くんは嫌そうな顔をしている。


「ごめんなさい」

「別に君は悪くないよ」


チャイムが鳴り、私と茶川くんはそれぞれの席についた。


授業も終わり、下校時間になった。


茶川くんは委員長の仕事があるので、まだ帰れないようだ。


「さようなら」

「うん、また彼女たちに会わないように気をつけて」

茶川くんが、“じゃあ”と言って軽く手をふってくれて、嬉しい―――。

私もふり返して、教室を後にした。

--



「あ、茶川くんだ~家庭科のクッキーあげたい!」

「抜け駆けは禁止よ!」



それにしても。なぜ茶川くんはあんなに彼女達に好かれているのだろう。


まさか…インキュバスの類いにとりつかれているのだろうか、調べてみよう――――。


茶川くんの背後にこっそり回る。


さあ目を閉じて探りを――――。


「…何してるの?」

茶川くんが、呆れた顔でこちらを見ている。


「しまった…!」

探る前に本人にみつかってしまった。


「まさかとは思うけど君は違うよね」

「なにが?」


茶川くんの手には大量のクッキー袋、周りにもクッキーの袋が落ちている。


「私は家庭科のクッキーは作ってないよ?」


焼けた甘い菓子の芳ばしい匂いは、お菓子を食べたことのない私には毒なのだ。



「君も、菜園時に近づくために僕にすりよるの?」


もしかして、茶川くんが女子に囲まれていた要因は、菜園時さんだったのだろうか。


私には彼女達の考えはわからない。

だから断定はできないけれど。


「どうして?」


あの女子達の様子からはとてもそうは思えなかった。

みんな茶川くんが好き、そう見えた。


「僕は昔から地味で、学力でも家柄でも菜園時には敵わなかった」


茶川くんは過去を語りだした。


茶川くんは菜園時さんと幼馴染。

大企業の御曹司の彼にいつしか、子供の頃のように仲良く接することができなくなった。


それで自分に近づく人間を、菜園時さん目当てだと疑念を抱くようになったらしい。


「私はわざわざ茶川くんを介さなくても

菜園時さんとはお友だちですよ」


「そうだね」


茶川くんが、一瞬目を見開き、笑う。


何がおかしかったのか、解らないけれど、誤解はされていない。


ともかく、よかった。茶川くんがとりつかれているか確認するなら

魔女に変身してから近くにいけばいいのだと気がついた。


ただの人間には魔女アイテムで姿を消した私は見えない。


それをうっかり忘れていた。


ということで、茶川くんの元へ走る。



彼は公園のベンチに座りながら手に収まる程度の軽そうな本を読んでいる。

城の本棚には重たく分厚い本しかない。

こんな書物もあるのか、珍しい。


顔の前に手をやっても反応がない。


「風…?」


空気抵抗を感じたらしく、茶川くんはキョロキョロした。


これではっきりした。彼は正常、とりつかれていない。


私は一先ず帰宅する。

部屋に戻り、ソファに座りくつろいでいると、指に違和感を覚えた。


いつもクリアタイプのリングをしていた。


あれがないと変身できないのだが、指からそれがなくなっている。


道中どこかにおとしたに違いない。


どうしよう―――――


先ほど行った場所へいく。


「……」

よく目を凝らし、地面を探してみても指輪は落ちていない。


違う場所だろうか―――――?


なんだか嫌な気配を感じる。同族のようだが、少し異なる力。


「誰!?」


「ククク……お初にお目にかかります。魔女姫<プリンセス・ミルフィナ>」


白き魔力のオーラをまとった銀髪の青年がぼんやりとした空間の中から現れた。


そういえば大昔に魔法使いの女と男が敵対し、国を分かって、そうして互いに別々の空間に国を作ったと聞いたことがある。


私の国が魔女<マニェ=ウィテール>国だから彼は恐らくそちら側の“魔男<マナン=ウィザール>国”だ。


「――――我等に仇なす魔女に、制裁を加えん」


銀髪の青年は杖を構える。ここは変身して――――

しまった。指輪がないのだった。


「……百桃さん?」

「……茶川くん!?」


よりによってこんなときに、どういいわけしよう。


「あの、彼はついさっき出会ったばかりの知らない人です!」

あからさますぎただろうか、なんだか変に慌ててしまった。


「ふ……」

銀髪の青年は、不適な笑みを浮かべると、一瞬で姿を消した。


「いまのはいったい……?」

「な、なんだったんでしょうね……」


訝しんでいる茶川くんに私はどうごまかすか悩む。


魔女が正体を知られたら、その者を消すか下僕にする。

そうでなければ、正体を知られた魔女が死ぬ。



◆どうしよう?

〔話をそらす〕

→〔真実を告げる〕


茶川さんを殺すなど論外だし、下僕になんて考えられない。

それに私が魔女なんて話しても信じるわけがない。

――でも、彼には私のことを話してしまいたい。


「あの、茶川くん」

「なに?」

「指輪のこと、本当にありがとう」


親愛を込めてハグすると、彼が動揺しながら後ずさった。


「外国ではこれが普通なんだろうけど……こっちじゃ男に軽々しく抱きついたりしたらダメだよ」

「わかった。重々しく抱きついたらいいの?」


唖然としながら茶川くんが外へ出た。


「あのね、聞いてほしいことがあってね」

「小学生の日記みたいな語りだしだね」

「……実は私、魔女の国から来たの~なんて!」


変な冗談は止めろよ。と怒るか、頭がおかしいと呆れられるのか恐る恐る彼の顔を見た。


「……そうなんだ」


茶川くんが何やら切なそうな顔をしている。


「え、冗談だろケラケラ、魔女なんているわけねー……とか言われると思ってたんだけど」

「いるんでしょ?」


真面目でファンタジーを信じなそうな彼が何を血迷ったのか魔女の存在に期待なんて菜園時さんみたい。


「信じてしまうんですか?」

「なら嘘なんだ」

「……いえ実は」


正体を知られた場合の説明をする。


「ですから知らないフリをしたほうがお互いの為に……」

「わかったよ……僕は会った時から薄々気づいてたけどね」


茶川くんは意味深な一言を残して去った。



なぜ私は彼に話してしまったか、どうして彼があんなことを呟いたのか、ベッドの上で悶々と考える。


「なぜ、彼のことが気になって眠れない……」


私は彼の前で変なことばかりして、いつも迷惑をかけてしまう。


◆やはり距離をとるべきかしら?

→〔とる〕

〔とらない〕


これ以上の迷惑をかけるわけにはいかない。

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