6巻
それからはサラのターンだった。
サラが最初にしたことは、貴族の再雇用だった。
だが、官吏達はこのことに猛反発。
謀反者を政治に関わらせるわけにはいかないと、大合唱で反対した。
たしかに筋は通っていたので、サラも苦戦していた。
そこで役に立ったのが、俺の特殊能力、武将の能力を数値として認識できる能力だ。
俺は元貴族を貴族として登用するのではなく、官吏として登用することを提案。
元貴族の中で、官吏として働ける能力がある者を選抜し、職務にあたらせた。
しかも、選抜した元貴族の能力値は50代強~60代の人間に限定して、その辺の官吏よりも仕事ができることを証明し、官吏の抗議を黙らせた。
誤算もあった。
選抜したせいで、登用できた人数が少なかったこと。
能力値が高い者を採用したかったが、元貴族のなかで有能だったであろう人は、先の反乱で処刑されていた。
そして、俺とサラは新しく採用した元貴族達を親衛隊として編成し、サラを親衛隊隊長とした。
さらに、サラは親衛隊を使い、官吏達のこれまでの不正の情報を集めだした。
だが、この情報は今すぐ使えるものではない。
王である俺がサラ側の勢力に居ても、官吏側の力の方が大きかった。
そのため、今告発しても官吏によって握りつぶされることは明白だった。
この情報は後への布石である。
サラはさらに緊縮財政を実行した。
要は無駄を削り、節約しようということだ。
これにも官吏達は大反対。
しかも、反対したのは官吏達だけでなく、他の城に仕える者達も反対した。
それでもサラは粛々と進めていく。
だが、一方的な取り決めは不満を募らせていった。
そして、大規模なデモに繋がってしまった。
「リストラ反対!」「「「反対!!!」」」
「権力の横暴だ!」「「「横暴だ!!!」」」
「女性は大事に!」「「「大事に!!!」」」
「牛乳女!」「「「牛乳女!!!」」」
「誰だ!俺はそんなこと言ってないぞ。」
「殿下!!!デモの先頭で何をやっているのですか!!」
セナが近づいてくる。
「だってお前が俺の話を聞かないから。」
「いいえ、しっかりと聞きました。聞いたうえで却下したのです。」
「ふざけるなよ!!宮女のみんなを里に帰すなんて俺が許さない。」
後ろでは宮女が声援を送ってくれる。
「殿下、がんばってー。」
「殿下、かっこいい。」
「殿下、男前。」
「引っ込め、牛乳女。」
ピキッ
「誰が牛乳女ですか?」
サラの顔が鬼の形相になっていく。
「待て、俺は言ってない。」
「では、誰が言ったのですか?」
「それは・・・」
後ろを振り向こうとすると。
バッ
宮女達は一斉に俺を指差した。
まさかの裏切り!!
「殿下、覚悟はできてますよね。」
サラは刀を抜いてさらに近づいて来る。
怖い、だが
「命を懸けても、守るべきものが俺にはあるんだ!!!」
ハーレムは男の夢。
それを手放すなどできるものか!!!
気づけば、サラの間合いの中にいた。
サラは勢いよく刀を振りかぶる。
ふっふっふ、想定の範囲内だ。
まさにテンプレート通り。
どうせ、刀は俺の目の前か、首の手前で止まるにきまっている。
さあ、来い。
ゾクッ
ズバン
サラは刀を振り切っていた。
生存本能が一瞬早く発動したおかげで、生き残ることができた。
「ちっ」
「サラ、お前、俺を殺す気か。俺は王だぞ。」
「あん!!」
「調子に乗ってました。本当にすみません。許してください。」
2度目の土下座である。
宮女達はサラの怒気に恐れ成したみたいで
「お母さん、元気かな」
「仕事、どうしよう」
「婚約者はまだ待っててくれているかしら」
こうして、俺のハーレムは崩壊した。