2巻
結論から言おう、夢ではなかった。
だが、現実でもなかった。
禅問答をしたいわけではない。
俺は別世界に飛ばされ、この国、覇国の王と入れ替わったようだ。
姿かたちは変わっていないのだが、記憶は共有しておらず、自身の記憶しかない。
それと、別世界と言っても魔法が使えたり、モンスターが生息しているわけでもなく、多少の違いこそあれ元の世界と似ていた。
この世界は日本での中世~近世の文明レベルに近い。
文化は地球の各文化をごちゃ混ぜにしたような感じだ。
ちなみにここでの俺の名前は、ルドラス=グローデンⅢ世で殿下と呼ばれている。
この世界に来て1週間、俺はこの世の栄華を堪能していた。
大広間
俺の目の前には、とうてい食べきれないほどの豪華な料理の数々。
そして両脇には絶世の美女が終始、微笑みながら酒を注ぎ足し、料理を食べさせてくれている。
前方では、美女たちがレースを主とした際どい服で舞い、旅芸人による芸が行われている。
今やっているのは、ライオンによる火の輪くぐりだ。
まさに、酒池肉林の言葉がふさわしい。
これが毎日行われているのだ。笑うしかない。
「殿下、今宵も夜伽の者をご所望にならないので?」
贅肉たっぷりの男がいやらしい顔つきで話しかけてきた。
宰相 李新
統率34武力16知略71政治76
これは、俺がこの世界に来て発生した、特殊能力のようだ。
視認した人間が武将、もしくはその素養がある者の能力が数値化される。
歴史シミュレーションゲームをしたことがある人なら、なじみ深いと思う。
「ああ、気分が乗らなくてね」
俺はまだ童貞を卒業していない。
この体は入れ替わる前に王様がやりまくっていたらしいが、俺は経験していないのだから童貞で間違いない。と思う。
では、なぜ童貞を卒業していないか。
選り取り見取りだからである。
幼女から熟女、美人系からかわいい系までなんでも揃っている。
正直、どれから手をだせばいいかわからない。
どのプラモデルを買えばいいか解らず、悩みまくっていた子供時代を思い出す。
下世話なことを考えていると、トイレに行きたくなった。
無言で立ち上がる
「殿下、どうなされたので?」
「厠に行ってくる。」
「それでは、ご一緒いたしましょう。」
なにが悲しくて、太ったオッサンと連れションに行かないといけないのか。
トイレに行く途中、中庭で何か作業をしている女を見つけた。
俺はその女を凝視した。
確かに美人であるが、それが理由ではない。
女
統率91武力88知略70政治61
能力の高さが桁違いだった。
ゲームでこの能力値なら、驚愕には値しない。
もっと上がごろごろいるからだ。
だが、この世界では違う。
だいたい、武官なら統率・武力が、文官なら知略・政治が50代がほとんどで60代が少数。
70代は横にいる宰相しか見たことがない。
女はこちらに気づき平伏した。
「おい、宰相、あの女は?」
「どれでございますか。あーあれは、没落貴族の者で、行き場がなかったようなので下女として雇っております。あの者がどうかなさいましたか?」
「いや、そのなんだ、あの者になにか公務をやらせてみてはどうだ?」
あれだけ能力が高いのに、仕事が庭掃除とはかわいそうだ。
「公務ですか・・・・。(にやぁ)なるほど、わかりました。後はこの宰相めにお任せ下さい。」
宰相には何か考えがあるようだ。
ひとまず任せることして、その場を後にした。
その日の夜 寝所
杉浦幸太は悩んでいた。
あー、そろそろ決めないとな。
誰がいいだろう、初日にムネを揉んだ和風美女のハルちゃんかな。
それとも、メガネ図書委員風のユキちゃん。
ロリ巨乳のミクちゃんも捨てがたい。
う~ん、う~ん、ん~
ピコーン!ひらめいた。
3人一緒にやればいいのではないか。
そうだ、心は新兵でも体は将軍級なのだ、やってやれないことはない。
それに初体験が複数というのもなかなかフフフフ。
ゲスな妄想をしていると、襖の奥から声を掛けられた。
「殿下、起きておいでますか」
「?ああ、起きてるぞ」
こんな時間に宰相が何の用事だ。
「お約束したとおり、夜伽の者を連れてまいりました。」
約束?なんのことだ、そんなことした覚えはない。
「・・・し、失礼します。」
白い布で作られた薄い服を着た女が入ってきた。
庭にいた女だ。