おうちで待ってる。sideSINⅢ
急ぎ足で家に帰る。
玄関には見慣れているイブの靴。
「ただいまー!」
「「おかえり」」
イブと母の二重奏の返事。
就職しても別居の必要を感じなかったので、親と未だ同居中だ。
そして、イブの家は家族ぐるみのつきあいのご近所さんなので、離れるなんて気持ちはこれっぽっちもなかったし。
母とイブは仲良しで俺がいようといまいとうちの玄関はフリーパス。
むしろ、うちのリビングにイブが標準装備になったら………いい。
「それで、メールで言ってた渡したいモノってなんだ?」
物思い(と、いうか妄想)にふけっていた所に本題を切り出され、
「ああ、そうだったね」とちょっとあわてた。
開けた荷物…それは
猫耳カチューシャとぷにぷににくきゅう付き猫手袋。
これを付けたイブに『おかえりにゃさい』と迎えてくれるのを妄想した………いい。
ソファの上に寝ころぶイブも妄想した……すごくいい。
「これをどうしろと言うのだ」
「どうしろって、つけてみて?」
ほら、このにくきゅう。ぷにぷにが気持ち良さそうだよね?
そう言った途端、イブに脚払いを掛けられた。
ひっくり返って、イタタタタターとか言ってるうちに裏にひっくり返されうつぶせにされた。
「シン…もっといい感触があるとは思わないか…?」
低い声色に、あれ?になった。
気に入ってもらえなかったかな?
背中に当たる感触は足の裏。もっと言うと踵。踏まれちゃってるよ、俺。
肩胛骨の内側当たりをごりごりごりと思いっきり抉るように踏まれる。
「あ!あああああああああああっっっっぁああああぁあああ」
痛いっていうか、仕事帰りで凝ってる背中にイタキモチイイ刺激に、変な声が出てしまった。
ひとしきり踏んづけて満足したのか、
「帰る」と言ってイブは行ってしまった。
静かになったリビングに
「真…あんたが喘がされてどうすんのよ…」
と母にため息混じりに呟かれてしまった。