ゴールデンな最終日
「ゴールデンウィークです~~!!」
やたらとテンションの高い波留。なんなんだろう、ゴールデンウィークの威力は凄まじい。
「で、最終日に一体なによ」
「ショッピングに付き合って~~!」
語尾の“~”とビックリマークは何だ。しかも、普段は“買い物”っていうくせに、こんなときだけムリして“ショッピング”とか言う波留に、得体のしれない萌えを見たのは仕方ない。
「何買うの」
服屋さんに入り、きょろきょろとあたりを見ている波留に声をかけてみる。
「この服…」
波留が手にしたのは、ありえないくらい透けたワンピース。
キャミソールなんかを下に着るのだろう。同じものを着ている店員さんの肩からド派手なピンク色が見え隠れしている。
「波留にはまだ早い」
店員さんは大人だから似合うけど、まだ中学生と言っても通るくらいの小さな波留では着こなせそうもない。
「いや、ただすごいねって」
しょぼんと肩を落とす波留が、とても小さい。
「そっか、なんかごめん。で、何を買うの」
よしよしと頭を撫でると、波留は上目づかいでポツンと
「ワンピース」
と呟いた。
あーでもないこーでもないと選ぶこと、約30分。
「これは!」
バッとハンガーを差し出すと、波留はキラキラと目を輝かせだした。
私は差し出したのは、ふわりと子供っぽく丸まったフォルムのワンピース。薄い紺色で、襟には白い糸で花柄が刺繍してある。袖は短めで、いかにも活発な波留にはぴったりだと思った。
試着してみると、私の見立て通り、波留によく似合う。
試着室まで案内してもらった店員さんもベタ誉めだった。
「お買い上げ、ありがとうございます」
袋に入れてもらったワンピースを嬉しそうに眺める波留は、私までニヤけてしまうくらいの笑顔をしていた。
家に帰ると、どっと疲れが出た。波留のワンピースのために、一体何軒の店を回っただろう。
目を閉じると、笑顔の波留が浮かんでくる。
あの子のための疲れなら、こんなのも良いか。
ゴールデンウィーク最終日に、私は疲れ果てて眠ってしまった。