波留ピンチ
生理痛のお話です。
苦手な方はご注意ください。
「髪、だいぶ伸びだね」
ふわふわとした波留の髪をいじりながら、ポツンと呟いた。
今日の波留は、珍しくおとなしい。それもそのはず、今日は女の子デーらしいのだ。
お腹が痛いと泣いて、朝から大変だった。とりあえず今は、お腹を冷やさないようにココアを飲ませ、タオルをお腹に当てさせている。
「まだ、痛い?」
首を傾げて聞くと、
「瑞穂、可愛い」
波留は、痛さで頭がヤられてしまったようだ。
「波留、薬飲みなさい」
私は市販の鎮痛剤を出し、波留の目の前にぶらさげると
「薬、嫌い」
ポツンと、波留が呟いた。弱々しくて、悲しそうな声。波留は相当、辛いらしい。
「ねぇ、波留。おうち、帰ろうか?」
いつもハイテンションな波留が、たかが生理痛でこんなになるなんて。不安と気まずさで、わたしまで倒れてしまいそうだ。
「ね、帰ろう」
小学生や幼稚園生に言い聞かせるみたいに、わたしはゆっくりと言う。
波留はコクンと、首を縦に動かした。
波留を支え、自宅までとぼとぼ歩く。ふらふらと今にも倒れそうな波留を歩かせるのはどうかと思ったが、あいにく両親が共働きでいないのだとか。
「波留、もうすぐだからね。大丈夫?」
声をかけても、返答はない。俯いているせいで、表情が見えないから余計に不安だ。
やっとの思いで家にたどり着くと、波留に鍵を開けさせ、中に入った。実は、波留の家に来るのは今日が初めてだ。
「波留、部屋どこなの」
聞いてみても、波留はなにも答えない。
「波留」
小さく揺すると、波留はずるずると玄関に倒れこんでしまった。
それからは、小さくて軽い波留を、とりあえずリビングのソファに運び込んだ。でも、何だか寒そうにしていたので、勝手ながら布団を出したり、お湯を沸かしたりさせてもらう。そうこうしているうちに午後6時になり、両親が帰ってこなかったので、置き手紙を残して帰らせて頂いた。
波留、大丈夫だろうか。
わたしは不安に襲われつつも、家に帰った。