蘇生魔法
スカイは、食堂のカウンターで
料理が入った大皿を受け取った
「スカイさん何時ものです、それとこの前にリクエストされた物です
スライスして、油でカラッと揚げたイモです
厨房の人間には、好評でした
間食には良いですね」
「そうですか、それは良かった
何時も有難うございます、今度からそれも一緒に出してください」
「畏まりました」
人も疎らな時刻に、スカイはテーブルにつき
何時ものように、食事をはじめた
スカイは、食事の合間にトーマスから勧められ借りうけた
組合保有の治療師専門書を読む
(これまでの、俺の魔法薬は何だったんだっていう位
効果は絶大だな、でも手順が面倒だな
もっと、簡単だと思ったんだけどな)
何時ものように、トーマスはスカイの目の前に座る
「スカイ様、またお食事中にすいません
治療師専門書読んでいただいているようで
安心いたしました、
早速なんですが、理論よりも実践という事で
蘇生魔法を施して頂きたいと
早速、依頼が舞い込んできましたもので
こうして伺ったわけです」
(やっぱり、こうなるんだよな
トーマスさんが意図も無く
治療師専門書を渡すはずが無いよな
しかし素人の、俺に出来るのかね)
「何処に行けば、よろしいんでしょうか」
「既に迎えは来ておりますので
御心配無く、お食事を終えましたら
玄関前の馬車へお願いします
では、私は先に行って準備を整えますので
お先に失礼いたします」
スカイは、急ぎ食事を終えると
工房へと、急いで戻った
皮の鞄を、棚から取り出すと
治療師専門書だけを詰め込んだ
(なんで、戻ってきたんだろうな
相当俺も混乱してるらしい、向こうで必要な物は用意しているだろうし)
スカイは、急いで階段を降り
玄関前に停車している
装飾が少ない黒色の、馬車へと乗り込んだ
馬車は、スカイを乗せると帝都の道を駆け抜る
(案外揺れないんだな馬車は、訂正やっぱり揺れるな)
そして、帝都中央病院の敷地にスピ-ドを緩める事無く
到着した
スカイは、馬車から下りると病院職員に案内されるがままに
ある一室へと、案内される
スカイは、ベッドの遺体を確かめた
(やっぱり、魔法騎士隊の隊員だよな
どう見ても、まるでまだ生きてるみたいだな
魔法で体の時を止めてるのか
今朝早く、亡くなったと聞いてるけど
死因は、鋭い刃物による大量出血か
スパッと綺麗に切れてるな
俺は素人だから、死因は詳しくは分かんないけど
組合に頼むとは、やはりリスクを考えたんだろうか
蘇生魔法を、失敗する可能性も有るし
騎士一人の為に、態々リスクを冒す必要は無いと判断したんだろう
しかし、対外的には蘇生魔法を施したという事実が必要だった
所詮騎士なんて、変わりは幾らでも居るってことか)
スカイは、遺体を大きな部屋へと移動すると説明を受け
病院職員に案内される
病院側から、この事は他言無用でお願いすると念を押される
既に蘇生魔法を行うという話が、病院内で出回ったらしく
多くの見学者が、少し離れて椅子に座っていた
(他言無用って言っても、病院側の人間は良いわけだよな
まあ、当たり前だよな
ざっと50人が入っても、まだ余裕があるな
この部屋はでかいな
流石に、蘇生魔法専用の部屋だな
見学スペースもでかいし)
スカイは早速、遺体を中心に円状に魔法陣を描き始める
(まさか、俺が魔法陣を描くとは
まったく想像出来ないよな、前までの俺なら
魔法陣を描くんだから、多分呼び戻すんだよな
魂を)
スカイは、魔法陣を描き終えると
座り込み、陣の外周に触れながら
全身から魔力を集め注ぎこんでいく
円を、描くように書いた魔法陣が
より濃く浮かびあがり、一斉に遺体へと巻きつく
スカイは、目を閉じ神経を集中させた
(何か有るはずだ、魂を掴み取れば良いんだよな
人によって違うって、書いてあったから
アバウト過ぎなんだよ、著者さんよ)
スカイは、必死に額に汗を浮かべながらも集中力を増していく
弱い光を放ち、浮遊している赤い玉をスカイは捉え
遺体へとゆっくり慎重に戻す
スカイは、ふら付く足を強引に踏ん張り
息を吹き返した、騎士を上から覗きこむ
致命傷になった大きな傷の出血を、止める為に指先へと魔力を集め
徐々に切り口に沿いながら、回復魔法をかけていく
(現代の医療を、少しだけ知る者としては
感染症予防の為、手が傷に触れてはいけない)
スカイの魔法により、首の傷がスッと塞がる
(なるほど、蘇生魔法は蘇生させるだけなのか
だから、首の傷から出血したのか
いや~グロイな傷が塞がるのも)
スカイは、いつの間にか後ろへと控えていたトーマスに
肩をたたかれた
「スカイ様、上手くいったようですね
行きましょう、依頼は達成されました」
「はい」
スカイは、トーマスと共に人目を避け
逃げるように馬車へと乗り込みと直ぐに
従者が、馬車を動かす
「スカイ様流石ですね、私は成功すると確信してましたから
この依頼を引き受けさせていただきました」
「そうなんですか、過大評価してますねトーマスさん
たまたま今回は、運よく蘇生出来ただけですよ」
「またまた御謙遜を、医師と医療治療師は驚いていましたよ
あの顔は、スカイ様に見ていただきたかったですよ」
トーマスは、窓を見て馬車を従者に止めさせ
スカイに視線を向ける
「スカイ様、どうなさいますか?
流石に、今日はお疲れですよね」
「いえ、行かせていただきます」
スカイは、馬車のドア開け外へ出て行く
複数の人影が、スカイの目の前に現れる
スカイは、一瞬目を閉じると
一気に前方へと加速し、目の前の集団へと攻撃を仕掛けた
攻撃を繰り出しますが、触れると同時に煙のように
全ての人影が消え去った
(実体が無いという事は、何らかの魔術
だと仮定すれば、近くに術者が居るはずだ)
スカイは、周囲を見回し
上へと視線を上げると、全身黒ずくめの術師の姿が浮遊していた
スカイは、手のひらから氷塊を放つ
しかし、術師に当たると氷塊だけが通り過ぎた
実体は無いようだ
(なるほど、最初から真後ろに居た理由か)
スカイは、振り向きもせずに
裏拳を、真後ろの人影に放った
今回は、確かに何かに触れたのを感じることが出来た
振り向きざまに、腰の回転を加え素早く拳を
顔面へと叩きこむと、
棒立ちになった、術師に向けて
魔力を、更に拳に加えて覆い
懐へと潜り込むと、腰を落とし拳を
顎へと、下から撃ちこむ
真っ黒な術師は、前へ倒れこむ
トーマスは、馬車から降りると
真っ黒な術師のローブを、掴み取った
残っていたのは、折れ曲がった長剣のみ
「スカイ様、ご覧のように今回の襲撃者は
この折れた長剣でございます
物使い師が、この長剣に仮初めの命を与えたのでしょうね」
「物使い師ですか」
「そうですスカイ様、早く参りましょう
従者を待たせてますから
怯えている彼を、早く解放してあげなくては」
トーマスとスカイが馬車へと乗りこんだ
スカイ日記抜粋
俺が工房兼住居に戻ると、トーマスさんが直ぐ尋ねてきて
絶対に高価であろうと、子供でも分る治療師専門書を
強引に俺に渡して、出て行ったんだよ
興味ありますよねとか言ってな
まあ興味はあるけど、こんな高そうな本を個人に貸し出して
良いんですか?
まあ確かに治療師が使う、蘇生魔法とか治療魔法は興味があったし
この世界に、なんの因果か来てしまったが
助けられる命が、あるのなら助けたい
救世主みたいで、憧れるじゃないか
でも俺の命と引き換えとかは、無理だ俺はそんなに
聖人君子ではない
実際問題、蘇生出来たら地味に
御家族に感謝されそうだけど
そんな理由で俺は本のページを開いたんだ、中身は無知な俺でも何とか分る内容だった
分んなかったら、誰に享受しようかと心配したけど
本の内容は魔法陣を、描く事によりパワーアップ出来るっぽい
要は、効果が絶大に上がるようだ
食堂で食事をしていると、何時ものようにトーマスさんが俺の前に座った
ある緊急性の依頼を引き受けたそうだ
俺が蘇生魔法を、実践する場をいつの間にか
トーマスさんは設けてしまったらしい
いや~これは絶対、こうなる事が分かってたから
俺に治療師専門書を、渡したのだろうなと思ったり若干現実逃避をしてみる
いきなり実践と言う事で、俺は大いに混乱してしまう事に
意味も無く、4階にある工房に戻ってたし
俺は、何がしたかったんだろうな
そして我に返り急いで、迎いに来ていた馬車に乗り込んだんだ
行き先が、帝都中央病院と分かりテンションは自然と上がったんだな
やはり、この世界の病院の看護士に興味がある理由なんです
馬車から、降りると女性の看護士さんに案内される事に
と言う事は、俺は彼女の後ろを歩くのは不自然ではないのだよ
不自然にならないように、凝視しよう
膝上までの、タイトなスカートに包まれたお尻を
歩くたびに揺れる、その桃に俺の目はロックオンされたまま
動くことなく、固定されたままだったのだ
何時の間にか、ある部屋に案内された俺
まあ、その先にはご遺体があるのだか
俺は無免許医なのに、良いのかなと思ったりと
若干ビビりながら、ご遺体を拝見させていただきました
看護士さんも居るし、何かの縁で偶然何処かで出会うかもしれないし
彼女が俺に、好意を持つ可能性はゼロでは無いと思い
格好をつける為に、怖さで足の震えを抑え何とか気合いを入れて
ご遺体を観察、良かったよ~魔法でそんなに酷い状態ではなかったから
俺でも見れた、致命傷は
首の見事な切り口だった、誰だよこんな凄腕の武人は
絶対俺は、そんな人には出会いたくない
ご遺体の顔は、まあ整っていた
高貴な顔というのは、この人の事だろう
彼が、蘇生すれば多くの方が喜ぶだろう
少し羨ましい感情が湧きあがった
多分、今のところ天涯孤独状態なのを
俺は気にしているのだろうか、
そして蘇生魔法は、違う場所で行うと言われた
ご遺体を、大きな部屋に移動すると言われたので
俺も移動した、緊張や恐怖を緩和する為に
けして疾しい目で見ていない、看護士さんの後ろにぴったりとつき
けして不自然にならない様に、きずかれない様に彼女の香りを嗅ぎながら
その大きな部屋に入ったのだった
俺の目は、瞬時に周囲を見回し
見学者の女性を、無意識に見分したのだった
見学者は若干上から見やすいように、座っているので
お見足が、見えましたので不自然に思われない様に
視線を上下に動かしていた
で皆さんからの、視線を受けての初めての蘇生魔法です
ご遺体を余り見ない様に、魔法陣を描きます
まあなんとか、俺は必死になって
不自然に透明で、存在が薄くなった魂を
ご遺体に戻し蘇生は成功
その結果、俺は凄く疲れて立ち上がれなかったけど
体を意地で起こす
見学者に女性が居るから、凄い人がいるとか
話題になる可能性が、またお呼ばれされるかもしれない
いや、確実に呼んでくれるはずだ
彼女達の講師として
治療を終えると、何故か後ろに控えていた、
トーマスさんに連れられ馬車に乗りこむ事に、
出来れば、蘇生魔法を成功した俺を
尊敬の目で見つめる、女学生と親交を深めたかったのだが
病院のお偉方が、複雑な表情を浮かべていた
まあ、組合に頼んだ人間が蘇生魔法を成功させたからな
ご遺体の人物が、多分高貴な血筋だから
病院側が、躊躇したんだろうな
失敗したら問題が有りそうだしな
保険として、組合に頼んだろう
俺はそんな、空気を読んでトーマスさんについて行く
そして、何故か俺は実体が無い人影と戦う事に
トーマスさんに、戦わせるのは何故か
やばそうだし、色々な意味で
そして俺の目の前にいる敵には、俺の攻撃が当たらないんで
命の危機を感じたんだ、結構焦ったどうしようかと
俺は、何とか考えを纏めて
近くに魔術師が幻影を作り出していると考え
辺りを窺う、上に黒い魔術師を発見し魔法を放つが
これも幻影だった、後ろに何かいるんじゃないかと俺の第六感が働き
攻撃すると、魔術師がいたのでノックアウトした
何とか撃退すると、正体が長剣とは
長剣を仕役するとは、なんだよ物使い師さんよ
これは高価な物だぞ、勿体ない
高く売れただろうに、しかし厄介な相手だぜ
物使い師
あそうだ、トーマスさんが、後で説明してくれたんだが
俺が、魔法薬を沢山作る過程で
俺の魔力総量が増えた事が分かり
蘇生魔法を、行使出来ると思ったらしい
今回の成功で、召喚魔法もやりましょうと言われてしまった
俺はトーマスさんに、聞いてみたんだ
少しは強くなりましたか?
トーマスさんは、笑顔を浮かべて
初めて会った時から、スカイ様は強いですよと言って
去って行ったよ
有難うございました