討伐依頼
魔術師、魔道師組合敷地に天高く聳える塔の4階で
スカイは床に魔法陣を描いた
人工魔石を製作する為に、陣の中央に鉱石を設置している
スカイは陣の外周に座り込むと
魔力を指先へと集中させ、魔法陣にゆっくりと一定の速さで
注ぎこみむ、数十分魔力放出を続けていくと
魔法陣が光り輝き、魔力が渦を巻くようにうねり始めた
中央に置いた鉱石へと、スカイは力を込めると陣全体を集束させ
鉱石へと魔力を移転させた
工房全体に、風が巻き起こり舞う、スカイは床に在る鉱石を
手に持つと、魔力の胎動を確認する
(上手くいったな、こんなもんで良いだろう)
スカイは数回、同じ作業を繰り返し
魔力の残量が残り少なくなると、作業を止め
完成した人工魔石を、箱に丁寧に詰めると
ドア前の、作品完成台へと箱を置いた
スカイは、前日にトーマス主任に手渡された
討伐依頼書を、手に取り確認する
(無報酬ですか、トーマスさん
討伐対象が、召喚魔法で呼び出される異界の存在全てとは
まあ異界への強制転送でも、良いところが救いだが)
スカイは、壁にかけてある鏡の前で身支度を整えると
工房のドアを閉めると、階段を下り塔から出て
ドーラ草原へ向け帝都を歩き出す
スカイは、整然と整備され馬車が疾走しても危険ではないほど広い
石畳を歩く
暫く、歩き続け帝都を出ると徐々に道の舗装が無くなり
畦道に出ると、周辺には背の低い草が目立ち始める
ドーラ草原へと到着すると慎重に足を踏み入れる
スカイは、討伐対象の巨人像を探す為に
魔力を体全体に這わせると、空中へと飛び上がり上空から滑走し
巨人像を探しはじめる
(巨人像か、無機物だよな動力源は何を使ってるのか興味はあるが
まあ、さっさと異界に送還してしまおう)
スカイは、目を凝らし地上を見つめる
茶色の巨大な像を、発見すると急降下した
正面に5メートルはある、大きく巨大な像が対峙した
スカイは、正面から一気に加速し突進すると
草原の地面が大きく隆起し、スカイの動きを止めようとした
巨人像は、大きな体とは思えないほど俊敏に動くと
スカイへ腕を、振り下ろす
スカイは、素早く水の壁を構成すると巨人の腕を受け止め
そのまま、水圧を高めると巨人像へと衝突させた
大量の水が、草原へと降り注ぐ
スカイは、体勢を崩した巨人像の後方へと回り込み
氷の障壁を作り出し、巨人像を四方から取り囲み拘束した
大きな音をたてながら、巨人像を押しつぶす
スカイは氷で、巨人像を押しつぶしたまま
魔力を空間へと向け、空間が裂け始めると氷で押しつぶし拘束した
巨人像を、空間の裂け目へと強引に転送した
(終わったな~、次は何処だったかな)
スカイは、討伐依頼書を懐から取り出し確認した
背丈が低い草が茂る、ドーラ草原を歩きながら
次の討伐対象が居る、スルク鉱山へと足を進めた
スカイは、草原を抜け鉱山への入口がある洞窟を探す
漸く谷底にある、スルク鉱山の入口に辿りついた
中がうす暗い、鉱山内部へと足を進める
設置されていた、人工魔石の光を頼りにスカイは慎重に進む
トロッコなどが設置された、内部を進んだ
最深部へとスカイが足を踏み入れると、前方に亡霊騎士を確認した
亡霊騎士は、侵入者であるスカイを目視すると長剣を
鞘から引き抜いた
スカイが動き出そうとする前に、既に騎士の長剣が
スカイの腹部に突き刺さろうとしていた
スカイは、腰にさしていた短剣に魔力を通し何とか
亡霊騎士の長剣を短剣で受け止めるが、短剣は衝撃で飛散し砕け散る
スカイは、騎士の剣撃の衝撃で後方へと吹き飛ばされる
(早い、初動がまったく見えない
ヤバイぞ)
スカイは、遠距離から火炎を放った
狭い最深部は、炎で埋め尽くされるが
亡霊騎士が鋭く振り抜いた
長剣が炎を斬り裂き消滅させる
スカイは、氷の塊を上下左右から連続させ放ち続けるが
亡霊騎士が、長剣を振るう剣圧だけで消滅する
スカイが、動き出し加速しようと前を向くと
既に亡霊騎士の長剣が、スカイの腹に突き刺さり引き抜かれようとしていた
(陽動しようとしたのに、もう腹に刺さってるなんて
とにかく、意識を保つ事に集中しないと倒れちまう)
スカイの腹部から血がドロッと落ち、口から吐血しない様に
スカイは、歯を食いしばるが真っ赤な血が
口元から流れ落ちた
(俺の依頼達成条件は、討伐対象を異界へと転移させれば良いんだ
別に倒さなくても良いんだよ、簡単だろうがこれぐらい)
スカイは、片膝を地面つけながらも亡霊騎士の動きを観察し
異界への移転魔法を発動させようと、魔力をかき集める
亡霊騎士は、スカイの腹部から長剣を抜くと
上段の構えから長剣を、スカイに向け肩から首にかけ振りおろす
スカイの肩に、長剣がサッと抵抗も無くすり抜けようとしたと同時に
スカイの転移魔法が発動し、亡霊騎士が空間へと吸い込まれる様に消え去った
スカイは、意識が朦朧としながらも首にかけていた
飲料用魔法薬を手に取り、両手で瓶を支えながら口に含む
飲料用魔法薬の効果が瞬時に発動する
体の再生が始まると、発狂するような痛みがスカイを襲う
歯を食いしばり唸り声を上げながら、スカイは耐えた
全身に大量に汗をかき、荒い呼吸を繰り返していたスカイは
漸く痛みが、治まるとその場に座り込む
(死ぬかと思った~しかし強すぎだなあの騎士は
二度と会いたくないな
何故か、飲料用魔法薬の効果を実践することになるほど
危険な状況に陥るとは)
数時間体を横にして休み
漸く立ちあがると、魔術師、魔道師組合1階事務所へとラインを繋ぐと
転移魔法を発動する
スカイが、血まみれで事務所前に現れると直ぐにトーマスが駆け寄って
ローブの血痕をジッと観察した
「スカイ様、よく御無事で生還されましたね
もう乾いてますね、血痕は」
「すいません、こんな恰好で」
「お気に為さらないで下さいスカイ様
今回は巨人像と亡霊騎士ですか
なるほど、よく御無事で」
「ではトーマスさん失礼します」
「本日は有難うございましたスカイ様」
トーマスは深く頭をスカイに下げる
スカイは、重い体を引きずり歩き出す
階段を登ろうと手すりに、手をつき顔を上げると
たまたま階段を利用していた、組合の女性職員が
階段を下りようと足を踏み出そうとしたと同時に
スカイの血まみれの姿を見て、顔を引きつらせ足を滑らせ転倒した
スカイは、素早く階段前方に跳躍すると転倒しようとする
女性の腰を両手で掴むと、ゆっくりと地上へと降り立たせた
きつく目を瞑っている女性職員をゆっくり下ろすと
スカイは、階段を登り始める
「すいませんでした、驚かせたようで
では失礼します」
漸く落ち着きを取り戻した彼女は
立ち去ろうとするスカイの背中を見つめる
「有難う御座います、スカイさん」
スカイは振り返り手を振ると、階段をゆっくりと上り立ち去った
スカイ日記抜粋
俺は工房で目を覚ますと、人工魔石の製作作業に取り掛かる
魔石の基として、今回は鉱石を利用した
魔法陣の中心に鉱石を設置し、魔法陣を媒介として魔力を注ぎこむと
魔法陣が輝き消え去ると、床に在る人工魔石を手に取り魔力の
存在を感じ取る事が出来た、成功したようだ
数回俺の魔力が、尽きるまで人工魔石の作業を続けた
少し休憩した後に、前日にトーマスさんに強引に手渡された
討伐依頼書に、目を通して見る
今日は体調も良いので
比較的近郊のドーラ草原へと行く事に、帝都の賑わいを横目に
俺は、帝都を通り過ぎ草が生い茂る草原へとたどり着くと
上空から、討伐対象の巨人像を探す事にした
比較的早く発見する事が出来ると、地上に降り立ち
巨人像と対峙することに、素早い動作で俊敏に動く巨人の
攻撃を掻い潜りながら、氷の障壁で動きを止め拘束すると
強引に異界へと、送転する
休む間も無く、直ぐに次の討伐対象が居る
スルク鉱山へと、向かう
鉱山はうす暗かったので、足を滑らせない様に慎重に進んだ
最深部へと足を踏み入れると亡霊騎士を発見
存在その物は何とか目視できるほどだが
流石に異界の世界で、上位の存在だ先ほどの巨人像とは
格段にレベルが違う、威圧感が半端なかった
俺が動く前に既に、腹部へと剣が延びていたので
短剣で何とか防いだが、衝撃で吹き飛ばされた
魔法で、距離を取ったり陽動しようとしたが
亡霊騎士の剣圧で俺の魔法はかき消され
気がつくと俺の腹に、深く剣が突き刺さっていた
俺は意識を気合いで繋ぎとめ、とにかく亡霊騎士を
異界へと送転する事に集中した、何とか俺の首が
亡霊騎士の長剣で斬り落とされる前に
送転魔法を完成し、騎士が消え去ると俺は
意識が混濁しながらも、首にさげていた飲料用魔法薬を
飲み干し、一命を取り留めた
飲料用魔法薬の効果は抜群だったが、体が再生する痛みは
半端ない痛みを感じる、少し休んだ俺はラインを組合事務所へと繋ぐと
転移魔法を発動し帰還した、目の前にはトーマスさんが
心配してくれて駆け寄ってくれた、血まみれの俺を見て
深く頭を下げてくれたが、それならもう少し警告してくださいよ
危険だって、まあ終わった事だし俺は無事だったから良いですけど
それから、階段を上がって工房へと戻る途中に
階段を下りてきた女性職員が、血まみれの俺を見て驚き
足を踏み外し階段から転倒しそうになったので
素早く跳躍し、彼女の香りを嗅ぎながら
細い腰をソフトタッチで掴むと
俺の血痕が付着しないように、手を伸ばし彼女をゆっくりと
床に降り立たせる、丁度俺の視線の先には彼女の腰を抱えていたので
二つの果実があったので、目を見開き正面から凝視したが
彼女は、恐怖で目をギュと閉じていたので
絶対にきずかれないという確信が、あったので出来た事だが
俺は彼女を下ろすと、立ちくらみがしたので
さっさと階段を登る、やはり体を酷使したらしい
今も彼女を助ける為に、急に動いたので負担がかかったらしい
御礼を言われたので、後ろ振り向き手を振ると上へと向かう
本当は、彼女と親交を深めたかったのだが残念だ
でも今の俺の格好ではな、全身血だらけだからどっちにしてもダメだろう
有難うございます