第8章/初心に戻るのって目的を明確にするための手段の一つだと思う
大変申し訳ありませんでした!締め切り破りのeifosです。
やっとこさ書き上りました、いやー長かった…………。なんと前回の投稿から約二カ月もたってたのが自分でもびっくりです。
長い時間かけましたが中身が伴っているかどうかが不安です、それではどうぞ~
~Ⅰ~
ゼピルム大陸中央部ゼピルム共和国首都パルテナ
ゼピルム共和国、旧文明崩壊後一番最初に成り立った国家であり、唯一“魔人”が暮らしている国。それ故今でも能力より魔力を重視した政策がなされているそうだ。そして最大の特徴はこの国を束ねる王、【聖魔王】の存在だろう。今のご時勢では珍しい世襲制で(ちなみに大半の国が選挙制らしい)代々紅鸞家の者が聖魔王を勤め、国を導いてきたそうだ。さて、説明はこの辺にしておいてと、今私たちはゼピルム共和国の首都パルテナにいる。ここはまさしくファンタジーな街で周りにはレンガづくりの家、道の真ん中を堂々と馬車が闊歩している、そんな街だった。国民の半数が魔人という私たちとは違う人種らしいが見た目はほとんど変わらないそうだ。
「そういやお前らってゼピルムに何しにきたんだ?初めて会ったときは世界がどうとかって言ってたよな?」
「はい、今この世界はその、何というか世界を管理するプログラム、っていってもわからないか。ええと、とにかくそういった世界を管理するものが壊れたまま動いてるせいで不具合がいろいろあって・・・・」
「貴女が説明しても何いってるのかさっぱりよ、私が代わりに説明するわ。彼女がいったことは間違って無いけどみんなわからないわよね?」
『うん』
そんなに説明力ないか、私?まあとにかく私では荷が重いのでイリスに全部丸投げ。説明が終わるまでヒマなので通りを歩く人を数えてみる(我ながら子供っぽい・・・・)。ちょうど120を越えたとき、後ろが騒がしいことに気づく。
「アホ!!そんな重要なことはもっと早く言えよ!?」
「あのね、私は聞かれないことまで説明できるほど気が利く女じゃないのよ!それくらい察しなさいこの長髪女顔!!」
「なっ・・・・・・・・・・!!い、言ったなエセ妖精!!」
「失礼ね!誰がエセよ、だ・れ・が!」
「何やってるんですか二人とも!?」
それからなんとかして二人をなだめ、最初の目的である聖魔王へ会うために私たちはゼピルム城へ足を運んだ。その途中もユーリさんとイリスはそっぽを向いたままだった。何というかこの二人、どうも相性が悪いみたいなんだな~、最初に会ったときも牽制しあってたっぽいし・・・・・・う~ん、何でだろう?そんなことわかるわけもなく考えるのをやめることに。ふと目に入る町並み、今までに立ち寄った町の中では一番のにぎわいかもしれない、通りを歩く人々は笑顔で、この世界に終わりが近づいてることなんて知らずにみんな楽しそうに日々を過ごしている。そう思った瞬間、私の頭にある疑問がよぎった。私たちの旅って本当に意味があるの?
(あるに決まってるでしょ、今までみてきたこと信じられないの?)
(イ、イリス・・・・・・でも、今ここに生きてる人はこの世界が終焉に向かってるなんて、わかってないじゃん!そんなの・・・・!)
(現実から目をそらさないで、貴女も見てきたでしょ?あるはずのないオベリスク、絶滅したはずの悪魔の出現、そして何より消滅の白壁、貴女たちがヴァルハラの境界って呼んでる霧の壁・・・・・これは昔この世界が滅んだ時に起きた現象と一致するの。一度目は救えなかった、でも今は貴女やクロードたちがいる。私はもう二度と世界をリセットなんかしたくない!だから、私というシステムからこの壊れかけた世界を解き放ってほしいの!)
(っ・・・・・・!)
何も言えなかった、彼女がそんな思いで私を呼んだなんて、今まで思っても見なかった。昔読んだ本に書いてあった、人間は誰しも生きる理由、生まれてきた意味がある、って。じゃあイリスは私に殺されることが生まれてきた意味だっていうの?そんなの悲しすぎる・・・・・・。
(ねえイリス、最初に会ったときいってたよね、私の願い叶えてくれるって)
(ええ、言ったわ。まさか、私に死なないでなんていうわけないわよね?)
(・・・・・・)
お見通しってわけか、でも諦める気はさらさら無い。なんとしてでもみんながみんな、笑って過ごせる、そんな世界を取り戻す。もちろんみんなイリスも生きて。
(以外と頑固ね、貴女)
(当然。もう誰かが涙を流すのなんて見たくないから)
そうだ、私は今まで多くの人の涙を見た。私の病気のせいで大勢の人が悲しんだ。父さん、母さん、友達、みんなみんな私が悲しませた。だからせめて最後くらい喜ばせてあげたい、せめて死ぬ前に一回くらいは・・・・。・・・・やべっ、なんかすごく重い話になっちゃった、ニガテなんだよね~こういう話。あ、いや、得意って人もあんまりいないだろうけど。私の意識が現実(?)に戻ってきたとき、目の前に大きな白い城壁が広がっていた。
~ Ⅱ ~
「ど、どうしてですか!?聖魔王様と面会ができないなんて!」
「だから何度も申しておるだろ、現在聖魔王様はご不在だ。いつ戻られるかはわからん、また後日参られよ」
「そ、そんな・・・・」
ゼピルム城城門前、私たちは見事に足止めを食らってしまった。門のところにたっている強面の衛兵さんに話を聞いてみるとどうやら今、どこかにいっておりここにはいないみたいだ。聖魔王に会いに来たというのにその本人がいないのであれば話にならない、なんでこんなにタイミングが悪いのかな?
「さて、これからどうする?少なくとも1日はヒマになっちゃったけど」
「なら先に俺らは用事片づけちまうけど、いいか?」
「うん、問題ないでしょ。みんなもいいよね?」
そっか、ユーリさんとエリちゃんは元々私たちの旅よりそっちがメインだったもんね。そんなわけで私たちはその日、各自自由行動で一日を過ごすこととなった。エステルさんはクロードさんを誘ってどこかへ行ってしまったため私は一人で行動する事に。このあたりのことはわからないのでイリスの案内でこの近くで一番賑わっているところへ足を運んだ。ここの街は今までに立ち寄った街とはまたひと味違った雰囲気を漂わせていた。賑やかと言うよりは騒がしいといった方が当てはまるような喧騒、もの凄く失礼だが今までの街よりも野蛮な感じがする。いろいろと聞きたいこともあるんだけどイリスは「久しぶりに長くしゃべって疲れた」っていって眠ってしまったので後回し。それから一人で歩き回っていると、あることに気づく。この街にはまるで奴隷のような扱いを受けている人がいる、それどころかその辺で人間の売り買い、つまり人身売買が行われていた、しかも全うとは言えないような値段で。
(そういえばイリスが言ってたっけ、この国は唯一魔人と奴隷っていう存在がある国だって。奴隷、か・・・・・・)
この世界では一昔前までどこの国でも奴隷がいたらしいが今では人権がとうだとかでここ、ゼピルム以外の国では奴隷の労働・売買を禁止しているそうだ。それらを眺めながら街の奥へ歩みを進めていく、奥へ進むにつれ鼻腔を突く嫌な臭いが強くなり、さっきとはまるで違う熱気が漂っていた。頭の中では「これ以上は行かない方がいい、すぐに戻れ」と警告しているのに体はまだまだ進もうとしている。最近、というよりこっちの世界にきてから自分のことを押さえられない、向こうの世界ではずっとベッドの上で寝たきりで外の世界を知らなかった、それを今この世界で体験している。そのためか自制心を越える好奇心が湧いてくるんだろう。狭くなった通路を抜け、そこで目にしたもの、それはまさに人の見本市だった。道の端に並べられた檻に入れられた人、人、人、それを売る奴隷商人。衝撃だった、むこうの世界でだってどんなにひどくてもこんなことは無かった。しかし目の前にはそれが広がっている、もうダメだ、いくら何でもこれは耐えられない。戻ろうと後ろを振り向いた瞬間、何かにぶつかった、たぶん人間。いったーい!!どこに目つけてんだよ!?(ヤクザか・・・)
「いつつつ、ゴメンなさい。痛いところありませんか?」
「あ、はい大丈夫です」
と言いつつ石畳におもいっきりぶつけたお尻はまだズキズキ鈍い痛みを放っていたけど。どうやらぶつかったのは彼女のようだ。赤みがかった長い髪を頭の後ろで縛ったいわゆるポニーテールにし、丸メガネをかけたおとなしそうな私とそんなに変わらなさそうな女の子だった。
「よかった~、どこもケガしてなくって!あ、その私、急いでるのでこれで失礼します」
「え、あ、はい」
そういって女の子が立ち去ろうとした瞬間、背後から野太い叫び声が聞こえ、数人の大柄な男が息を切らして走ってきた。どうやら彼女を追いかけてきたようだ。
「オイコラ、待てこのクソガキ!」
「あちゃー、追いつかれちゃったか・・・・・・」
「もう逃がさねぇぞ、観念しろ~、ヒヒヒヒ!」
とりあえず耳打ちで女の子に話しかけてみる。
(え~っと、ねえあなた、何したの?)
(何したと言うよりもあの人たちは人さらいみたいな連中ですね)
(つまりどういうこと?)
(違法奴隷商人ってやつですよ)
それを聞いた瞬間、一気に頭に血が上った。まさかこんな方法で奴隷を作るなんて、サイテーだ、それ以前に奴隷なんて存在があること事態サイテーだ。そんなわけで私はデウス・エクス・マキナを手の中に召喚して一歩前に踏み出す。
「ちょっとここで待ってて。私が蹴散らす」
「は?あ、あのちょっと!?」
デウス・エクス・マキナを開き、一番殺傷能力が低い魔術を探しはじめる。そしてページが半分を超えたあたりで止まり、その魔術を示す。ライトニングボルトか、脅しには丁度いいや。
「今すぐ立ち去ってください。そうすれば命は保証します」
「あ!?テメェ自分が言ってることわかってんか?」
「わかってますよ、早く行かないと痛い目にあいますよ?」
「どうやってやるっていうんだ~?オレたちの言うこと聞かないとそっちこそ痛い目みるぞ~、ヒャハハハハ!」
そういって狂ったように高笑いしている男が懐から鈍い光を放つナイフを取り出した。どうやら言ってもわからないらしいので実力行使。最初の一文をなぞり、手を男たちにかざすと手のひらに拳大の光の玉ができあがるり、その次の瞬間ーーーーー
バチン!!
と言う大きな音とともに雷光が迸り、ナイフを持った男の体を打つ。男は3メートルほど吹っ飛び、動かなくなった。ちょっとやりすぎたかな~?あ、大丈夫そう、ピクッって動いた。それを見てほかの男たちはすこし後ろへ下がる。
「もう一度言いますよ、今すぐ立ち去ってください!」
「ク、クソ!!覚えてろ!」
B級映画の悪役のような捨てゼリフを残し、男たちは気絶した仲間を抱えてどこかへ去っていった。
~Ⅲ~
騒動の後、私たちは奴隷市場を後にし、中心街の小さな飲食店へ場所を移していた。彼女の名前は凜・クラウスというらしい。年は私と同い年で遠くの村から出稼ぎにきているそうだ。
「え~っと、改めて助けていただいてありがとうございました、何かお礼しますね」
「いいっていいって、私もああいう連中だいっキライだからさ。というか同い年なんだか敬語やめない?」
「う~~ん・・・・・・そうだね、ふつうに話そ。あ、すいませ~んコーヒー二つくださ~い!」
「あ!だからお礼とかいいって」
「ダーメ、恩は必ず返しなさいってお母さんに教わったんだから」
何というか以外と頑固な性格だな・・・・・・それからお互いのことをはなし、徐々に打ち解けていった(気がする)。とりあえず旅の目的は正直に言えるわけがないので「知人の人と一緒に旅をしている」ってことにした。ちなみに魔術のこともその知人に教えてもらったことに。
「へぇ~!疾花はハウリから来たんだ、すごいね!飛空艇にも乗ったんだよね!?」
「うん、乗ったよ」
「どうだったどうだった!?」
「よくわからなかったな、すぐに着いちゃったから」
「そうなんだ、残念」
そういって凜は肩をすくめる。う~ん、かわいいな、私なんかとは大違いだ。それから日が傾くまで私たちは遊び回った、それこそ友達のように。
「だいぶ暗くなってきたね、そういえば凜はお仕事大丈夫なの?」
「え!あ、ああその、きょ、今日はお休みなの、そうお休み!」
「そ、そうなんだ」
なんか今ちょっと狼狽えたようにも見えたけど・・・・・・まあいいか。
「疾花こそ、こんな時間まで大丈夫なの?」
「うん。集合場所決まってるからさ」
「そっか」
そんな話をしていたら遠くから凜の名前を呼ぶ男の人の声が聞こえた。ん?誰だろう?
「やっと見つけた。凜、お前勝手にいなくなるな!心配しただろ」
「ああ、ゴメンね。そうだ!疾花、紹介するね、この人は仕事先の先輩で私が下宿してる家の人で太刀ば・・・じゃない華斑 海さんだよ」
「初めまして華斑 海だ。よろしくな」
「風見 疾花です!よろしくお願いします」
「今日はありがとな、凜と遊んでくれて。職場には凜と年の近い奴がいないからな」
「な、なに言ってるの!ほら、は、早く帰るよ!じゃあね疾花!」
「そういうわけだ、それじゃあまた明日」
「はい!また明日!・・・・・・ん?また明日ってどういうこ・・・あれ?」
考えごとのためほんの少しの間、目をそらした短時間、明日の意味を聞こうと元の視線の戻したらそこに二人の姿は無かった。まるで最初から誰もいなかったように。まさか幽霊?・・・・・・いや、そんなはずはない。凜と一緒に買って交換したブレスレットはしっかりと手首にある。一体どこに消えたんだろう?日が沈みかけていたので宿屋に戻ることにした。みんなにも心配かけるわけにはいかないからね。
「ふわぁぁぁ~、あーよく寝た」
「あ、おはよイリス。っておはよって時間でもないか」
「疾花、あいさつに大事なのは時間帯じゃなくてその意味だからね。ところでここはどこ?」
それから歩きながら私はイリスに今日あった出来事を話した。奴隷市場へいったこと、凜と友達になったこと、そのほかいろいろな思い出を。でも今は知る由もなかった、この思い出がこの世界で最後の楽しい思い出になってしまうことを・・・・・・・・・・・・。
さて、終わりましたがどうでしたか?楽しんでいただけたのなら幸いです。
次回の投稿は六月までには書き上げたいと考えています。
次回予告
一日を無駄に過ごしてしまった疾花たち一行は次の日、聖魔王との面会を果たすことになるのだったがその人物はなんと意外な人物だった。
そしてついに引かれる世界終焉の引き金、ハウリの聖殿に集う七本の剣、新たに始まる世界創造、この言葉が意味することは…………?