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最弱パーティ、今日もちょっとだけ成長中  作者: beck2026


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第9話 「見ているのに、消える」

いつもお読みいただきありがとうございます!

第6話となる今回は、これまでの冒険で一番「わけのわからない恐怖」が5人を襲います。

「5歩に一回の点呼」。

一見すると笑ってしまうような光景ですが、今の彼らにとってはこれ以上ないほど切実な防衛策です。けれど、その執念すらあざ笑うかのような不可解な現象が、ついに目の前で発生します。

「見ているのに、消える。消えた瞬間の記憶がない」。

剣の腕も魔力の強さも通用しない、認識の隙間を突くような怪異。

まばたき一つが命取り(とお財布の危機)になるような、極限の緊張感をお楽しみください。

1. 執念の「五歩に一回の点呼」

残された三つの箱を、クレアは穴が開くほど見つめていた。

街道を一歩進むたび、首がもげるほどの勢いで後ろを振り返る。

「いち、に、さん。……よし、ある!」

「……ねえクレア、五歩ごとに数えるのやめない? 見てるこっちが酔いそうなんだけど」

カノンが呆れたようにため息をつくが、クレアの目は本気だった。

「当たり前でしょ! 今回は絶対、一個も減らさないんだから!」

セインも眼鏡の奥で鋭い視線を荷台に固定している。

「同感です。全員で監視のサイクルを回しましょう。**『誰も見ていない瞬間』**を、一秒たりとも作らないように」

「了解。アタシもしっかり見てるよ」

ケットルが慎重に荷車を押し、ミルは瞬きすら忘れたように箱を見つめ続けた。

2. ほんの一瞬の「ゆらぎ」

森は、相変わらず不気味なほど静まり返っていた。

自分たちの足音だけが、やけに大きく響く。

「……ねえ」

ミルが、消え入りそうな声で呟いた。

「なに? ミル」

「さっき……ちゃんと、三つあったよね?」

「あったよ。今も、いち、に、さ……」

クレアが言いかけた、その時だった。

――ふわっ。

冷たい風が、森の奥から吹き抜けた。

ほんの一瞬、木の葉がざわめき、視界がわずかに揺らぐ。

「……あ」

ミルが何かを言いかける。

「どうしたの!?」

クレアが弾かれたように振り返り、箱を数えた。

「いち、に…………」

指先が、二つ目の箱で止まる。

「……え?」

3. 「消えた瞬間」の記憶がない

空気が凍りついた。

荷台の上には、二つの箱だけが、何食わぬ顔で鎮座している。

「いやいや、待って! 今、みんなで見てたよね!? 私も、カノンも、ミルも!」

クレアがパニック気味に叫ぶが、カノンの顔からも血の気が引いていた。

「……見てた。ずっと、目を離してなかったはずなのに」

「音もなかったねぇ。盗賊が掠めていった様子もありゃしない」

ケットルが荷車を止め、周囲を警戒するが、そこにはただ静かな森が広がっているだけだ。

「……消えた。今、目の前で、消えたの」

ミルの手がガタガタと震え出す。

セインは一人、目を閉じて、今の「一瞬」を反芻していた。

「……視線は外していませんでした。ですが、私たちは**『見ていたつもり』**だったのかもしれません」

「……どういうこと?」

クレアの問いに、セインが静かに、恐ろしい事実を口にする。

「クレアさん。今の『消えた瞬間』、どんな風に消えたか説明できますか? 煙のように? それとも透明に?」

「え……それは……風が吹いて……その、あと……」

思い出せない。

箱がそこにあった記憶と、なくなった今の光景はある。

けれど、その中間の記憶だけが、ぽっかりと抜け落ちていた。

4. 守れない「二」

「最悪だね」

カノンが乾いた笑いを漏らす。

「物理的な盗賊なら戦えるけど、**『記憶の空白』**をどうやって守れってのさ」

ミルの呼吸が浅くなる。「……怖い。ねえ、戻ろうよ……」

けれど、クレアは震える拳をギュッと握りしめた。

「でも、進むしかない。依頼主さんに顔向けできないもん」

クレアは残された二つの箱を、これ以上ないほど強く睨みつけた。

「……残り、二つ。これは、死んでも守る」

「守れるかな。さっきも同じこと言ってたよ」

「……今度は、守るの!」

根拠なんて、どこにもない。

それでも進むしかないのが、最弱パーティの宿命だ。

ケットルがゆっくりと荷車を動かし始める。

二つの箱。

誰も目を離さない。

まばたきすら、恐怖の対象になる。

それでも、彼女たちは気づき始めていた。

見れば見るほど、守ろうとすればするほど、**「何か」**が自分たちの意識を削り取っていくような、奇妙な感覚に。

森の奥へと続く道。

静けさはさらに重くなり、五人の背中に冷たい汗が流れる。

最弱パーティ、今日もちょっとだけ成長中。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

ついに、預かった荷物は半分になってしまいました……。

セインが指摘した**「見ていたつもり」**という言葉。単なる消失ではなく、自分たちの脳が強制的に「なかったこと」にされているような感覚は、どんな強敵と対峙するよりも恐ろしいものです。

意地でも守ろうとするクレアの叫びと、限界が近いミルの震え。

精神的に削られていく5人が、この不気味な森の出口にたどり着けるのか。あるいはその前に、荷物以外の「何か」を失ってしまうのか……。

物語は、いよいよ引き返せない領域へと入っていきます。

次回の展開も、ぜひ見守ってあげてください!

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