第7話 「消えた荷物と、妙な依頼」
いつもお読みいただきありがとうございます!
第7話となる今回は、これまでの「うっかりトラブル」とは一味違う、少し不気味な依頼から始まります。
掲示板で見つけた、分不相応な高額報酬。
冒険者なら誰もが二の足を踏む**『危険度:不明』**の四文字に、最弱パーティが挑みます。動機は……そう、とっても切実な「お財布事情」です。
消える荷物、見えない犯人、そして静まり返った森。
剣や魔法だけでは解決できない「不可解な現象」を前に、5人はどう立ち向かうのか。彼らの「本気」と、ちょっぴり情けない(?)日常のやり取りをお楽しみください!
1. 掲示板に踊る「毒入り」のご馳走
「……ねえ、これ。報酬の桁、一個多くない?」
ギルドの掲示板の前で、クレアが1枚の依頼書をひったくった。
いつもの薄汚れた紙。けれど、そこに書かれた数字は、彼女たちが普段受ける「ドブさらい」や「薬草採取」の数倍はあった。
「『護衛兼、調査。期間三日。報酬・高』……。確かに、今の私たちには眩しすぎる条件ですね」
セインが眼鏡を押し上げ、目を細める。
隣で聞き耳を立てていたカノンが、横からひょいと首を突っ込んだ。
「危険度は?」
「『不明』」
「……はい、パス。一番関わりたくないやつだ」
カノンが即答する。けれど、クレアは依頼書を握りしめたまま離さない。
「でもこれ! 受けたら私たちの借金、一気に半分くらいになるかもよ!?」
あまりに切実なクレアの叫びに、全員が沈黙した。現実という名の重みが、最弱パーティの背中にのしかかる。
2. 「忽然と消える」荷物の怪談
「……調査って、何を……?」
不安げに震えるミルに、セインが紙の下をなぞりながら答える。
「**『運搬中に荷物が消失する原因の特定』**とありますね」
「消失? 盗賊に奪われるんじゃなくてかい?」
ドワーフの姐御、ケットルが酒袋を揺らしながら首を傾げた。
「その依頼、受けてくれるのかしら」
背後から凛とした声が響いた。
振り返ると、そこには背が高く、装備を完璧に整えた女性の運搬業者が立っていた。
無駄のない動き。彼女がこの依頼の主だった。
「最近、運んでいる荷物が消えるの。盗賊じゃない、もっと不可解な形でね」
「……どういうこと?」
クレアが聞くと、女性は静かに首を振った。
「護衛が目を離さずに見張っていても、気づいた時には荷台から消えているのよ。」
「……は?」
クレアが間の抜けた声を出す。
「いやいや、見張ってるのに消えるって、手品か何か……?」
「手品ならまだマシよ。文字通り、忽然と消えるの」
3. 最弱パーティ、腹を括る
「……それ、絶対やばいパターンじゃん」
カノンが顔をしかめる。
「幽霊か、それとも底なしに腹ペコな魔物か。まともな仕事じゃないよ」
セインも慎重に頷く。
「ええ。私たちの手に負えるかどうか……」
けれど、クレアは依頼主の女性を見つめた後、少しだけ笑って言った。
「……でも、やるしかないよね。報酬いいし!」
「そこは相変わらず正直だね」
カノンが呆れたように笑う。
「それにさ。なんか気になるじゃない。見張ってるのに消えるなんて……うちらが暴いてやろうよ!」
カノンはため息をつきつつも、ニヤリと口角を上げた。
「まあ、確かに。ただの盗賊退治よりは、ギャンブル性が高くて面白そうだしね」
「決まりですね。受けましょう」
セインが代表して頷くと、ミルも震えながら小さく拳を握った。
「……わ、私も、頑張る。爆発させないように……」
ケットルがどっこいしょと巨大なリュックを担ぎ直す。
「三日間の長丁場だ。アタシがしっかり荷物を持っておいてやるよ。酒の予備はたっぷりあるしね!」
4. 森へと続く、見えない道
場所は、街道を大きく外れた険しい山道。
三日間、この不気味な荷物を見張りながら歩き続ける。
「三日かぁ……長いね」
クレアが空を見上げる。
「その分、しっかりやりましょう。今回は**『ちゃんと』**ですよ」
セインの釘を刺すような言葉に、クレアは勢いよく頷いた。
「わかってるって! 今回は本当に、本当に本気なんだから!」
「その台詞、いままで何度聞いたかなぁ。昨日の晩ごはんの内容より信用できないよ」
カノンがニヤニヤしながらからかうと、「今回は本当なの!」とクレアが頬を膨らませる。
五人は森へと続く道を歩き出す。
いつも通りの凸凹な足並み。けれど、いつもより少しだけ真剣な横顔。
その先で、一体「何」が消えるのか。
彼女たちはまだ、何も知らない。
最弱パーティ、今日もちょっとだけ成長中。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
「見張っているのに荷物が消える」……なんとも不気味な依頼主の言葉で幕を開けた今回の冒険。
借金返済という強烈なモチベーションに突き動かされるクレアたちの姿は、どこか親近感が湧いてしまいますね。
カノンの鋭い勘、セインの慎重な分析、そしてミルの「壊さない」という決意。
バラバラだった個性が、少しずつひとつの目的(とお金)のためにまとまっていく様子が、このパーティらしい成長の形なのかもしれません。
果たして、三日間の道中で彼女たちが目にするのは、巧妙な手品か、それとも恐ろしい魔物の仕業か。
静まり返った森の奥で、5人を待ち受ける「何か」とは――。
次回の更新もどうぞお楽しみに!




