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最弱パーティ、今日もちょっとだけ成長中  作者: beck2026


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第6話「支える人は、いつも後ろにいる」

いつもお読みいただきありがとうございます!

第6話となる今回は、パーティの「縁の下の力持ち」、ドワーフのケットルにスポットを当てたお話です。

ゲームの世界ではつい忘れがちな「武器の耐久度」。

けれど、命懸けの冒険者にとって、それは生死を分ける絶対的な境界線でもあります。

お調子者のクレアと、まだ自分の魔力に怯えるミル。

二人の危機を救ったのは、華やかな魔法でも鋭い剣技でもなく、一打ちごとに魂を込める職人の「音」でした。

普段は酒好きで陽気なケットルが見せる、プロフェッショナルな横顔をお楽しみください。

「……ねえ、なんか変じゃない?」

街道を歩きながら、クレアが唐突に足を止めた。

「なにがさ。またお腹空いたの?」

カノンがやれやれと振り返る。

「違うってば! いや、その……」

クレアは愛用の剣を軽く振ってみた。

ガキッ。

まるでおもちゃが壊れかけたような、変な音が響く。

「……あれ? もう一回」

ガキッ。

「……これ、壊れてない?」

「今さら気づいたの? あんたのガサツな戦い方の賜物でしょ」

カノンが呆れたように鼻を鳴らす。

セインが歩み寄り、クレアの剣をじっと見つめた。

「刃こぼれがひどいですね。かなり深い傷が入っています」

「え、いつから!?」

「少なくとも、さっきの盗賊団との乱戦からでしょうね」

「全然気づかなかった……」

ショックを受けるクレアの横で、ミルも自分の杖を恐る恐る確認する。

「……あ」

「どうしたの、ミル?」

「ひび……入ってる……」

よく見ると、魔力を流す大事な杖に、細い亀裂が走っていた。

1. ドワーフの「本気」

「どれどれ、アタシに見せてみな」

最後尾を歩いていたケットルが、のっしのっしと近づいてきた。

剣を受け取り、指先で軽く弾く。

「……こりゃダメだねぇ。このまま使ってたら、次の獲物を叩いた瞬間にポッキリ折れてたよ」

「えええっ!?」

クレアの顔が真っ青になる。

「杖も同じだね。これ以上無理に魔力を込めたら、魔法が暴発する前に粉々に砕けてただろうさ」

ミルがヒッ、と短い悲鳴を上げて固まった。

「え、じゃあどうするの? 武器がないと戦えないよ!」

「どうするもなにも、直すに決まってるだろ」

ケットルは当たり前のように言い捨て、道の脇にどっかと腰を下ろした。

大きな荷物の中から、年季の入った工具袋を取り出す。

小さな金槌、見たことのない形の石、そして不思議な液体の入った小瓶。

それらを並べた瞬間、ケットルの周りの空気が変わった。

さっきまで酒の匂いをさせていた「のんきな姐さん」の気配が消え、熟練の職人の目になる。

「……すご」

カノンが思わず呟いた。

音だけが、森の中に一定のリズムで響き渡る。

カン、カン。キン、キン。

無駄のない動き。一点に集中する眼差し。

ミルはその手つきを、吸い込まれるように見つめていた。

「……綺麗……」

「見てわかるの?」

クレアが小声で聞くと、ミルは「なんとなく……魔法が喜んでる気がする」と小さく答えた。

2. 生き返った獲物

やがて、ケットルがふうっと息を吐いて手を止めた。

「よし、応急処置完了。振ってみな」

クレアは手渡された剣を握り、ゆっくりと空を斬った。

――スッ。

嫌な金属音が消え、空気と溶け合うような鋭い音が響く。

「……すごい! 全然違う、新品みたい!」

「まあ、あくまで繋ぎだよ。街に帰ったらちゃんと打ち直してやるからね」

ケットルは笑いながら、ミルの杖も同じように丁寧に整えて返した。

「はいよ。これで少しは魔力の通りが良くなるはずさ」

「……ありがとう、ケットルさん」

ミルの声に、パッと明るさが戻る。

その時だった。

ガササッ!

茂みが揺れ、二匹の小型魔物が飛び出してきた。

「……また? 懲りないねぇ」

クレアが剣を構える。さっきまでとは違い、その動きには一切の迷いがない。

「今度は本当に小型だね。やるよ!」

クレアが鋭く踏み込む。

修理された剣が、吸い込まれるように魔物を捉えた。

一閃。

手応えは驚くほど軽かった。

「……おおっ!」

自分でも驚くほどのキレに、クレアの目が輝く。

「いいね、冴えてるじゃない!」

カノンが笑い、もう一匹へ向かおうとする。

けれど、それより早くミルが前に出た。

「……小さく。ちょっとだけ……」

短く、落ち着いた詠唱。

杖の先から放たれた衝撃波が、狙い違わず魔物を吹き飛ばす。

森の木々を一本も傷つけることなく、一匹だけを仕留めてみせた。

「……できた」

ミルが小さく、満足そうに微笑んだ。

3. 支える人の「重み」

セインが眼鏡を直しながら、優しく頷いた。

「二人とも、とても落ち着いていますね」

ケットルは後ろでそれを見守り、何も言わずに酒袋を傾けた。

少しだけ、誇らしげに口角を上げている。

「……ねえ。これ、ケットルに直してもらってなかったら、どうなってたかな」

クレアが自分の剣を見つめながら呟く。

「折れてたねぇ。そんで、あんたは丸腰で追いかけ回されてたはずだよ」

ケットルの言葉に、カノンが深く頷いた。

「派手に戦うのもいいけどさ。結局、**支えてくれる人がいないと、あっさり終わっちゃうよね。**冒険って」

セインが静かに、けれど確かな声で言った。

「ええ。その通りです」

ミルも小さく頷き、みんなの顔を見た。

クレアは振り返り、深々と頭を下げた。

「……ありがと、ケットル! 助かった!」

「いいってことよ。アタシの仕事は、あんたたちを無事に目的地まで届けることだからね」

ケットルはケラケラと笑い、空になった酒袋を振ってみせた。

「その代わり! 今夜の野営は、アタシにいい酒を一口飲ませておくれよ?」

「ほどほどにね!」

クレアの即答に、みんなの笑い声が広がった。

五人はまた歩き出す。

前を行く者。それを見守り、支える者。

デコボコだった五人の歯車が、少しずつ、けれど確実に噛み合い始めていた。

最弱パーティ、今日もちょっとだけ成長中。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

「支えてくれる人がいないと、あっさり終わっちゃう」

カノンのこの言葉、シンプルですが冒険の本質を突いていますよね。

前へ出て戦う者、それを後ろから支え、道を作る者。

バラバラだった5人が、それぞれの役割を理解し、感謝を口にできるようになった……これこそが、何よりの「成長」かもしれません。

ケットルの手によって「生き返った」獲物を手に、少しずつ足並みが揃い始めた最弱パーティ。

次はどんなトラブルが彼らを待ち受けているのでしょうか。

……とりあえず、今夜のケットルには特上の酒を振る舞ってあげてほしいですね!

(飲みすぎには注意ですが!)

また次のお話でお会いしましょう。

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