第44話 地下の秘密と、魔道具師の遺産
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
お隣のマーガレットさんから贈られた(?)新鮮な魚を堪能したリトル・リンクの面々。
しかし、彼女が去り際に言い放った「地下の隠し扉」という言葉が、五人の頭から離れません。
もし本当に呪われているなら、早急な論理的対処が必要ですし、もしお宝が眠っているなら、それはそれでパーティの「成長」に繋がります。
新居の地下、ケットルの工房の奥に眠る秘密。
リトル・リンク、今日は「自宅ダンジョン」の攻略に挑みます!
1. 徹底調査、開始!
「よし! みんな、準備はいい? 今日はうちらの『城』の安全確認、兼、宝探しだよ!」
朝食後、クレアは腰に新しい相棒の『切ない剣』を帯び、気合十分で地下室へと降りました。昨日の鍛冶仕事で煤けていた工房は、ケットルによってきれいに整理されています。
「……呪い、なんて非論理的です。おそらく、以前の住人が残した魔力回路の残滓が、奇妙な現象を引き起こしているだけでしょう。さっさと特定して、最適化しますよ」
女性僧侶のセインは『静かになさい(物理)の槌』を構え、壁の構造を叩いて音を確認していきます。
「……隠し扉。お宝。もし高いものだったら、もっといいレバー、買えるかな」
ミルも、遮光マントを羽織ってやる気を見せています。
「ハッハァ! 隠し扉探しなら、アタシの出番だねぇ。ドワーフの眼を舐めちゃいけないよ!」
ケットルが壁をなぞり、石の継ぎ目を丹念に調べていきました。
2. カノンの「眼」
しかし、数十分探しても、それらしいスイッチは見つかりません。
皆が諦めかけたその時、工房の隅で埃を被った棚を動かしていたカノンが、声を上げました。
「ねえ、これ見て。……この床の傷、不自然じゃない?」
カノンが指差したのは、重い作業台の下でした。
一見、ただの引きずり跡に見えますが、それは円を描くように微かに弧を描いていました。
「……これは、回転式の隠し扉の軌道ですね。カノン、よく見つけました」
セインが頷き、その場所の魔力濃度を測定します。
「……ビンゴだ。このレンガ、少しだけ、魔力が漏れてる」
ミルが指差した壁の一点。クレアがそこをぐいっと押し込むと、ゴゴゴゴ……と重々しい音を立てて、壁の一部が回転し始めました。
3. 魔道具師の「整理棚」
隠し扉の先。そこにあったのは、恐ろしい呪いの祭壇……ではなく、整理整頓された小さな「資材倉庫」でした。
棚には、かつての住人が集めていたであろう不思議な鉱石や、用途不明のネジ、そして「試作品」と書かれた札のついた奇妙な道具が並んでいます。
「ガハハ! 呪いどころか、ここは宝の山じゃないか! 見てな、この『自動で温度を保つ魔導ヒーター』! これがあれば、冬の工房作業も楽勝だよ!」
ケットルが目を輝かせて戦利品を抱え上げます。
しかし、部屋の奥の机の上には、一通の手紙が置かれていました。
「この家を次に借りた者へ。
地下の隠し扉を見つけたということは、君たちにはそれなりの観察眼があるようだ。
呪いなんて噂は、私が静かに研究するために流したものさ。
置いてある素材は自由に使っていい。ただし、一つだけお願いだ。
庭の井戸の底に溜まった泥を、たまには掃除してやってくれ。
あれが詰まると、私の最高傑作の『自動洗浄トイレ』が止まってしまうからな」
「……呪いの正体は、掃除のお願いでしたか。非常に論理的な、けれど人騒がせな遺言ですね」
セインが呆れたように溜息をつきました。
4. 快適な新生活
結局、マーガレットさんが言っていた「呪い」は、魔道具師が人を寄せ付けないために流したデマに過ぎませんでした。
ですが、隠し扉の先で見つけた「魔導資材」は、ケットルにとっては何よりも価値のあるお宝でした。
「よし! この資材を使って、カノンの部屋に『絶対にバレない金庫』を作ってやるよ! クレアの剣には、もっと使いやすい鞘をね!」
「やったー! ケットル大好きー!」
その夜、リトル・リンクの家には、魔道具師の遺産である「自動洗浄トイレ」と「魔導ヒーター」による、最先端の快適な生活がもたらされました。
「……ねえ、セイン。結局、幽霊とかはいなかったけど……うちら、また少し『強く』なったよね?」
「……ええ。拠点の機能性が向上したことで、休息の質が上がります。それは間違いなく、次の冒険への『成長』ですよ」
水都リフェルナの片隅。
小さな城の秘密を一つ解き明かした五人は、昨日よりも少しだけ誇らしげに、自分たちのベッドへと向かいました。
リトル・リンク、今日もちょっとだけ成長中。
第44話をお読みいただき、ありがとうございました。
結局、「呪い」の正体は掃除をサボった魔道具師のブラフでしたが、結果として彼女たちは便利な魔導具と資材を手に入れました。
拠点の機能が大幅にアップし、いよいよ本格的な冒険者活動が始まります。
次回、第45話。
新しくなった装備と、万全の体調を携えて、彼女たちはギルドへと向かいます。
「Bランクからの推薦状」を持った彼女たちに、ギルドはどんな依頼を用意しているのか。
リトル・リンクの「プロ」としての第一歩が始まります。
引き続き、応援よろしくお願いします!




