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最弱パーティ、今日もちょっとだけ成長中  作者: beck2026


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第42話 折れた相棒と、地下工房の火

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

前回、水都リフェルナに自分たちの「城」を構えたリトル・リンク。

引っ越し祝いのレバーパーティーで英気を養った五人ですが、一つだけ重大な問題が残っていました。

リーダー・クレアの愛剣『とりあえず突っ込む用の剣』が、先のゴーレム戦で再起不能なほどに叩き折れていたのです。

今回は、地下工房を完成させたドワーフの女の子・ケットルが、職人としての本領を発揮します。

「最弱」の殻を破り、新しいステージへ進むための、新しい「剣」の誕生。

ですが、その名前にはケットル独自のこだわりが詰まっていました。

1. 剣の葬式と、職人の眼

「……あうぅ。やっぱり、もうダメかなぁ、これ」

新居のリビング。クレアは、テーブルの上に並べられた「それ」を見て、情けない声を上げました。

かつては安物のロングソードだったはずの『とりあえず突っ込む用の剣』は、今や半分の長さになり、刃はボロボロに欠け、熱で変色してしまっています。

「論理的に見て、修復は不可能です。構造的な強度が完全に失われていますね。むしろ、よくあの自爆の中でこれだけで済んだと言うべきです」

女性僧侶のセインが眼鏡を光らせ、冷淡な、しかしどこか労るような口調で告げました。

「……悲しい。クレアが、丸腰。私が守らなきゃ。……でも、お腹すく」

吸血鬼の少女、ミルがシーツにくるまりながら呟きます。

そこへ、地下からすすで顔を汚したケットルが上がってきました。

彼女はクレアの手元にある折れた剣をひったくるように手に取ると、職人の眼でじっと観察しました。

「ガハハ! クレア、そんな顔すんじゃないよ。この剣はね、死んだんじゃない。あんたを守りきって、次の『素材』に生まれ変わる準備ができたのさ」

2. ケットル、本気を出す

「さあ、地下においで! リトル・リンクの専属職人として、最高の仕事を拝ませてやるよ!」

ケットルに急かされ、五人は地下室へと降りました。

そこは昨日までのカビ臭い地下室ではなく、リフェルナの魔道具師が使っていた排気設備を活かした、立派な鍛冶場へと変貌していました。

「今回の報酬、金貨120枚。家代と生活費を引いても、まだ余裕があるだろ? セイン、経費の承認をお願いするよ。勇者の相棒を作るための、最高級の素材代さ」

セインは一瞬、手帳の数字を確認して眉を寄せましたが、折れた剣を見るクレアの寂しそうな顔を見て、小さく頷きました。

「……許可します。将来的な戦闘効率の向上、およびリーダーの生存率向上を目的とした『戦略的投資』と見なします。ただし、予算は金貨15枚までですよ」

「十分だねぇ! さあ、市場へ買い出しだ!」

五人は再びリフェルナの市場へ向かい、魔導伝導率の高い『秘銀ミスリルの破片』や、強靭な『剛鉄のインゴット』を買い揃えました。

3. 鋼の歌と、五人の魔力

地下工房に戻ると、ケットルの「本気」が始まりました。

炉に火が灯り、真っ赤に熱せられた鋼が台に置かれます。

「クレア、この折れた剣を炉に入れな! あんたの戦いの記憶を、新しい鋼に混ぜ込むんだ!」

ケットルの指示で、クレアが折れた剣を炎の中へ。

ハンマーが振り下ろされるたびに、小気味良い金属音が地下室に響きます。

「カノン、風を送って! 一定の温度を保ちな! ミル、あんたの魔力を少しずつ、鋼の奥まで浸透させるんだ。セイン、論理的な構造強化の付与を頼むよ!」

ケットル一人の力ではありません。

五人がそれぞれの役割を果たし、一つの武器に命を吹き込んでいきます。

それはまさに、リトル・リンク(小さな繋がり)というパーティそのものの姿でした。

数時間の猛作業の末、冷やされた水瓶から、一振りの美しい剣が姿を現しました。

安物とは違う、青白い光を帯びた、しなやかで鋭い刃です。

4. ケットル流、魂の命名

「……すごい。軽い。吸い付くみたいだ」

手渡された新しい剣を握り、クレアは感嘆の声を漏らしました。

安物の剣のときは感じなかった、自分の腕の一部になったかのような不思議な一体感。

「よし! 最後に一番大事な儀式だ。アタシが魂を込めて、名前を刻んでやったよ!」

ケットルが満足げに鼻を鳴らし、剣の根元を指差しました。

そこには、ドワーフの文字でこう刻まれていました。

『折れたら切ない・ミスリル配合のすんごい斬れ味(予定)の剣』

「……えっ。これ、名前?」

クレアが固まります。

「ああ、そうだとも! 素材の高級感と、アタシの職人としての期待、そして万が一折れた時の絶望感をすべて網羅した、最高に論理的な名前だろ?」

ケットルは胸を張ります。

「……論理的? どこがですか。ただの長ったらしい感想文ではありませんか。これでは『リンク・エッジ』の方がまだマシでした」

セインがこめかみを押さえて溜息をつきました。

「……いい。変な名前だけど、強そう。とりあえず、……『切ない剣』って呼ぼう」

ミルが冷静に略称を提案しました。

「あはは……。まあ、ケットルが一生懸命作ってくれたんだもんね! 大事にするよ、『切ない剣』!」

新しい家。新しい装備。そして、変わらない仲間たち。

折れた剣の悔しさを糧にして、リトル・リンクはまた一つ、確かな「力」をその手に掴みました。

最強への道は、まだ始まったばかり。

けれど、彼女たちの「繋がり」を断てる刃は、もうどこにもありません。

リトル・リンク、今日もちょっとだけ成長中。

第42話をお読みいただき、ありがとうございました。

ようやくクレアの武器がアップデートされました!

ケットルが命名した**『折れたら切ない・ミスリル配合のすんごい斬れ味(予定)の剣』、略して『切ない剣』**。

名前は相変わらず「最弱」な雰囲気を漂わせていますが、その実力は本物です。

地下に自分たちの工房があることで、これからもケットルの奇天烈な発明(と命名)がリトル・リンクの装備を支えていくことでしょう。

次回は、ついにこの『切ない剣』を携えての初仕事……の前に、**「新築祝いの挨拶にやってきた、お隣のちょっと厄介な住人」**との出会いを描く予定です。

引き続き、応援よろしくお願いします!

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