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最弱パーティ、今日もちょっとだけ成長中  作者: beck2026


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38/51

第38話 警告の「赤」と、五重の「鎖」

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

前回、Bランクパーティ『蒼穹の剣』の猛攻すら跳ね返した『古のゴーレム』。しかし、リトル・リンクの「泥臭い嫌がらせ」によってその無敵の防御は崩されました。

……ですが、追い詰められた怪物は、最悪の「最後っ屁」を用意していました。

暴走する膨大な魔力。回避不能の自爆シークエンス。

絶望的な状況で、超・論理派の女性僧侶セインが下した決断とは?

そして、五人の乙女たちが結んだ「鎖」は、死の光を撥ね退けることができるのか。

リトル・リンク史上、最大の試練が幕を開けます。

1. 警告の「赤」

「……マズい。……みんな、今すぐ全力で離脱して!!」

カノンの、悲鳴に近い絶叫が冷たい遺跡の石壁に反響した。

膝を突き、活動を停止したかに見えたゴーレム。しかし、その全身に刻まれた紋章は、先ほどまでの静かな青を捨て、網膜を刺すような不吉な「赤」へと染まりきっていた。

体内に蓄積された、アリスターの剛剣の衝撃と魔術師の極大魔法。それら膨大なエネルギーが行き場を失い、制御を離れてオーバーヒートを起こしているのだ。

「自爆する気か……!? 間に合わん、この距離では遮蔽物すら存在しないぞ!」

蒼穹のリーダー、アリスターが苦渋に満ちた表情で盾を構える。だが、その自慢の魔法盾は先ほどの死闘でひび割れ、魔力も底を突いていた。傍らの魔術師も、使い果たした魔力による倦怠感で膝を突き、荒い息を吐いている。

「ギギ……ガガ、ガガガガガガ……!!」

ゴーレムの胸部が観音開きに展開し、その中心部にある「コア」が太陽のような輝きを放ち始める。高密度の魔力が一点に収束し、周囲の空気がバリバリと静電気を帯びて震える。

放たれれば、この広間にあるすべての命が、跡形もなく消し飛ぶ。

2. 「論理」を捨てた決断

「……セイン、どうすればいい!? 逃げるの!? それとも――」

リーダーのクレアが叫びながら、背後のセインを振り返る。

セインは一瞬、愛用の手帳を握りしめた。彼女の脳内の計算盤が高速で弾き出した結果は、非情なものだった。

直撃を受けた場合の生存確率は0.003%。今から背を向けて逃げたとしても、爆風の到達範囲を抜ける前に背中を焼かれる。防御魔法で耐えるには、現在の自分の魔力残量では絶望的に足りない。

論理的に考えれば、ここは各自が最大限の自己防衛を行い、生存率の高い者だけが生き残る道を探るべき場面だ。……けれど。

彼女は眼鏡を静かに押し上げ、手帳を懐に仕舞い込んだ。その瞳には、もはや冷徹な計算ではなく、静かな、それでいて苛烈なまでの決意の灯が宿っている。

「……逃げません。私たちのパーティ名、**『リトル・リンク(小さな繋がり)』**の定義に、窮地で仲間を捨てて逃走するという項目は存在しませんから。……論理を捨ててでも、守り抜きます」

セインが、魔法銀の槌**『静かになさい(物理)の槌』**を凛とした所作で天高く掲げた。

「ケットル、ありったけの『冷却弾』を広域展開! ミル、ノヴァの出力は不要です。……精密な『ガーネット』で熱源を分散し、爆縮を誘発させて! クレア、カノン! 私の背後に、そこの動けないエリートたちを放り込んでください!」

「了解っ! 死ぬ気で守って、死ぬ気で生き残るよ!!」

リーダーのクレアが即座に応じ、驚愕に目を見開くアリスターの襟首を掴んで、強引にセインの背後へと引きずり込んだ。

3. 五重の「鎖」

「……血よ。……凍るほどの、静寂を。……『リトル・ガーネット・フリーズ』!」

ミルが、自らの腕から流れる血を極限まで魔力へと変換し、蒼白い冷却の魔力を乗せた光弾を**『もう壊さない(予定)の杖』**から連射する。

それはゴーレムの胸部、まさに爆発せんとする核の周囲を正確に狙い撃ち、わずかでも熱反応を遅らせるための精密な「嫌がらせ」だった。

「ハッハァ! アタシの虎の子、職人秘蔵のガス弾を全部持っていきな!!」

ドワーフの女の子、ケットルが**『とりあえず撃ってみる用のパチンコ』**を猛連射する。放たれた弾丸が空中で割れ、遺跡の温度を一気に氷点下まで下げる冷却ガスが広間に充満した。

そして、爆発の瞬間――。

「『構造解析アナライズ・バリア』――多重並列、重層展開!!」

セインが放ったのは、一枚の巨大な盾ではなかった。

それは蜂の巣のように緻密に組み合わされた、数百、数千の小さな六角形の魔力面。

衝撃を一つ一つの面で分散し、熱を隙間から逃がし、物理法則の暴力さえも「計算」によってねじ伏せる。彼女の、意地とプライドが形になった**「論理の結晶」**だった。

4. 繋がれた命

――ドォォォォォォン!!

真っ白な光が視界を埋め尽くし、すべての音が消失した。

凄まじい衝撃波と、肌を焼くほどの熱風が五人を襲う。セインの展開した多重バリアが、一瞬で数百枚単位で砕け散っていく。

「……あ、ぐ……っ、カは……ッ!!」

先頭でバリアを支えるセインの腕が、衝撃に耐えかねて悲鳴を上げる。

そこへ、クレアが自分の身体をセインに重ね、背後からその細い腕を支えた。さらにカノンが肩を貸し、ミルとケットルが二人の腰をがっしりと抱え込む。

五人が一つの「塊」となり、五重の鎖となって、死の光に抗う。

「……っ、うちらは……ここで消えたりしない……! 世界で一番、強固に繋がってるんだからぁぁ!!」

光が収束し、再び静寂が訪れた時。

そこには、装備はボロボロになり、煤に汚れながらも、誰一人として欠けることなく立ち尽くす五人の乙女の姿があった。

背後で守られた『蒼穹の剣』のメンバーたちは、ただ呆然と、自分たちの前に立つ「最弱」と呼ばれた冒険者たちの背中を見つめるしかなかった。

自分たちが「足手まとい」と切り捨てようとした小さな背中が、今、遺跡の守護者よりも大きく、頼もしく見えていた。

「……終わった、のかな。……みんな、生きてる?」

クレアが力なく笑い、そのまま糸が切れたように膝を突いた。

巨体のゴーレムは完全に沈黙し、元の石くれへと戻っている。

遺跡の奥には、確かな勝利の静寂と、五人の荒い鼓動だけが流れていた。

リトル・リンク、今日もちょっとだけ成長中。

第38話をお読みいただき、ありがとうございました!

ゴーレムの自爆という絶体絶命の危機を、リトル・リンクは「連携」と「意地」で乗り越えました。

セインが弾き出した「生存確率ほぼゼロ」という計算を狂わせたのは、理屈を超えて彼女を支えた仲間たちの存在でした。

Bランクパーティを救い、遺跡の番人を沈黙させた彼女たち。

エリート集団である『蒼穹の剣』の面々は、自分たちを救った「最弱」たちに何を語るのでしょうか。

そして、無事にギルドへ戻った後の「金貨100枚」の使い道は……?

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