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最弱パーティ、今日もちょっとだけ成長中  作者: beck2026


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第37話 論理の盾と、泥臭い反撃

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

前回、Bランクパーティ『蒼穹の剣』の圧倒的な実力を見せつけられ、プライドを粉々にされたリトル・リンク。

しかし、遺跡の最深部で待ち構えていた『古のゴーレム』は、エリートたちの「洗練された暴力」すらも飲み込む怪物でした。

最強の剣が弾かれ、極大魔法が吸い取られる絶望的な状況。

そこで声を上げたのは、神も奇跡も信じない、あの「理屈っぽい僧侶」でした。

弱者が強者に教える、真の「戦い方」が始まります。

1. 「力」の敗北

「……なっ、私の魔法が、吸い取られている……!? そんなバカなことが!」

蒼穹の魔術師が、震える声で驚愕を露わにした。

彼女が放った、一撃で城門をも焼き尽くすほどの極大火炎球。それが巨大な**『古のゴーレム』**の身体に触れた瞬間、爆発を起こすことすらなく、霧が晴れるようにスッと石の肌へと吸い込まれていったのだ。

「ギ、ギギ……ギギィ……」

魔力を飲み込んだゴーレムの全身に刻まれた古代の紋章が、不気味な青白い輝きを増していく。

この個体は、受けた魔力をそのまま自身の「硬度」と「質量」へと変換する――かつての魔法大戦が生み出した、究極の魔術師殺し(アンチ・メイジ)だった。

「魔法がダメなら、俺が叩き斬るだけだ! 下がれ!」

リーダーのアリスターが、閃光のような速さで踏み込み、自慢の大剣を上段から叩きつける。岩をも断つはずの一撃。

だが、ガギィィン! と、鼓膜を劈くような硬質な音が響き渡る。

あのアリスターの剣が、激しい火花を散らして無惨に弾き返されたのだ。

「……嘘だろ。傷一つ、つかないだと……?」

エリートたちの顔に、初めて「焦り」と「死」の恐怖が浮かんだ。強すぎる力が、逆に敵を無敵の要塞へと変えてしまっていた。

2. セインの「解析」

「……当然の結果です。盲目的な出力の増大は、この状況において最も非論理的な選択ですよ」

背後から、静かだが氷のように冷徹な声が響いた。

セインが眼鏡のブリッジを指で押し上げ、一歩前に出る。彼の眼鏡の奥で、魔力の奔流を追う瞳が鋭く光っていた。

「あの個体は『魔力循環型硬化外殻』。強い魔力、強い物理衝撃を与えれば与えるほど、表面の分子構造を瞬時に再構成し、硬化させます。……皮肉なものですね。あなた方の『誇り高い強さ』こそが、あの怪物を無敵に仕立て上げているのですよ」

「……何だと!? ならばどうすればいい! 手も足も出ないではないか!」

アリスターが剣を握り直し、歯を食いしばりながら叫ぶ。

セインは淡々と、しかし確信に満ちた口調で答えた。

「……『弱く』戦えばいいのですよ。……カノン、コアの脈動を!」

「了解っ! ……三秒ごとに、左肩の関節付け根が熱を持つよ。そこだけ、魔力の流れが不自然に逆流してる。あそこが『排熱口』だ!」

カノンの、借金取りすら見逃さない鋭い視覚が、無敵に見える岩の巨体の、わずかな「綻び」を見つけ出した。

3. 嫌がらせの「極致」

「よぉし、アタシの出番だねぇ! 仕上げてやった武器の性能、試させてもらうよ!」

荷物持ちのドワーフ女子、ケットルが愛用の**『とりあえず撃ってみる用のパチンコ』**を構える。

「あんな岩の塊に、そんな子供の玩具が効くわけが――」

蒼穹の魔術師が鼻で笑おうとした瞬間、ケットルが放ったのは、いつもの『悶絶の激辛玉』ではなかった。それは、ドロリと黒光りする特製の**『粘着泥ねばねば弾』**。

「ハッハァ! 視界を奪うなんて甘いことはしないよ。……関節の『魔力排出口』を物理的に詰まらせてやるのさ!」

ベチャッ!

正確無比に放たれた泥弾が、ゴーレムの左肩の継ぎ目にこびりつく。

排熱と循環を邪魔されたゴーレムの動きが、目に見えてギクシャクと鈍くなった。

「……今です。ミル、最大火力は不要です。……**『もう壊さない(予定)の杖』**の特性を活かし、『リトル・ガーネット』の連続射撃で、その一点だけを削りなさい」

「……うん。……大きくしない。……熱くしない。……ちょっとずつ。……いけっ!」

ミルの杖から、宝石のような小さな光弾が、まるでマシンガンのように絶え間なく放たれる。

大きな衝撃を与えず、ただひたすらに「同じ一点」に高周波の振動を与え続ける。

やがて、アリスターの剛剣すら通さなかった極限硬度の皮膚に、小さな、しかし決定的な「ひび割れ」が走った。

4. 声を重ねて

「クレア! あのひび割れに、剣を差し込んで!」

「……おっけー! いつでもいけるよ! ……いち! ……!」

クレアが叫び、**『とりあえず突っ込む用の剣』**を構える。

その声に合わせ、カノンが反対側から注意を引き、ケットルが煙幕でゴーレムの逃げ道を塞ぐ。

Bランクパーティが呆然と見守る中、リトル・リンクの5人は、まるで一つの精密な機械のように連動していた。

「……セイン、行けるよね!?」

「ええ。……『構造解析アナライズ・バリア』、前方へ指向性展開!」

セインがクレアの背中を、物理的な質量を持った魔法の壁で力強く押し出す。

バリアの反動を利用して加速したクレアの一撃が、ゴーレムのひび割れた一点へと、吸い込まれるように突き刺さった。

メキ、メキメキッ!!

無敵を誇った巨体が、自分自身の重さに耐えかねるように、音を立てて膝を突いた。

「……信じられん。俺たちの全力をすべて跳ね返した怪物を、あんな……泥臭い手口で……」

アリスターの呆然とした呟きに、セインは眼鏡を直し、淡々と答えた。

「……私たちは『最弱』ですから。強く戦えない分、勝つための方法は、死ぬほど考えてきたつもりですよ。泥を啜るのも、嫌がらせをするのも、私たちの専門分野ですので」

だが、ゴーレムの青白い紋章は消えていなかった。

それどころか、膝を突いた身体から、さらに不吉な蒸気が吹き出す。

「……総員、離脱してください。……真の恐怖は、ここからのようです」

セインの言葉と共に、ゴーレムの身体が真っ赤に熱を持ち始めた。

リトル・リンク、今日もちょっとだけ成長中。

第37話をお読みいただき、ありがとうございました。

「強い攻撃が効かないなら、弱い攻撃を積み重ねればいい」

そんな、理屈では分かっていてもプライドが邪魔してできない戦い方を、リトル・リンクは平然とやってのけました。

これこそが、彼らが雑用依頼の中で培ってきた「生き残るためのロジック」です。

しかし、無敵の防御が崩れた時、ゴーレムは次の形態へと移行しようとしています。

熱を持ち始めた岩の巨体。セインが感じた「真の恐怖」の正体とは?

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