第35話 ギルドの「場違い」な呼び出しと、共同戦線
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前回、中級依頼である『アクア・ラプトル』を見事な連携で討伐したリトル・リンク。
銀貨50枚という大金(彼らにとっては)を手にし、意気揚々とギルドへ戻った彼女たちを待っていたのは、なんとギルドの二階――選ばれた者しか足を踏み入れない『特別応接室』への呼び出しでした。
最弱パーティが、街で一番のエリート集団と相まみえる時、物語は新たな局面を迎えます。
「身の丈」を知る彼女たちが、あえて選ぶ「背伸び」の決断をどうぞお見逃しなく!
1. ギルドの「場違い」な呼び出し
「……ねえ。本当に、本当に、ここで合ってるんだよね?」
リーダーのクレアが、落ち着かない様子で何度もギルドの二階へと続く階段を振り返った。
そこは、いつも自分たちが騒がしくエールを煽り、泥臭い依頼を奪い合っている一階の酒場とは、まるで別世界だった。廊下には赤い絨毯が敷かれ、空気には上質な香香が混じっている。
「銀貨50枚の依頼を一つこなしただけで、ギルドの特別応接室に呼び出し、か。……悪いけど、あたしの鼻が『超面倒なトラブル』の臭いを嗅ぎつけてるよ」
カノンが腰の**『借金回避の双牙』**の柄を指先で弄びながら、珍しく緊張した面持ちで呟く。
セインが静かにその先に立ち、重厚なオーク材の扉をノックした。返ってきたのは、短く、それでいて芯の通った「入れ」という声。
扉を開けると、そこには磨き上げられた白銀の鎧を纏う、見るからに「エリート」な四人組がゆったりとソファに腰掛けていた。
「……遅かったな。君たちが噂の『リトル・リンク』か」
中央に座る金髪の剣士が、鋭い眼光で五人を射抜いた。
彼らはこの街でも有名なBランクパーティ、『蒼穹の剣』。
「最弱」から這い上がりつつあるリトル・リンクとは、住む世界も、こなしてきた死線の数も違う、真の強者たちだった。
2. 破格の提案
「……用件は何でしょうか。私たちの時間は、あなた方ほど高くはありませんが、無駄遣いするつもりもありません。ましてや、冷やかしなら早々に失礼させていただきます」
セインが眼鏡の位置を直し、一歩前に出る。相手がBランクだろうと、彼の「論理」は揺らがない。
蒼穹のリーダー、アリスターは不敵に笑い、テーブルの上に一枚の羊皮紙を広げた。
「単刀直入に言おう。北の極寒地に眠る『忘却の遺跡』。そこに潜む守護者――**『古のゴーレム』**の討伐に、君たちの力を貸してほしい」
「ゴーレム!? あんな山みたいな怪物、うちらには無理だよ! 剣だってポッキリ折れちゃうよ!」
クレアが思わず叫ぶ。実際、彼女の**『とりあえず突っ込む用の剣』**では、ゴーレムの岩の肌を傷つけることすら難しいだろう。だが、アリスターの提案は意外なものだった。
「正面から殴り合えとは言っていない。あの遺跡の内部は入り組んでおり、大型魔法は使えない。……君たちが以前、倉庫整理や甲虫の追い払いで見せた、狭い場所での『精密な連携』と『相手を殺さずに制御する戦術』が必要なのだ。報酬は、金貨100枚。どうだ?」
金貨、100枚。
その響きを聞いた瞬間、カノンの目が一瞬で「¥」の形に変わり、クレアも息を呑んだ。それは今の彼女たちにとって、一生かかっても稼げるかどうかの途方もない金額だった。
3. 格差とプライド
「……金貨100枚は、非論理的なまでに魅力的ですが。……質問です。私たちを、自分たちが生き残るための『捨て駒』にするつもりではありませんか?」
セインの冷徹な問いに、アリスターの隣に座る魔術師の女性が、薄い唇を吊り上げて鼻で笑った。
「捨て駒にする価値さえ怪しいものだわ、こんな子供たち。……でも、アリスターが君たちの『血の精密魔導』と、状況を冷徹に分析する『指揮』を妙に高く評価していてね。……個人的には信じられないけれど」
ミルがびくりと肩を震わせ、セインの背中に隠れるようにして**『もう壊さない(予定)の杖』**を抱え込んだ。
「……怖い。……あの人たちの魔力、……すごく重い。……飲み込まれそう」
ミルの感覚は正しい。彼らからは、圧倒的な魔力と、数多の魔物を屠ってきた者特有の冷たい自信が溢れ出している。
自分たちが持っているのは、ケットルが付けてくれた「変な名前の武器」と、泥臭い雑用で培った連携だけ。Bランクという壁は、想像以上に高く、厚かった。
4. 共同戦線の幕開け
「……よし、受けよう!」
沈黙を破ったのは、クレアの真っ直ぐな声だった。彼女は拳を強く握り、仲間たちを一人ずつ見つめた。
「金貨のためだけじゃない。……うちらがここまでやってきたことが、本物のプロにどこまで通用するのか、試してみたいんだ! 雑用専門の『リトル・リンク』が、Bランクの背中を支えてやったら、最高にカッコいいと思わない?」
カノンがやれやれと溜息をつき、ミルがおどおどとしながらもクレアの手を握る。
ケットルが背中の巨大な荷物を揺らし、酒袋を叩いて「ガハハ!」と笑った。
「面白そうじゃねえか。アタシが磨いた武器の『本気』、見せてやろうじゃないの」
セインだけは、アリスターをじっと見据えたまま、手元の手帳に淡々とこう書き込んだ。
【 記録:Bランクパーティとの共同戦線。現在の生存確率、42.5%。……ただし、私たちの『繋がり(リンク)』が私の計算を超えれば、その限りではない 】
「交渉成立だ。……期待させてもらうよ、リトル・リンク。君たちの、その『泥臭いロジック』にな」
こうして、住む世界も実力も違う二つのパーティによる、命がけの遺跡攻略が始まった。
リトル・リンク、今日もちょっとだけ成長中。
第35話をお読みいただき、ありがとうございました!
ついに物語は大きな山場、Bランクパーティとの共同戦線へと突入します。
金貨100枚という破格の報酬。けれど、その裏にあるのは「古のゴーレム」という絶望的な強敵です。
セインの弾き出した生存確率「42.5%」という数字を、彼女たちはどうひっくり返していくのか。
そして、エリート集団である『蒼穹の剣』を相手に、ケットルの調整した「変な名前の武器」たちがどのような輝きを見せるのか……。
次回、吹雪の舞う「忘却の遺跡」での死闘が始まります。
引き続き、リトル・リンクの全力の「背伸び」を応援してください!




