表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱パーティ、今日もちょっとだけ成長中  作者: beck2026


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/72

第32話 紅い爆鳴と、計算された救い

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

前回、なけなしの金貨30枚を投じ、職人ケットルの手で「自分たち専用」の調整を施されたリトル・リンクの装備たち。

「新しい武器を買う」のではなく「今の相棒を磨く」道を選んだ彼女たちですが、その成果は想像以上だったようです。

今回は、そんな新生装備を携えての特訓回。

無邪気な破壊神の片鱗を見せるミルと、神も奇跡も信じない超現実主義な僧侶セイン。

二人の「秘められた力」が、ついに具体的なスキルとなって現れます。

最弱パーティが少しずつ「プロフェッショナル」への階段を登り始める瞬間を、どうぞお見守りください!

1. 職人の「細工」

 翌朝、街道に差し込む朝日は昨日よりも明るく感じられた。

 歩き始めてすぐ。

 リーダーのクレアが我慢しきれないといった様子で、ミルの持つ杖を覗き込む。

「……ねえ、ミル。杖、どう? 何か変わった感じする?」

 見た目こそ、昨日までと大きくは変わらない。

 しかし、その内部にはドワーフ秘伝の処置が施されていた。

 魔法銀を贅沢に溶かし込み、芯材をミルの魔力に馴染む特殊なものへと交換。

 それは、まさに**『特製チューニング』**。

「……うん。……すごい」

 ミルが、新しく巻き直されたグリップをぎゅっと握りしめる。

「持ってるだけで、身体の一部みたいに温かい」

 これまでは魔力を流そうとするたびに、まるで錆びた水道管を通るような「ひっかかり」を感じていた。

 けれど、今は違う。

 指先から魔力が吸い込まれるように、淀みなく先端へと流れていく。

「ガハハ! それが『職人の技』ってやつだよ」

 後ろを歩くケットルが、自慢げに赤い鼻を鳴らした。

 その手には、余った金貨で買ったと思わしき高そうな酒瓶。

「ただ高いだけの石を積むより、持ち主の癖に合わせるのが一番さ。ミルの魔力を最大限に活かすための処置だよ!」

2. 進化した「リトル・ガーネット」

 その時だった。

 街道沿いの岩陰が、不自然に盛り上がった。

 現れたのは、巨大な**『アイアン・タートル(鉄殻亀)』**。

 鉄のように重厚な甲羅を持つ、このあたりの難敵だ。

 以前のミルであれば、どれだけ魔力を爆発させても、生傷一つ負わせられなかった相手。

「よし、ちょうどいいのが出てきたね!」

 クレアが鞘から剣を抜き、鋭い合図を送る。

「ミルの新しい杖の――試し撃ちだ!」

「……いきます。……血よ、道を作って」

 ミルが、迷いのない動作で杖を振るった。

「――リトル・ガーネット!」

 放たれた深紅の弾丸。

 それは以前よりもずっと小さく、そして、宝石のように鋭利に研ぎ澄まされていた。

――パキンッ!!

 乾いた硬質な音が響く。

 鉄の甲羅を、ミルの魔力弾が容易く貫通したのだ。

 まるで、熱いナイフでバターを切るように。

 派手な爆発はない。

 ただ、狙った一点だけを、確実に。

 それが、新しい「リトル・ガーネット」の姿だった。

3. 効率と、確かな自信

「……嘘。……貫通した……あんなに硬かったのに……」

 ミルが、信じられないものを見るように自分の杖を二度見する。

 そこへセインが駆け寄り、魔物の死骸を分析した。

「素晴らしい。魔力の集束率がおよそ1.5倍に向上しています」

「1.5倍……?」

「ええ。これまでは無駄に拡散していたエネルギーが、一点に集中している。これなら消耗を最小限に抑えつつ、より高いダメージを与えられます」

 カノンが魔物の甲羅に空いた穴を指でなぞり、愉快そうに笑う。

「効率重視、最高じゃん! これでもう、ミルの貧血でバタバタ倒れる心配も減るね!」

「……うん。……怖くない。この杖なら、もっと『ちゃんと』みんなを守れる気がする」

 ミルは、まだ微かに熱を帯びている杖の柄を、愛おしそうに何度も撫でた。

4. リトル・リンクの「手応え」

「よし! 他のみんなの武器も、いい感じに馴染んでるみたいだね!」

 クレアが、青白い光を放つ剣を高く掲げた。

 金貨30枚。

 伝説の武器には遠く及ばない。

 けれど、自分たちのためだけに磨き上げられた相棒たちは、何よりも心強い。

「さあ、この調子でどんどん稼ぐよ! 300枚貯まる頃には、この武器たちが本物の伝説になってるかもしれないしね!」

「景気のいい話だねえ。じゃ、今夜は特製のレバーステーキで決まりだな! ミルの鉄分補給もしなきゃだし!」

 カノンの言葉に、全員が顔を見合わせて笑う。

「「「「おー!!」」」」

 足取りは、昨日よりもずっと力強く、前向きだ。

 パーティ名**『リトル・リンク(小さな繋がり)』**は、新しい装備と共に、また一つ確かな自信へと変わっていった。

最弱パーティ、今日もちょっとだけ成長中。

第32話をお読みいただき、ありがとうございました!

ミルの「二面性」と、セインの「効率至上主義」……最弱パーティのはずが、なんだかどんどん「クセの強いプロ集団」のような雰囲気を醸し出してきました。

特にセインの「神も奇跡も信じない僧侶」というスタンスは、今後、本物の教会関係者と出会った時に一悶着ありそうな予感がしますね。

次回は、この新しい力を引っさげて、ついに少しランクの高い依頼に挑戦します。

果たして彼らの「ロジック」は実戦で通用するのか?

お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ