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最弱パーティ、今日もちょっとだけ成長中  作者: beck2026


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第30話 金貨30枚の使い道と、カノンの指先

いつもお読みいただきありがとうございます。

前回、ひょんなことから手に入れた**「金貨30枚」**。

最弱パーティ「リトル・リンク」にとっては、まさに空前絶後の大金です。

「これで伝説の装備が買えるかも!?」と鼻息を荒くするクレアたちですが、果たして世の中そんなに甘いのでしょうか……。

今回は、彼らが自分たちの「現在地」をちょっぴり思い知る、背伸びと日常のお話です。

黄金の輝き、欲望の香り。


「……ねえ。これ、夢じゃないわよね?」


宿屋の使い込まれた木のテーブル。その中央に、パンパンに膨らんだ革袋が鎮座している。

クレアは壊れ物に触れるような手つきで、そっとその表面を撫でた。


ジャラリ。


重く、鈍く、それでいて妙に甘い音が部屋に広がる。


「夢なもんか! 見てよ、この指! 『今すぐカジノへ全力疾走しろ』って、ビリビリ来てるんだから!」


カノンが獲物を狙うような目で袋に身を乗り出す。すでに指先は紐へと伸びていた。


パシッ。


「……静かになさい」


セインのメイスの柄が、寸分の迷いもなくカノンの手を叩き落とす。


「いたっ! 何するのさ!」


「これはパーティの共有財産です。ギャンブルに消えるなど論外。まずは今後の活動資金として――」


「……鉄分、いっぱい……。レバー、山盛り……食べたい……」


ミルは言い争いなど耳に入っていない。ただ袋を見つめ、静かに幸せな未来を想像していた。


クレアは小さく息を吐く。


「……とりあえず、使い道はちゃんと考えよう。せっかくの大金なんだからさ」


その一言で、全員の視線が袋へと戻った。



「よし! せっかくだし、“強そうな装備”見に行こうよ!」


クレアの一声で、五人は街で一番大きな高級武具店へ足を運んだ。


重厚な扉が静かに開く。中には魔法の残り香と、高価な油の匂い。

壁には伝説級の剣、棚には巨大な魔石を嵌めた杖が並び、どれも眩しく輝いている。


「……うわ、すご……」


思わず声が漏れる。


「これカッコいい! 『雷神の剣』だって! すみません、これいくらですか?」


店員は五人の装備を一瞥し、丁寧な笑みを浮かべた。


「金貨300枚でございます」


沈黙。


空気が固まる。


金貨30枚。それは確かに大金だった。

けれど――ここでは、まるで足りない。


「……こっちの杖は?」


「金貨150枚です」


「……帰りましょう」


セインの判断は早かった。


「私たちには、まだ早い場所です」



店を出た瞬間、背後から笑い声が響いた。


「ガハハ! 名前負けした装備なんざ、今のあんたらには似合わんよ」


振り返ると、ケットルが酒臭い息を吐きながら立っていた。


「その金、アタシに預けな」


「え、全部!? ダメだよ!」


「バカ言え。新しいのを買うより、“今の相棒”を強くしたほうがいい」


ケットルはクレアの剣を指差す。


「補強して、調整して、馴染ませる。それだけで見違えるさ」


クレアは少し迷ってから、金貨を差し出した。


「……任せた」


ケットルはニヤリと笑い、素材屋へと消えていった。



その夜。


食卓には、いつもより少し豪華なレバー料理が並んでいた。


「……結局さ」


クレアが研磨された剣を見つめながら呟く。


「うちら、一気に最強にはなれないんだね」


「当然でしょ。……まあ、カジノならワンチャンあったけど」


「まだ言ってるの?」


「……でも、この杖……いい。前より、ちゃんと“くる”」


ミルが満足そうに杖を撫でる。


派手な伝説の武器じゃない。

けれど、自分たちに合った“今の武器”。


それが、少しだけ誇らしかった。


「よし!」


クレアが顔を上げる。


「また地道に稼ごう。300枚、目指してさ!」


袋は少し軽くなった。

でも――


五人の足取りは、ほんの少しだけ重く、そして強くなっていた。


リトル・リンク。今日もちょっとだけ成長中。

第30話をお読みいただき、ありがとうございました!

金貨30枚で最強になれるかと思いきや、伝説の武器は桁が違いましたね……。

でも、高級店で門前払い(?)を食らっても、自分たちの使い古した武器を「好き」と言えるあたり、彼女たちらしい成長が見えた気がします。

ケットルの職人技でリフレッシュされた「変な名前の武器」たち。

少しだけ手入れの行き届いた相棒と一緒に、リトル・リンクはまた明日から地道な依頼(とレバー代稼ぎ)に励むようです。

今後とも、彼女たちの「ちょっとずつ」な歩みを見守っていただけると嬉しいです!

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