表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱パーティ、今日もちょっとだけ成長中  作者: beck2026


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/72

第3話「報酬は、手元に残りません?」

命がけの「爆弾運び」を終え、ボロボロになりながらも報酬を手にした五人。

ようやく一息つける……そう思った矢先、パーティ一の自由人・カノンが報酬の袋を持って夜の街へと消えてしまいます。

追いかけた先は、熱気と欲望が渦巻く「賭場」。

最弱パーティの全財産を賭けた、カノンの大勝負が始まります。

「……で、報酬は?」

すすで顔を黒くしたクレアが、ぐいっと身を乗り出した。

爆発する袋を運びきり、髪の毛が少しチリチリになっているが、その目は期待に満ちている。

依頼主の男は、爆風を浴び続けたクレアの姿に引き気味になりながら、ずっしりと重い革袋を差し出した。

「約束通りだ。……その、災難だったな。ご苦労」

「やったぁぁ……!」

受け取った袋の重みに、クレアの顔がパッと輝く。

セインも「やれやれ」と肩の力を抜き、ミルはパチパチと小さく拍手。ケットルは「これで今夜は特上のエールが飲めるねぇ」と喉を鳴らした。

けれど、一人だけ。

カノンだけが、じっとその袋を油断のない目で見つめていた。

1. カノンの「悪い癖」

「……ねぇ、ちょっとその袋、貸して?」

「いいよ、はいっ」

何の疑いもなく渡すクレア。カノンは中身をチラリと覗くと、ニヤリと不敵に口元を上げた。

「うん、ちゃんと入ってる。……ちょっと用事を思い出だしたから、先に行ってて!」

「は? カノン、どこに――」

言い終わる前に、カノンは風のように走り出していた。

「ちょっ! カノン、待ちなさいよ!!」

嫌な予感しかしない。クレアの叫びは、夕暮れの街並みに虚しく響いた。

「……追いましょう」

セインが即断する。

「ええ、絶対ろくでもないこと考えてるわ!」

クレアを先頭に、五人はカノンの後を追った。

2. 熱気渦巻く「勝負所」

通りを抜け、人混みをかき分け、辿り着いた先。

そこは、派手な看板と、野太い歓声、そして独特の金属音が漏れ出す場所――賭場だった。

「やっぱりここか!」

クレアが勢いよく扉を開けると、中は熱気に満ちていた。

その中心で、カノンはすでに席に着き、チップに換えた硬貨を指先で軽快に弾いていた。

「何してるのよ、カノン!」

「見ての通り」

カノンは振り返りもせず、場に出されたカードを凝視している。

「増やすんだよ。さっきの『爆弾運び』の割に合わない分までね」

「やめて! 減ったらどうすんの!」

「落ち着きなって。今は……『流れ』が来てるんだから」

「その台詞、聞き飽きたわよ!」

クレアが詰め寄るが、ディーラーが静かに手を止めた。

「……お客さん、どうします? 続けるなら受けるが」

「続ける」

カノンは即答した。

「ほら、見ててよ。私の直感は、さっきの爆発を避けた時から冴え渡ってるんだから」

3. クレアの「勇気ある撤退」

カードが配られる。一瞬の静寂。

カノンの目が鋭く細まり、チップを一点に置いた。

「――ここだ」

……勝った。

一気に倍になったチップを前に、カノンは得意げに笑う。

「ほらね? 言ったでしょ」

「……すごい」

思わず本音が漏れるクレア。隣で見ていたセインも、これには驚きを隠せない。

「ですが、カノン。深追いは禁物です。今のうちに引きましょう」

「えー、もっといけるよ?」

カノンはチップを指で弄び、じっとテーブルを見つめる。

「あと一回……あと一回だけ勝てば、今までの借金が全部チャラになるかもしれない」

賭場の空気が重くなる。ミルの手が震え、ケットルが酒を飲む手も止まった。

「ダメ」

クレアが力強く言い切った。

「今ので終わり! 増えたんだから、それで十分じゃん。これ以上は絶対にダメ!」

カノンは少しだけ不満げに目を細めたが、やがてふっと息を吐いた。

「……じゃあ、リーダーのクレアが決めてよ」

「えっ、私!?」

「今やめて帰るか、もう一回賭けるか。……あんたに任せるわ」

視線がクレアに集まる。

今やめれば、確実にプラス。でも、もう一回勝てば……。

クレアの頭の中で、天秤が激しく揺れる。

けれど、彼女は煤だらけの拳をギュッと握りしめた。

「……やめる! 今日はもう、おしまい!」

4. 「一人じゃない」から

「了解。リーダーの指示なら、従わなきゃね」

カノンは意外にもあっさりと引き下がり、チップをまとめて席を立った。

ディーラーが「惜しいねぇ、お嬢さん」と肩をすくめるが、カノンは振り返らない。

賭場を出ると、夜の風が心地よく、火照った顔を冷やしてくれた。

「……よかったぁ。本当に心臓に悪いわよ、あんた」

「つまんないの。あと一回いけたのにさ」

カノンがぼそっと呟くと、クレアは笑って彼女の肩を叩いた。

「でも、減らなかった。それどころか、増えたじゃん! 大金星だよ!」

「ふん。まあ、あんたが止めたからね」

カノンは袋をケットルに預けると、空を見上げた。

「……ありがと、カノン」

「なにがさ」

「ちゃんと、私の言うこと聞いて戻ってきてくれて」

カノンは一瞬だけ黙り、ふいっと視線を逸らした。

「……当たり前でしょ。一人の稼ぎじゃないんだから。……それに、一人で負けるより、みんなで笑ってる方がマシだしね」

「そうだね!」

クレアはにやっと笑い、再び歩き出した。

爆発したり、賭けをしたり、相変わらず危なっかしい五人。

けれど、報酬はちゃんと手元にある。

そして、その絆も――昨日よりほんの少しだけ、重くなっていた。

最弱パーティ、今日もちょっとだけ成長中。

カノンの危うい勝負師魂を、クレアが「リーダー」として見事に制御した回でした。

「もっと稼げるかも」という欲に勝つのは、ある意味で魔物を倒すより難しいことかもしれません。

確実に利益を持ち帰った彼らが、次はこのお金を何に使うのか……。

少しずつチームらしくなってきた五人の明日にご注目ください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ