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最弱パーティ、今日もちょっとだけ成長中  作者: beck2026


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第29話 一攫千金の誘惑と、地道な一歩

少しずつだけど、確実に前に進んでいる。


そんな実感を、初めてちゃんと形で手に入れた日。


リトル・リンクにとって、これまでの「なんとなくできた仕事」とは違う、ひとつの節目になる依頼です。


危険はある。でも、準備もある。

無茶ではなく、「やれる理由」がある戦い。


――金貨30枚。

その重みが、ただの報酬で終わるのか、それとも意味を持つのか。


そんな一歩の話です。

1.掲示板の「特等席」


「……ねえ、見て。桁が一個多いよ」


ギルドの掲示板の前。人混みの端で、クレアがひときわ古びた依頼書を指差した。


端に寄せられるように貼られたそれは、周囲の「倉庫整理」や「薬草採取」とは明らかに違う空気をまとっている。

紙は少し黄ばんでいるのに、そこに書かれた数字だけが妙に生々しく浮き上がっていた。


【 依頼:雷鳴蝙蝠サンダーバットの討伐および素材回収 】

【 報酬:金貨30枚 】


「金貨30枚……」


クレアの視線が釘付けになる。


「これだけあれば、借金返して、新しい服買って……それから肉。肉を山ほど食べて……」


声がだんだん小さくなる代わりに、目は完全に「¥」の形になっていた。


「……欲望が顔に出すぎだよ」


カノンが呆れたように横から覗き込み、短剣の柄をコツコツと叩く。


「サンダーバット。速い、群れる、電撃飛ばす。三拍子揃った面倒な相手だね。並の冒険者じゃ、近づく前に黒焦げだ」


「でも……誰も受けてないよ?」


クレアが周囲を見回す。確かにその依頼だけ、不自然に残されていた。


「危険すぎるか、割に合わないか、その両方かだね」


「……あるいは、適切な手順が知られていないか、です」


セインが静かに言葉を重ねる。


否定ではない。分析だ。



2.「リトル・リンク」の勝機


「理論上、今の私たちなら対処可能です」


セインが眼鏡の位置をわずかに直し、淡々と組み立てる。


「カノンの索敵で先手を取る。接敵前に位置を把握すれば奇襲は成立しません」


「まあ、それくらいはやれるよ」


「その上で、ケットルの煙玉で視界と音を攪乱。超音波の精度を落とします」


「任せな。ちゃんと当てるさ」


「……ちゃんと、ね?」


「うるさいね」


「混乱した個体をミルが削る。撃ち漏らしをクレアが処理。私は後方から全体を安定させます」


セインは一拍置く。


「……成立しています」


「……私、やる」


ミルが小さく頷く。


「……お肉、食べたい」


「そこはぶれないんだね」


カノンが笑う。


クレアが拳を握る。


「よし、決まり!」


息を吸い込んで、


「リトル・リンク、初の高額依頼! ドカンと稼ぎにいこう!」


不安もある。けれど、それ以上に――前に進む理由があった。



3.暗闇の電撃戦


『鳴神の洞窟』の中は、空気そのものが帯電していた。


髪がわずかに逆立ち、肌に細かな刺激が走る。


「……来るよ。上に十二、右に六。まだ増える」


「多いな……」


「ここで止めるよ。ケットル」


「了解だ」


パチンコが静かに構えられる。


放たれた煙玉が天井に当たり、弾けた。


シュァァァッ――


白煙が一気に広がり、洞窟内の音が歪む。


キィィィ、と蝙蝠の超音波が乱れた。


「……今」


「……血よ、形を持って」


「ブラッドスパイク」


深紅の杭が次々と空を裂き、敵を撃ち落とす。


「いいね、そのまま削って!」


カノンが敵の流れを誘導する。


「左に三!」


「任せろ!」


クレアが踏み込み、正確に叩き落とす。


だが――


バチッ!!


閃光。衝撃。


「っ……!」


「数が多い、崩れます!」


「――スピリットリカバリー」


セインの光が広がり、痺れが引いていく。


「まだ押せる!」


「よし、押し切る!」


連携が崩れない。


ミルが削り、カノンが導き、ケットルが乱し、セインが支える。


そして――


「これで終わりだ!」


最後の一体が叩き落とされ、静寂が戻る。



4.報酬と、ささやかな贅沢


ギルドのカウンター。


山積みの素材を確認し終えた受付が、静かに頷く。


「……問題ありません。見事なお仕事です」


差し出される袋。


「報酬、金貨30枚になります」


クレアが受け取る。


ずしり、とした重み。


「……重い」


一拍。


「やったぁぁぁ!!」


カノンとハイタッチ。


ミルは安堵し、セインは静かに微笑む。


ケットルはちらりと見て、


「無駄遣いすんじゃないよ」


とだけ言った。


その夜。


テーブルには、いつもより豪華な料理。


焼きたての肉。湯気。香り。


「……これ、全部?」


「今日はいい日だからな!」


「少しは残してますから安心してください」


「抜かりないね」


杯が持ち上がる。


「リトル・リンクに!」


「「「「乾杯!!」」」」


笑って、食べて、少しだけ残す。


大きな冒険じゃない。


でも――


自分たちで掴んだ金貨30枚は、確かな重みを持っていた。


リトル・リンク。


今日も、ほんの少しだけ成長中

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


今回はリトル・リンクにとって初めての「しっかり稼いだ回」でした。


強敵を倒すことも大事ですが、

この作品では「ちゃんと食べられる」「少し余裕ができる」

そんな現実的な成長も大事にしています。


だからこそ、最後の食事シーンはただのご褒美ではなく、

「今日を越えた証」として描いています。


まだまだ未完成なパーティですが、

一つずつ積み重ねていくことで、確実に変わっていくはずです。


リトル・リンク、次はどこまで行けるのか。


よければ、これからも見守っていただけると嬉しいです。

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