表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱パーティ、今日もちょっとだけ成長中  作者: beck2026


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/103

第26話 地獄の晩餐会と、消えた味覚

冒険者にとって、食事はただの休息ではありません。


体力を回復し、次の戦いに備えるための大切な時間です。


ですが――

素材の扱いを間違えれば、それは力ではなく試練にもなります。


今回は、そんな少しだけ危険な「食事」の話です。

「……よし、今夜はアタシが腕を振るってやるよ」


宿屋の共同キッチン。

ケットルは上機嫌で大鍋をかき混ぜていた。


ぐつぐつと重たい音。

鍋の中から立ち上るのは、明らかに普通ではない赤い蒸気。


昨日収穫したフレイム・ペッパー。弾に使う分を差し引いても、まだ山のように余っている。


「本当!? ケットルの料理、元気出るから好きなんだよね!」


クレアが身を乗り出す。


「……ねえ。その鍋、赤い蒸気出てるんだけど」


カノンが一歩下がる。


「食えばわかるさ。ドワーフ流の激辛シチューだよ」



1. 運命の一口


テーブルに並ぶのは、深紅のシチュー。


表面で泡立つそれは、まるで小さな火山のようだった。

近づくだけで、鼻の奥がツンと痛む。


「いただきまーす!」


クレアが迷いなく口に運ぶ。


「…………」


静寂。


「……おいし……い……?」


(……あれ?)


次の瞬間。


喉の奥から、焼けるような熱がせり上がった。


「……あづいぃぃぃーーー!!」


ガタンッ!!


椅子を蹴り飛ばし、窓へ一直線。


「落ち着きなさい」


セインが即座に拘束する。


「……ミル、氷を」


「……は、はいっ!」


氷が口に入る。


――ジュッ。


一瞬で蒸発。


「効いてない! 全然効いてないよこれ!」



2. 冷静な崩壊


「……確認しておきましょう」


セインがスプーンを取る。


ほんの一口。


「…………」


眼鏡が曇る。


「……結論。これは食品ではありません」


一拍。


「……内臓への直接攻撃です」


さらに一拍。


「……カノン、絶対に食べてはいけま――」


バタッ。


「セインーー!?」



3. 理解不能な文化


「ちょっとケットル! これ毒でしょ!?」


カノンが叫ぶ。


「失礼なねぇ。ドワーフの里じゃ、風邪薬代わりに使う代物さ」


ケットルは平然と食べ続ける。


完食。


エールを一口。


「ほら、遠慮するな。身体が温まるよ」


「温まるどころか燃えるでしょ!!」



4. 翌朝


宿の食堂。


四人、真っ白に燃え尽きていた。


「……おはよ……」


クレアの声は枯れている。


「……味、しない……。何食べても……熱い……」


カノンが遠い目をする。


「……胃が……熱い……」


ミルがふらつく。


セインは無言で胃薬を飲み、手帳に書き込む。


【記録:フレイム・ペッパーの過剰摂取は極めて危険。調理使用は禁止】



「あはは、いい顔してるじゃないか。少しは効いたろう?」


一人だけ元気なケットル。


四人は無言で視線を交わす。


(……もう二度と食べない)


(……絶対に)


(……弾だけ)


(……それ以外は禁止)



その日、パーティ内で一つのルールが決まった。


フレイム・ペッパーは――


武器としてのみ使用すること。



最弱パーティ、今日もちょっとだけ成長中。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


今回はフレイム・ペッパーを巡る、少し騒がしい日常回でした。


強力な素材ほど扱いが難しく、

使い方ひとつで武器にも負担にもなります。


今回の経験で、

彼女たちは「使い方」の大切さを身をもって学びました。


戦い方だけでなく、

生き残るための知識もまた、少しずつ積み重なっています。


また少しだけ、成長しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ