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最弱パーティ、今日もちょっとだけ成長中  作者: beck2026


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第23話 刻まれた名は、覚悟の証(ということにしたい)

武器には、名前がつきます。


格好いいものもあれば、意味深なものもあり、ときには少し恥ずかしいものもあります。


けれど、その名前には必ず理由があります。


使う者の癖。戦い方。そして、今の姿。


今回は、少しだけ恥ずかしくて、でもちゃんと自分たちらしい名前の話です。

「……あ、あの。本当に書かなきゃダメかな?」


ギルドの受付カウンター。


クレアは真っさらな装備変更届を前に、震える手でペンを握っていた。


ギルドでは、保険やランク査定のために「メイン武器の名称」を登録する決まりがある。


「はい。銘がある場合は必ずご記入ください」


受付の女性が、営業用の柔らかい笑顔で促す。


クレアは隣のセインとカノンを見る。


二人とも、綺麗に視線を逸らした。


逃げ場はない。


クレアは覚悟を決めて書いた。


武器名:『とりあえず突っ込む用の剣』


「……ぷっ」


受付の女性の頬がわずかに揺れた。


「……分かりやすいお名前ですね。では次の方」



カノンが面倒くさそうにペンを取る。


武器名:『借金回避の双牙』


「……切実さが伝わってきますね」


「ほっといて」



ミルは震えながら書いた。


武器名:『もう壊さない(予定)の杖』


「……(予定)に慎重さを感じます」


「……うぅ……」



最後にセイン。


淀みなく書く。


武器名:『静かになさい(物理)の槌』


「…………」


受付の女性は一瞬止まり、


静かに頷いた。


「……非常に合理的なお名前ですね。登録完了です」


わずかに笑みが漏れる。


背後から、忍びきれない笑い声。


五人は何も言わず、その場を後にした。



「……もう、ケットルのバカぁー!」


街の外。


クレアが顔を真っ赤にして叫ぶ。


「いいじゃない。名前はともかく、性能は本物なんだから」


カノンが双剣を回す。



その時。


茂みが揺れた。


現れたのは――ワイルドボア。


「来た……! 試すよ!」


クレアが剣を抜く。


頭に浮かぶ。


『とりあえず突っ込む用の剣』


「……だったら、やるしかないでしょ!」


迷いを捨てる。


一直線に踏み込む。


無駄のない軌道。


剣が吸い込まれる。


――ザシュッ!!


一撃で沈む。



「……すごい」


クレアが息を吐く。


カノンが動く。


流れるような回避と斬撃。


「……なんか、ツキいいね」



「……私も」


ミルが杖を構える。


魔力は暴れない。


整っている。


『壊さない(予定)』


その言葉が、確かに働いていた。


一点だけを撃ち抜く。



最後の一匹。


セインが前に出る。


「静かに」


振り下ろす。


――ドゴォン!!


そして、沈黙。



「……名前は最悪。でも、最高だね」


クレアが剣を見る。


「性能に思想が反映されていますね」


セインが頷く。


「名前は聞かれたらごまかそう」


カノンが言う。


全員、即座に頷いた。



不器用な名前。


不格好な今。


でも――


それは間違いなく、自分たちの現在だった。


「よし! もっと強くなるよ!」


夕暮れの街道に笑い声が響く。


恥ずかしさよりも、


少しだけ自信が勝った一日。


最弱パーティ、今日もちょっとだけ成長中。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


今回は武器の「名前」に焦点を当てた回でした。


見た目や響きだけでなく、その人の戦い方や性格をそのまま表した名前。


最初は恥ずかしくても、使っていくうちにしっくりくる。


そんな変化も、成長の一つかもしれません。


自分の弱さや癖を受け入れること。


それが、次の一歩に繋がっていきます。


また少しだけ、成長しています。

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