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最弱パーティ、今日もちょっとだけ成長中  作者: beck2026


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第20話 「役割交換は、だいたいうまくいかない」

人には、それぞれ向いている場所があります。


前に出る人。

支える人。

見守る人。


それは経験や能力だけで決まるものではなく、

積み重ねてきたものの中で、少しずつ形になっていきます。


けれど、ときにはその場所を離れてみることで、

見えてくるものもあります。


今回は、

「役割」と「一歩」の話です。

「……ねえ。たまにはさ、役割を入れ替えてみない?」


朝、いつもの宿屋。


焼きたてのパンを頬張りながら、クレアが唐突に言った。


「嫌。絶対に嫌」


カノンが即答する。迷いは一切ない。


「なんでさ! 新しい発見があるかもしれないじゃん!」


「ないね。あるのは事故だけだよ」


「……具体的には、どのような形を考えているのですか?」


セインが静かに問いかける。


「えーとね……私が後ろで応援して、セインが前で戦う!」


「却下です。非効率すぎます」


「早い! 却下が早すぎるよ!」


「じゃあ、カノンが前!」


「やらない。危ないし」


「盗賊でしょ! 前でしょ!」


押し問答の中、ミルが小さく手を挙げた。


「……私、前……やってみたい」



全員の視線がミルに集まる。


「え、ミルが前?」


クレアが目を丸くする。


「……ちょっとだけ、怖くない自分になりたい」


セインが一瞬考え、頷いた。


「……軽い見回り程度なら、試す価値はありますね」


「本当!? よし、今日はミルが主役!」



依頼は、森の見回り。


いつもの隊形とは逆。


「……なんか、落ち着かないね」


後ろ寄りを歩くクレアがそわそわする。


「でしょ。前に突っ込む人が後ろにいると、逆に怖いんだよ」


カノンが肩をすくめる。


「……大丈夫。……大丈夫」


ミルは自分に言い聞かせながら進む。



――ガサッ!


音に、ミルが跳ねる。


飛び出したのはウサギ型の魔物。


「……やる。……私がやる」


杖を構える。呼吸が浅い。


「落ち着いて。小さく、短くです」


セインの声。


「……うん。……いっけぇ!」


ドンッ!


衝撃が命中し、魔物は転がって逃げた。


「……できた」


ミルの顔が明るくなる。


その瞬間。


ガサガサッ!!


「横から来るよ!」


もう一匹。


「あ――っ!」


間に合わない。


その時――


「危ないってば!」


クレアが飛び込んでいた。


剣で弾き飛ばす。


「……あ。……ごめん」


ミルが俯く。


「いいって! 体が勝手に動いただけ!」



「交代。やっぱり前はボクの仕事だね」


カノンが前に出る。


一瞬で周囲を制圧。


「……やっぱり、前は怖いかも」


「でも一匹やれたじゃん。上出来だよ」


カノンが軽く頭を叩く。



帰り道。


隊形は元通り。


「……やっぱここが一番落ち着く!」


クレアが笑う。


「適材適所、ですね」


セインが頷く。


「でも、ミルの魔法は確実に良くなってるよ」


ケットルが笑う。


「じゃあさ、次はカノンが回復役!」


「やらない。死人が出る」


「見てみたかったのにー!」


ミルが少し笑う。



できたこと。


できなかったこと。


両方を抱えて、


五人はまた前に進む。


最弱パーティ、今日もちょっとだけ成長中。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


今回は役割を入れ替えることで、それぞれの立ち位置を改めて確認する回になりました。


前に出る怖さ。支える難しさ。そして、自分に合った場所の安心感。


どれも実際に体験してみないと、分からないことばかりです。


ミルにとっては大きな一歩であり、クレアにとっては「考える前に動く自分」を再確認する時間でもありました。


できなかったこともありますが、できたことも確かに残っています。


また少しだけ、成長しています。

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