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最弱パーティ、今日もちょっとだけ成長中  作者: beck2026


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第2話「初仕事、だいたい失敗します」

結成したばかりの「最弱パーティ」。

とりあえず食べていくために、彼らが選んだのはギルドで最も簡単そうな「荷物運び」の依頼でした。

「危険なし」という依頼主の言葉を信じて出発した五人ですが、このパーティに平穏な道中など存在するはずもなく……。

お調子者のリーダー・クレアと、前途多難な仲間たちの初仕事が始まります。

1. 「危険なし」という名のフラグ

街の外れ、夕暮れ前のギルド前。

五人は、依頼主である中年の男と向き合っていた。

「えーと、君たちが今回の……」

男は手元の書類と、目の前の五人を交互に見比べ、少しだけ不安そうに眉をひそめた。

「はい! 荷物運びのスペシャリストです!」

クレアがビシッと胸を張る。なぜか無駄に誇らしげだ。

後ろでカノンが「どの口が言ってるんだか」と小さく吹き出した。

「大丈夫なの? あのリーダー」

「今は黙ってて。話がややこしくなるから」

セインが小声でカノンを制する。

男はコホンと咳払いを一つ。

「依頼は単純だ。この荷物を隣町まで運ぶだけ。危険はない。」

「危険なし……!」

クレアはその言葉を噛みしめるように頷いた。

「いい仕事ですね。お任せください!」

「そう思うなら助かるよ。くれぐれも、落とすなよ」

その一言に、後ろの四人の視線が一斉に泳いだ。

このパーティに「落とすな」は、ある意味で最大の難関なのだ。

2. 役割分担(という名の押し付け)

荷物は木箱が三つ。見た目以上にずっしりと重い。

「よし、ここは戦士の私が見本を……ぬんっ!」

クレアが気合いを入れて持ち上げようとするが、箱はピクリとも動かない。

「……あれ? 地面と合体してる?」

「そりゃ無理でしょ。あんた、腕力より声の方が大きいんだから」

カノンが肩をすくめると、ドワーフの姐御・ケットルがどっこいしょと前に出た。

「アタシがやるよ。これくらいなら、朝飯前だ」

ケットルが軽々と箱を二つ持ち上げ、セインが残りの一つを安定感のある足取りで抱える。

……必然的に、クレアの手は空いた。

「……あれ? 私、やることなくない?」

「応援係。」

カノンが即答する。

「戦士なんだけど!? 一応前衛なんだけど!?」

「今、戦う相手いないでしょ。あ、じゃあカノンはこれ持って」

セインに促され、カノンは足元にあった小さな袋を拾い上げた。

中でカチャカチャと不気味な音がする。

「……ねえ、これ中身なに?」

「さぁ? でも、嫌な予感しかしないね」

3. 「カチャカチャ」の正体

道は平坦、天気は快晴。

最初は、驚くほど順調だった。

「……平和だねぇ」

クレアがのんきに言う。

「ちょっと、怖いこと言わないでよ」

カノンが即座に返す。

「だって『危険なし』って言ってたし」

「それが世界で一番信用できない言葉なの!」

その時だった。

「……あの」

ミルが小さく、震える声を上げた。

「なんか……音が……する……」

全員がピタリと足を止める。

カチャカチャ。カチャ。

音の正体は、カノンが持っている小さな袋だった。

「開けてみてよ」

「やだ」

「なんで!?」

「嫌な予感しかしないから!!」

押し問答の末、カノンが恐る恐る袋の紐を解いた。

中から飛び出したのは、時計の部品のような、小さな機械。

それが地面に落ちた瞬間、**「カチッ」**と嫌な音が響いた。

次の瞬間――バンッ!!

小さな爆発とともに、派手な土煙が上がる。

「きゃあああ!?」

「ひぃぃっ!」

クレアとミルが抱き合って悲鳴を上げる。煙が晴れると、そこにはシュールな小さな穴が開いていた。

4. クレアの「なんとなく」な覚悟

「……危険、なし?」

クレアが呆然と呟く。

「嘘つきだねぇ。立派な罠じゃないか」

ケットルが呆れたように鼻を鳴らした。

カノンが袋の中を覗き込む。そこには、まだ十数個の「爆弾」が詰まっていた。

「……これ、全部こうなるやつ?」

「やめてよ……」

その時、ミルの肩がガタガタと震え始めた。

「だ、大丈夫……かな……また爆発する……?」

パニック寸前のミルに、セインが即座に両手を添える。

「ミル、落ち着いて。私を見て。これは小さい。威力も低い。大丈夫、私がついているから」

ゆっくりと言い聞かせるセインの魔法のような声で、ミルの呼吸が少しずつ整っていく。

「……よし」

クレアが、珍しくリーダーらしい顔をして一歩前に出た。

「方針決定! その袋、私が持つ!」

「は? なんで?」

カノンが目を丸くする。

「私なら、爆発してもなんとなく大丈夫そうだから!」

「根拠がバカすぎる……」

「でも、他に案ある? 私、避けるのだけは得意だし!」

「……わかりました。お任せします」

セインが承諾し、カノンは「爆発しても知らないからね」と言いつつ袋を渡した。

5. 0.1秒の成長

「よし、いくよ……」

クレアが袋を持ち直す。

その瞬間、カチャ。

「離れて!!」

セインの指示を待つまでもなく、四人は凄まじい速度で距離を取った。

バンッ!

「ぎゃあああ!?」

またもや小さな爆発。クレアの髪が少しだけチリチリと焦げる。

「……生きてる?」

カノンが遠くから声をかける。

「ちょっとだけ熱かったけど、平気!」

クレアは煤だらけの顔でニカッと笑った。

「でもさ、今。さっきより少しだけ、早く避けられた気がする!」

セインが眼鏡を直しながら頷く。

「……確かに。反応速度が0.1秒ほど上がっていましたね」

「でしょ!? ほら、進もう! 次はもっとうまく避けてみせるから!」

五人はまた歩き出した。

「危険なし」のはずの仕事は、やっぱり今回もトラブルだらけ。

それでも。

爆発を避けながら走るクレアの背中は、昨日よりほんの少しだけ、逞しく見えた気がした。

最弱パーティ、今日もちょっとだけ成長中。

初仕事から「爆発物」を運ばされるという、このパーティらしい不運っぷりでした。

しかし、ただでは転ばないのがクレアのいいところ(?)。

物理的なダメージを受けながらも、着実に「回避スキル」を磨いています。

果たして彼らは、無事に隣町まで荷物を届けられるのでしょうか。

次回、第3話もお楽しみに!

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