表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱パーティ、今日もちょっとだけ成長中  作者: beck2026


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/50

第19話 「お金は増えないけど、出費は増える」

冒険者の悩みは、命の危険だけではありません。


むしろ日常の中には、

もっと現実的で、逃げ場のない問題があります。


お金が減ること。

食べること。

生活を続けること。


どれも当たり前で、

でも、簡単ではないものばかりです。


今回は、

そんな「現実と向き合う」話です。


「……ねえ、減ってる。絶対におかしい」


宿の隅で、クレアが深刻な顔で財布を覗き込んでいた。


「何がさ。あんたの髪の毛?」


カノンが野次を飛ばす。


「お金だよ! 減り方が早すぎるんだってば!」


「当たり前でしょ。使えばなくなる、それが世界の理だよ」


「そんなに使ってないもん!」


「内訳を言ってみなさい」


セインが静かに口を挟む。


「えーと、宿代と、ご飯代……あと、ちょっとした出費」


「その『ちょっと』が一番怪しいんだよねぇ」


カノンがミルに視線を向ける。


ミルは小さく肩をすくめた。


「……パン、すごく美味しかった。焼きたてで……」


「ミル、三個食べてたよね」


「……二個半、です」


「誤差じゃないでしょ!」


「まあ、食べるのは大事だよ。元気がなきゃ荷物も運べないしねぇ」


ケットルが笑ってフォローするが、クレアは頭を抱えた。


「このままだと、また宿代待ってもらうことになるよ……!」



「……節約しましょう」


セインが眼鏡を押し上げ、はっきりと言った。


「まず外食は禁止。自炊に切り替えます」


「えーっ!」


「次に嗜好品。……ケットルさん」


「……アタシかい?」


酒瓶を抱えたケットルが目を細める。


「酒は削れないねぇ。アタシの活力なんだからさ」


「……いえ、削ります。一日の量を半分に」


「えーっ!」


「ミルさんは必要経費として維持します」


「……よかった」


「カノンさんのギャンブルは」


「論外でしょ」


「はい。近づかないようにしてください」


「……厳しいなぁ、もう」



「だったらさ! 節約するより、パパッと稼げばいいんじゃない?」


クレアが顔を輝かせた。


嫌な予感しかしない。


「どうやってさ。また危険な依頼でも受けるの?」


「違うよ! 商売! 安く買って高く売るの!」


「その自信、どこから来るのさ……」


そのまま市場へ。



「見て! これ安い!」


「……ただの木の実じゃない」


「一個一ペルだよ? これを『魔力が出る実』って売れば――」


「詐欺で捕まるから却下」



「じゃあこれ! キラキラしてる石!」


「……河原の石だね」


「でもミルが見てるよ?」


「……ちょっと綺麗」


「ダメ。売れない」



一周した頃には、クレアは肩を落としていた。


「……やめよう。向いてない」


「知ってたよ」



帰り道。


夕焼けの中、五人はのんびり歩く。


「……結局、普通に働くしかないんだね」


「それが一番確実です」


セインが頷く。


「……うん。明日もやる」


ミルが小さく拳を握る。


「酒代のために、アタシも頑張るかねぇ」


ケットルが笑う。


「夢は一瞬だったけど、悪くない散歩だったよ」


カノンが肩をすくめる。


クレアは財布を握る。


「よし。無駄遣いはしない!」



その夜。


「……あ」


クレアが固まる。


「どうしたの」


「ちょっとした出費……思い出した……」


ポケットから取り出されたのは――キラキラの石。


「買ってたの!?」


「だって、なんとなく欲しくて!」


「一番ダメなやつ!!」



ミルが覗き込む。


「……やっぱり、ちょっと綺麗」


ケットルが笑う。


「まあいいさ。その分、明日働けばいい」


セインがため息をついた。


「……やはり財布は私が管理した方が良さそうですね」


「はい……」



テーブルの上の小さな石。


ロウソクの光を受けて、ほんの少しだけ輝く。


無駄遣いかもしれない。


けれど――


明日を少しだけ楽しみにする理由には、なっていた。


最弱パーティ、今日もちょっとだけ成長中。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


今回は少し軽めの回ですが、

「お金」という避けて通れない問題を描いてみました。


どれだけ強くなっても、

どれだけ経験を積んでも、

生活そのものは続いていきます。


節約しようとして失敗したり、

つい無駄遣いしてしまったり。


そういう小さなことも含めて、

このパーティの日常です。


大きな成長ではありませんが、

こうした積み重ねが、

少しずつ彼女たちを支えていきます。


また少しだけ、成長しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ