第17話 「それでも一緒にいる理由」
強いパーティには、理由があります。
同じ目的。同じ思想。同じ信念。
けれど、必ずしもそれが揃っているとは限りません。
性格も、過去も、価値観もバラバラ。
それでも一緒にいる理由は、案外、はっきりしないものかもしれません。
今回は、「なぜ一緒にいるのか」を考える話です。
夜。いつもの安宿の一室。
窓の外から聞こえる街の喧騒も、今夜はどこか遠くに感じられた。
五人を包む空気は、昨日までより少しだけ密度を増している。
「……結局さ」
クレアがテーブルに頬杖をつきながら、ぽつりと言った。
「うちら、なんで一緒にいるんだろうね?」
「何、急に。まとめに入っちゃって」
カノンがニヤニヤしながら、手元のナイフを弄ぶ。
「いや、なんとなく。だって、性格も過去もバラバラじゃん、私たち」
「それは否定しないね。まとまりなんて、欠片もないよ」
カノンが即答する。
「いいえ。まとまりはありますよ」
セインが眼鏡を指で押し上げ、静かに言った。
「最低限は、ですが」
「最低限ってなにさ」
「……お互いに、離れないことです」
⸻
「……それが一番、難しいんですから」
セインの言葉に、部屋がふっと静まる。
「……いなくならない。……消えない」
ミルが杖を抱きしめるように呟いた。
「それだけで……十分な気がする」
「……そうだねぇ。だいたいの奴は、途中でどこかへ行っちまうもんさ」
ケットルが酒袋を揺らし、少しだけ遠い目で笑う。
誰も否定しない。
その沈黙は、何かを失ってきた者にしか分からない、静かな肯定だった。
⸻
クレアは指先でテーブルをトントンと叩き、顔を上げる。
「……でもさ。今はいないよね、欠けてる人」
一人一人の顔を見る。
カノン、セイン、ミル、ケットル。
「全員、ここにいる」
「……そうだね。珍しく、欠席者なしだ」
カノンが目を細める。
「ええ」
セインが頷き、ミルも小さく笑う。
「……全部は戻らないけど。……ここは、ある」
「壊れてないねぇ、まだ」
ケットルがグラスを置いた。
クレアは身を乗り出す。
「じゃあさ! 理由なんて、それで良くない?」
「何が?」
「一緒にいる理由! なんとなく、でも。減ってないから、でも。今ここにあるから、でも!」
カノンが肩をすくめる。
「……相変わらず、雑だね」
「いいじゃん。どうせ、理屈じゃないんだから!」
⸻
「理由は、後からついてくるものです」
セインが静かに言う。
「今は、それで十分でしょう」
「……うん」
「異議なしだねぇ」
クレアは満足げに頷いた。
「よし、決まり! とりあえず、明日もこの五人で続けること!」
「結論がシンプルすぎて笑っちゃうけど、まあ、うちららしいか」
カノンがため息混じりに笑う。
外では夜風が吹く。
明日もまた、面倒な依頼が待っているだろう。
理由は曖昧。未来も不安定。
けれど今夜、彼女たちは確かに感じていた。
自分たちの足元が、昨日より少しだけしっかりしていることを。
「……明日も仕事だね」
「ええ。たぶん、また面倒なことになりますよ」
「……やだなぁ」
「でもやるだろ? アタシたちがついてるんだからさ」
「うん。なんとかなる!」
「それが一番信用できないんだってば!」
笑い声が、部屋に広がる。
変わらないようで、確かに何かが変わった夜。
最弱パーティ、今日もちょっとだけ成長中
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今回は「パーティとは何か」を、少しだけ言葉にしてみた回でした。
共通点があるから一緒にいるのではなく、一緒にいるうちに、少しずつ形になっていく。
そんな関係もあるのだと思います。
離れないこと。欠けないこと。それだけでも、十分に難しい。
だからこそ、今この瞬間に揃っていること自体が価値になる。
そんな段階に、ようやくたどり着きました。
また少しだけ、成長しています。




