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最弱パーティ、今日もちょっとだけ成長中  作者: beck2026


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第13話 「増えない報酬と、増える疑い」

今回の相手は、魔物でも怪異でもありません。


人間です。


森の中では「見えないもの」に苦しめられ、街に戻れば「見えているはずのもの」を奪われる。


どちらも同じくらい厄介で、どちらも油断した瞬間に足元をすくわれる相手です。


力ではどうにもならない相手に、彼女たちはどう向き合うのか。


今回は、少しだけ“戦い方”が変わる話です。

…ねえ。なんかこれ、**『軽い』**気がしない?」


街の広場。冒険終わりの、報酬確認の時間だ。


リーダーのクレア(人間)が、期待と不安が入り混じった顔で革袋を持ち上げた。


「おいおい、縁起でもないこと言わないでよ」


カノン(魔族)が、面白がるようにニヤニヤしながら覗き込む。


「ボクの直感だと、今回の苦労に見合うだけの“重み”はあるはずなんだけどね?」


「確認しましょう。私が最後に数えた時は、確かだったはずです」


セイン(ハーフエルフ)が丁寧な手つきで袋の紐を解いた。


中身を広場に広げた瞬間、全員の動きが止まる。


「……あれ?」


クレアが首を傾げた。


「どうしました、クレア」


「……少ない。っていうか、明らかに足りない!」


しんと静まり返る五人。


「はぁ!?」


カノンがひったくるように袋を奪い、逆さにして振る。


「……マジだ。これ、提示された額の七割くらいしかないよ。笑えないギャンブルになっちゃったね」


笑ってはいるが、その声にはわずかな鋭さが混じっていた。


「ちょっと待って! ちゃんと持ってたよね!? 途中で魔物に盗られたりしてないわよね!?」


慌てるクレアに、セインが静かに首を振る。


「あり得ません。森を抜けたあとも、私が三回、カノンが二回確認しています。消失の影響も、スリの形跡もありません」


「じゃあ、なんでよ!?」


その叫びの横で、ケットル(ドワーフ)が酒瓶を軽く揺らしながら鼻を鳴らした。


「……ありゃあ、あの商人の“指先”だねぇ。最初から抜いてたか、渡す瞬間にやったか。ドワーフの細工でもなきゃ気づけない手際さ」


「そんなことある!? 私たち、あんなに一生懸命守ったのに!」


「あるんだよ、クレア」


カノンが肩をすくめる。


「相手は海千山千の商人。ボクらみたいな『最弱』って言われてるパーティなら、少しくらい抜いても気づかないし、気づいても文句は言えないって舐められたのさ」


「……でも、あのおじさん。最後に『ありがとう』って、笑ってくれた……」


ミル(ヴァンパイア)が、小さく震える声で呟く。


「その笑顔が一番高い授業料だったってわけ。ムカつくねぇ」


カノンが皮肉っぽく吐き捨てた。


クレアがギリッと奥歯を噛み締める。


「……決めた。確認しに行く!」


「いいねぇ。暴動? 殴り込み? ボク、そういうの嫌いじゃないよ」


「カノン、楽しむんじゃありません」


セインがすぐに釘を刺す。


「感情的に怒鳴り込んでも『証拠は?』で終わりです。最悪、衛兵を呼ばれてこちらが不利になります」


「う……」


図星を突かれ、クレアが言葉に詰まる。


「……じゃあ、どうすればいいのよ。泣き寝入り?」


カノンが、細く目を細めて指を一本立てた。


「いいや。クレアならこう言うと思ってたよ」


「……もう一回、同じことをさせるの」


「は?」


「もう一度、あの商人の護衛依頼を受けるのよ」


クレアが、今度は迷いなく言い切った。


「今度はただの護衛じゃない。**『絶対に見逃さない目』**を持って受けるの。ズルをするその瞬間を、現行犯で押さえる!」


「なるほど、現行犯か。ボクの“盗賊の勘”の使い所だね」


カノンがニヤリと笑う。


「合理的ですね。二度目なら相手も油断するでしょう。“前回はバレなかった”と考えるはずです」


セインも、静かに頷いた。


「ハハッ、二度目の報酬に加えて、酒代もきっちり出してもらおうじゃないかねぇ」


ケットルが愉快そうに笑う。


「……やる。今度は、ミルも……ちゃんと見てる」


ミルも、小さく、けれど確かな声で頷いた。


クレアは深く息を吸い、広場の先の商館を見据える。


「今度は一枚だって減らさせない。お金も、私たちの信用も!」


「……どっちも守るのが一番難しいんだけどね。ま、付き合うよ」


カノンが軽く肩を叩き、五人は歩き出す。


向かう先は、あの強欲商人。


守るだけじゃない。見抜き、奪い返す。


最弱パーティ、今日もちょっとだけ、知恵がついてきた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


今回は、戦闘ではなく「人との駆け引き」が中心の回でした。


森での経験を経て、ただ守るだけでは足りないと気づいた彼女たちが、一歩踏み込んで「見抜く側」に回ろうとしています。


相手は魔物よりも厄介な存在です。嘘をつき、笑顔で奪い、しかも証拠がなければ何もできない。


それでも、やられっぱなしで終わるつもりはありません。


次はもう一度、同じ依頼へ。


今度は守るためではなく、見抜くために。


また少しだけ、成長します。

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