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最弱パーティ、今日もちょっとだけ成長中  作者: beck2026


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第11話 「一人、消えかける」

いつもお読みいただき、ありがとうございます。


深い森の闇の中、響き続ける「一、二」という単調なカウント。

しかし、一瞬の「隙」が生まれたとき、パーティに最大の危機が訪れます。


タイトルの通り、静かに消えかけていくミルの存在。

絶体絶命の状況で、仲間たちは彼女を引き戻すことができるのか。


少しハラハラする展開ですが、彼らの絆に注目してお読みください!


1. 崩れたリズム

いち」「」「いち」――。

単調なカウントだけが、重苦しい空気を切り裂いていく。

森の奥へ進むほど、闇は深く、湿度を増していた。見えない「何か」が、すぐそばまで来ている。

「……来るよ」

カノンの呟きと同時に、足元がぐにゃりと歪んだ。

視界が一瞬だけ激しくぶれ、五人の意識が揺らぐ。

「……いち……!」

クレアが必死に声を出す。

カノンが続く。

いち

セインが刻む。

「…………」

音が、止まった。

「ミル……?」

クレアが弾かれたように振り返る。

そこにいたはずの少女の輪郭は、陽炎のようにゆらゆらと透け、向こう側の景色が不気味に透けて見えていた。

2. 「境界線」に立つミル

「……え、嘘でしょ……」

ミルの手が震えている。けれど、その手も半分ほどが霧のように消えかかっていた。

「……わた、し……やだ……消え、ちゃう……っ」

「ミル!」

クレアが駆け寄り、その肩を掴もうとする。

けれど、クレアの手は手応えもなく、ミルの身体を虚しく通り抜けた。

「触れない……! セイン、どうにかして!」

「落ち着いてください! まだ完全に向こう側へ行ったわけではありません!」

セインの鋭い声が飛ぶ。

カノンが周囲を警戒しながら吐き捨てた。

「さっきの揺れだ……。あれで意識が逸れた瞬間に、**『隙』**を突かれたんだよ」

「……数が、止まったねぇ」

ケットルが苦渋に満ちた声を出す。

一瞬の沈黙。そのわずかな隙間に、ミルという存在が飲み込まれようとしていた。

3. 存在を繋ぎ止める「言葉」

「戻す方法は、あるんでしょ!?」

クレアの悲痛な叫びに、セインは冷静に、けれど力強く答えた。

「逆のことをやるんです。**『存在を固定』**します! 名前を呼び、意識をこちら側へ引き戻して!」

「ミル! ここにいて! 私と一緒に帰るんでしょ!」

クレアが全力で叫ぶ。

「ミル、聞きなよ。あんたを置いてったら、誰が私に皮肉を言うのさ」

カノンが必死に声を張る。

「戻ってきな。街に帰ったら、とっておきのエールを一口飲ませてやるからねぇ!」

ケットルの姐御肌な激励が響く。

「……クレア……カノン……ケットルさん……」

ミルの瞳が、わずかに焦点を結び始めた。

「ミル、私の声を聞いてください。呼吸を整えて、こちらを見るんです」

セインが一歩前に出て、静かな、けれど絶対的なリズムで言葉を紡ぐ。

「あなたは、ここにいます。 私たちと一緒に、この道を歩いているんです」

4. 取り戻した「一」

ミルの輪郭が、ほんの少しずつ、確かな色を取り戻していく。

「……一緒に、帰る……」

ミルの唇が、震えながら動いた。

「まだ……ぜんぜん成長、してない……。ここで消えたら、みんなに笑われちゃう……っ!」

その強い意志が、現世へのくさびとなる。

いち!」

クレアが叫ぶ。

!」

カノンが合わせる。

いち!」

セインが続く。

!」

ケットルが声を重ねる。

そして。

「……いち……!」

かすれた、けれど確かなミルの声が、カウントの輪に戻ってきた。

次の瞬間、ミルの実体が完全に復元し、その場に力なく崩れ落ちた。

クレアが間一髪でその身体を受け止める。今度は、ちゃんと温かい感触があった。

5. 「隙」を許さない決意

「ミル! よかった……本当によかった……!」

「……もどった……消えてない……」

息を切らすミルを、四人が囲む。

「今のはさすがに心臓が止まるかと思ったよ」

カノンが深く安堵の息を吐き、ケットルも「一瞬の出来事だったがねぇ」と冷や汗を拭った。

「原因は**『隙』**です。数が止まり、認識が途切れた瞬間、この森は私たちを『なかったこと』にしようとする」

セインの言葉に、全員が表情を引き締めた。

クレアが立ち上がり、剣の柄を強く握り直す。

「じゃあ、もう二度と止めない。……行くよ。もう、誰も消させない!」

根拠なんて、まだ何もない。

けれど、ミルを救い出したという実感が、五人の魂をかつてないほど強く結びつけていた。

「一」「二」「一」「二」――。

再び、声を重ねて歩き出す。

一人も欠けないように。誰一人、忘れられないように。

最弱パーティ、今日もちょっとだけ成長中。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


今回は、ミルが「消えかける側」に回る話になりました。


これまで外側から見ていた現象を、

実際に“当事者”として体験することで、

パーティ全体の危機感と結束が一段上がった形です。


声をかけ続けること、名前を呼ぶこと。

単純だけど、それが確かな意味を持つ世界。


そして逆に言えば、

それが途切れた瞬間に何が起こるのかも、はっきりしてきました。


まだルールは完全には見えていませんが、

確実に一歩ずつ近づいています。


また少しだけ、成長します。

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