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タイトル未定

作者: オトハ
掲載日:2026/03/17

思考の入り口は目の前に。

この世で障害者との共生社会を謳っている人は何もわかっていない。これをよんでいるあんたも、何も知らない。わかっていない。ああ、補足だ。障害者と接し、歯を食いしばって涙を流した経験を経てもまだ、共生社会の実現を目指す清らかな天使様は、例外。


深い闇の中に女が騒ぐ声が聞こえる。私はそれを夢の中の出来事だと認識する。いや、認識しようとする。

知恵と知性を備える人間の脳が全力で体に抗うこの時間帯に、一番聞きたくない声がした。

「花寧はさっきからずーっと言ってんじゃん!耳使え、頭使え、人間だろ!」

私は無意識のうちにワタシとなり、眠気や憂鬱さをすべて払いのけて平然とした顔を作った後、自室からリビングへと階段を降りた。声の源はワタシの母と姉の花寧。彼女たちはADHD、らしい。発達障害者というスペシャル切符を手に入れるべく、自ら病院へ足を運んだ彼女たちは発達障害と診断をされた。母は軽度の注意力散漫という特性を持つ。普段の生活で母の性格を不憫には感じないが、発達障害を持つ娘の教育をする母としては、注意力散漫であることが致命傷だ。花寧は、怒ると周りがすべて見えなくなる。怒りの沸点はマイナス100度。怒っているときの花寧は、この世の何よりも理不尽だ。試しにお見せしよう。爆弾投下!!

「今朝だし、もうちょっとしずかにしてくれない」

特製石油爆弾、爆発。

「何、今、花寧がママと話してたんだけど。てか、何なの、いつもはそっちの方がうるさいくせに。大体、人の話に首突っ込むとか意味わかんない。本当、あんたのせいで朝から気分悪い。あーあ、一日が台無しになったじゃん責任取れ」

狂ったように、赤のガーベラが開く。朝の眩しい黄色が真っ赤に染まり、燃える。ワタシを燃やす。

「自分のことは棚に上げて人のことばっか。てか、ママはここであいつのこと、かばわなくていいから、ほんと」

こんな具合だ。普段から、花寧の怒りを鎮めようと頑張る母は八つ当たりを食らう。要領が悪く、口も達者でない母は、花寧の怒りを鎮められた試しがない。母はワタシからすると気の毒だ。が、これが母親の教育の結果だと言われたら反論できない。

「大体、あんた私たちに気を使って、部屋にいればよかったじゃん。あたしがこうやってキレるとまた、ママが怒るし!!!」

読者の皆さんも、そろそろ彼女の罵声にため息が出ただろう。もちろん、ワタシも花寧の罵声を聞きながら朝の支度をするのには膨大な体力を使う。母も然り。そのため、花寧の言い分を聞くことに必死な母は、理不尽な物言いをされたワタシに気を遣う暇がない。花寧の言葉を必死の形相で肯定し、怒りをなんとか最小限に抑える。それで終わり。

ワタシは燃えたくない。

そさくさとワタシは自室に戻り、部屋のドアを閉めた。

ばたん。

部屋のドアにもたれ、ため息とともに体は崩れおちた私は、自分の置かれた理不尽な状況に悔し涙を流した。悔しくて、悔しくて、本当に悔しくて歯を食いしばる。

今ごろ、美香ちゃんや柚希ちゃん、クラスメイトのみんなは美味しい朝ご飯を食べてるのかなぁ。朝のワイドショーを母と、兄弟と、みんなで見てるのかな。楽しいのかな、ワイドショーって。

さて、共生を謳う巷の方々、あなたたちは毎日発達障害者と過ごす苦痛に耐えられる自信がありますか。ま、どーせ自信だけはあるか。私は寛大な心を持つので、すべてを受け入れたいと思います、と悠然と語れる傲慢さもあるか。

「共生社会の実現を」とほがらかに言えるのは、天使様だけだ。毎日を必死に生きている私が許せるのは、天使様だけだ。

嗚呼、ワタシの理想の天使様は現れない。

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