ホットケーキかパンケーキの朝(好事百景【川淵】出張版 第十七i景【ホットケーキ】)
どっちも好き!
うちの日曜日の朝は、決まって同じメニュー。
フライパンで手早く、ふたりぶんの4枚を焼きあげる。市販の調合済み粉末をレシピどおりに仕上げただけだけど、これがいちばん美味しいんだよね。
2枚ずつお皿にもりつけて、つけあわせを用意すると、焼きあがったら来てと、起こしておいたふたりに声をかけた。
娘とパパのふたりは、親子そろって朝に弱いのだけれど。毎週このメニューにしてからは、土曜日は寝ぼすけでも、日曜日は朝食にちゃんと起きてきてくれるようになったのだ。
ママである私は、2枚のお皿を並べて、ふたりにいつものクイズを出す。
「さて、どっちがだれのだ?」
「こっち!」「こっちかな」
娘とパパの解答に、私はかならず「正解」と返事するのもお約束で、ふたりもそれに満足そうな顔。
それから私は。娘のほうのお皿の生地には生クリームをしぼり、お好みでと、今回はブルーベリーのジャムの瓶を置く。パパのほうのお皿には、生地が少々さめてもかたまりが残らないように、小さな器でレンジにかけたとかしバターと、チューブからメープルシロップをかけてあげた。
こうして、娘には「パンケーキ」。パパには「ホットケーキ」がそれぞれ皿に2枚ずつ。日曜日の朝の食卓にならぶのだ。
娘が幼いころからやっているシリーズのアニメをみながら、3人で食卓を囲むのが、私たち家族のこの時間の習慣。
ふだんは生活リズムから、なかなか3人そろっての食事をとれないため、週に一度とはいえ、これは大切な行事なのである。
「それにしてもさ、パパもあたしも、自分の皿がわかるのってすごくない?
見た目、どっちもあんまり変わんないのにね」
今年小学3年生にあがった娘は、得意そうに言った。
「ぼくの皿のやつのほうが、バターをかけて欲しそうな色をしてるからな」
つられてパパも、寝癖の巻いた髪で、にぃっとした笑顔を見せた。
私はといえば、ボウルに残っていた余りを焼いた生地に、これまた残った生クリームと、気分で卓上のジャムやメープルシロップをのっけて。
ふたりの皿と比べても、いいとこどりというか、どっちつかずのものを毎回食べている。
「そういえば、いつもママが食べてるのって、パンケーキ? それともホットケーキ?」
不思議そうに尋ねる娘に、私は「どっちかしらね」と笑いながら、はぐらかした。
シンクの洗い物の中には、焼く前の生地をミックスしたボウルがひとつきりしかないのは、どうやら、まだばれていないらしい、




