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【寓話】落ちない林檎

※本編とは別世界のお話です。


昔々、あるところに、

美しい王女が暮らす城がありました。


その城には不思議な鏡がひとつ。

王女の継母の部屋に、ぽつんと置かれていました。


継母が鏡の前に立ち、こう言いました。


「鏡よ、鏡。

この世で一番美しいのは、誰?」


継母の言葉に、不思議な鏡は答えました。


「一番美しいのは、王女」


不思議な鏡は目の前に立つ継母ではなく、王女の姿を映します。


「何ですって?!!」


継母は怒り狂いました。

鏡に映る王女のやさしげな瞳が、さらに継母を怒らせます。


「こんな何も考えてない間抜けな顔の、どこに美しさがあるというの!!」


肩を大きく揺らし、荒々しい声を上げる継母。

継母はしばらくして「ふんっ」と鼻を鳴らしました。


「……やはり、消すしかないわね」


継母はボソッと呟き、静かに部屋を出ていきました。


少しまえ。

継母が鏡に話しかけている時のこと。

王女はひとり、庭で日向ぼっこをしていました。


(……いいてんき……)


王女は太陽の温かい光に包まれて、

うとうとと首を揺らしていました。


そこに、ひとりの青年がやってきました。


「王女」


「……あ、狩人さん」


青年はこの辺りに住んでいる狩人です。

森から降りてくる肉食の動物たちから、この城を守っていました。


「最近、王妃の様子がおかしい」


狩人は声を潜めて、王女に言いました。


「え? そうなの?」


王女は首を傾げて狩人に尋ねます。

狩人は静かに頷き、こう言いました。


「城の使用人から、王妃が王女を妬む声を聞いてしまったと聞いた」


王女は思いました。


(たしかに、好かれてはいないかも……)


狩人は続けます。


「城に食料を納品している商人からも、王妃から毒性の強い植物を依頼されたと聞いてる」


王女は思いました。


(? どうしてそんなものを……?)


狩人はさらに続けました。


「城の料理人から、王妃が王女に料理を振る舞いたいと相談されたとも聞いてる」


「……!」


王女は目を大きく見開きました。


(それって、もしかして……)


王女の眉が、どんどん下がっていきます。

狩人はそんな王女の手を、そっと包み込みました。


そして、まっすぐ王女の瞳を見つめ、こう言いました。



「王女——


一緒に、逃げよう」



王女の目が、再び見開かれました。

王女は狩人の目をしばらくじっと見つめ——


「……うん」


こくりと、頷きました。

狩人は安心したように微笑みます。


ふたりは手を繋いだまま、ゆっくりと立ち上がり——


そのまま、

森の奥へと歩き出しましたとさ。


めでたしめでたし。


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