町を駆けるふたり
※第七話 スキル鑑定後の二人。
音凪「透真」
透真「ん?」
音凪「あれ、見て」
音凪は露店の雨除けに吊るされた、大きな蜘蛛の骸を指差した。
音凪「何に使うんだろうね」
透真「薬とかじゃないか?」
音凪「え……」
僅かに俯き、考え込む音凪。
暫くして、そっと顔を上げた。
音凪「……塗る、のかな……?」
透真「煎じる方かな」
音凪「えっ……」
透真 (かわいい)
***
たくさんの小瓶が並べられた露店の前で足を止めた二人。
音凪は立て掛けてある店の看板をじーっと見つめた。
音凪「ぽーしょん……一部? 『お裾分け』ってことかな?」
透真「魔法薬じゃないか?」
音凪「魔法薬?」
透真「ああ。 ほら、ゲーム……は、やったことなかったな」
音凪「うん。 透真もゲームしたこと、あったっけ?」
透真「……榊が」
音凪「そうなんだ。榊くん、ゲームするんだね」
透真「中学の時な。藤咲に手伝わせてたみたいで、その時にポーションの話をしてた」
音凪「そうなの?」
透真「『回復ポーションの生産だけでいいから』って」
音凪「ふふっ」
透真「回復以外にも色々種類があるみたいだぞ?能力向上系とか、毒消しみたいな物も」
音凪「そうなんだぁ。すごいね」
透真「ほら。そこの札にも『魔力増強』って」
紫の液体が入った小瓶に掛けられた札を指す透真。
音凪「……えっ? ゲームの話じゃなくて?」
透真「この世界の話」
音凪「……わあ」
音凪は目をまんまるにして、並べられた小瓶の札を一つずつ見始めた。
音凪(異世界ってすごい)
「……」
(どうやって使うんだろう)
「……かけるのかな?」
透真「飲む」
音凪「……えっ?」
小瓶の中身は青や緑、ピンクなど、一般的な飲み物ではあまり見かけない色もある。
音凪は"これも飲むの?"という表情で、透真を見つめた。
透真「……」
透真は小さく頷いた。
音凪は小瓶に再び視線を戻して、暫く考えた。
音凪「……ジュースみたいな感じなのかな……」
透真「……どうだろうな」
音凪「変わった味だったら、使う時大変だね」
透真「そうだな」
音凪はずっと真剣な表情をしている。
透真もそんな音凪に真面目に返した。
ふと、音凪は赤い魔法薬が入った小瓶を見つめて、ぼそっと呟いた。
音凪「……赤いのは——辛かったりしないかな?」
透真「ふっ」
音凪「調味料の代わりで一石二鳥だよ」
音凪は変わらず、真面目な表情で話している。
そしてそのまま、赤いポーションにそっと手を伸ばした。
透真「十中八九辛くないから」
透真は自分の手を音凪の手に重ねて、優しく下ろした。
音凪「……」
音凪は残念そうに眉を下げて透真の顔を見つめた。
透真「……後で調味料見に行くか」
音凪「!」
音凪の口元がそっと解けた。
音凪「うん……!」
透真は僅かに目を細めた。
〜おまけ〜
音凪「ハバネロあるかな?」
透真「買わないぞ?」
音凪「」しゅん




