フアナVS透真(前哨戦)
《フアナ視点》
「!」
トーマって、もしかして……
それは、あの戦いが終わってすぐのこと。
飛びつくネナを抱き止めた、あのトーマの表情!!
あたしの"オンナの勘"がビシビシ言ってる。
(ネナのこと、好きなんだあ!)
新しいおもちゃを見つけたときみたいに、口元が勝手ににんまりと笑った。
でも今はからかえない。
流石のあたしも空気を読む。
それに……
今出て行ったらじじいにバレる!!
「勝手に着いて来おって!!」って、
絶対ゲンコツしてくるんだからぁ……。
ほんと、こまった暴力じじいよねえ。
あたしは今後の楽しみに、
おちょくりたい気持ちを今はぐっと堪えた。
***
数日後。
《透真視点》
「ねぇ、トーマ!」
フアナがニヤニヤしながら近づいて来た。
嫌な予感がする。
「どうした?」
俺は何も気づいていないふりをして、返事をした。
「トーマってえ……
ネナのこと、好きなんでしょお?」
瞳を輝かせて、さらに悪魔的な笑みを深めるフアナ。
(ふ、)
俺は知っている。
「ああ、好きだよ。
……それがどうかしたのか?」
こういう時は、何でもないふりをして肯定するのが一番安全だと。
俺は落ち着いて答えた。
フアナは俺の答えにきょとんとして一拍。
残念そうな表情をして肩を落とした。
(ちぇ〜。なあんだ、つまんないのぉ)
そんな心の声が聞こえてくる。
「ふーん。そぉなんだ〜」
フアナは興味をなくしたのか、それだけ言い残すと直ぐに飛び去って行った。
(……よし)
うまく躱せたようだ。
脅威が去った安堵に、僅かに口角が上がった。
しかし、数日後。
俺はこの日の事を後悔することになる。
躱し方を、間違えたと……。




