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ここで終わり

個室、終わりなき水底


水は腰のあたりまで達し、冷たさよりも重みが身体を圧し潰す。

ドアは開かない。叩けば叩くほど、逆に外から強く押し返される。


「カチリ」

頭上の通気口から垂れる腕が、首を掴んだまま力を込めてくる。

骨が軋み、肺が押し潰され、叫ぶことすらできない。


便器の中で大きく口を開いた“何か”が、ぶくぶくと水を吐き出しながら笑っていた。

耳鳴りのような低い音が響き、視界がぐにゃりと歪む。


次の瞬間、水は一気に胸まで押し寄せ、足元を何かが引っ張る。

何本もの腕が絡みつき、肉を抉るように沈めていく。

必死にドアを叩く手も、やがて水に没する。


最後に見たのは、通気口から覗き込む女の顔だった。

だがその顔は、自分自身のものだった。

水に揺れるもう一人の自分が、冷たい目でこちらを見下ろしながら囁く。


「もう外には戻れない」


肺いっぱいに水が流れ込む。

苦しみは一瞬、次いで全ての感覚が静かに閉じていった。


…翌朝、清掃員がトイレを点検したとき、

その個室はからっぽだった。

ただ床一面が濡れており、便器の水面には人の影が揺れていたという。

ありがとうございました

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