表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/27

9. 巧妙な手口だろこれ

9. 巧妙な手口だろこれ




 成り行きで西城さんと東雲さんとも合流し、4人で食事を済ませた。そのあとは、完全に女子会に参加する場違いな男に成り下がったオレ。普通に女子の遊びに付き合うことになったが、その間も、高宮さんはとても楽しそうにしていた。


 そして帰り道。西城さんと東雲さんと別れ、オレは高宮さんと駅まで一緒に歩く。


 夕暮れの街は、オレンジ色に染まり始めていた。ビルの隙間から覗く夕日がアスファルトの道を照らし出していた。行き交う人々は、それぞれの帰路を急ぎ、街は徐々に落ち着きを取り戻し始めていた。


 すると不意に、オレの右腕に抱きついてくる高宮さん。柔らかい感触がオレに……そして、昨日の押し倒した感じになってしまった光景が、脳裏に鮮明に蘇ってくる。


「おやおや?右腕ががらあきですなぁ、旦那様?」


「あの、当たってますよ?」


「昨日、触ったじゃん」


「いや、触ってないよね?オレはそのまま寝たし」


「どうかなぁ?無意識の神坂君は、本能のまま私の胸をまさぐって……」


「これは『タイプリープ』案件だな」


「ふふ。真実は闇の中だね」


 高宮さんは、楽しそうに笑う。なんか、こんな風にからかい合うくらい仲良くなったのだと思うと、少しは嬉しくもある。そして、改札前で高宮さんはオレの方を向き口を開く。


「なんか、初デートじゃなくなっちゃったね」


「初デートより先に、初お泊まりをしてるけどな……」


「初キスもしたし?」


「ちょっ!こんな外で言うなよ……恥ずかしいだろ」


「それは神坂君が悪いかな。私とヤってれば、そんなこと恥ずかしくないのにさ?」


「オレを殺す気なのか、高宮さんは?いきなりそんなことしたら、後悔でふと我に返ったらショック死しかねないぞ?」


「確かにそうかもね」


 高宮さんは、笑いながらオレを見る。本当にこの子は一体何者なんだ?そして、電車に乗り込む。座席に座り、オレは聞きたいことがあったので聞いてみることにした。


「なぁ、高宮さん」


「なにかな」


「今年のクリスマスに、春人に告白されるんだろ?」


「されるね」


「オレにどうしてほしいの?止めてほしいってこと?」


 オレがそう言うと、少し間が空いてから高宮さんが答える。


「……解釈は神坂君に任せるよ」


「意味分からないけどさ……」


「いい女は、少しミステリアスな方がモテるから」


「……オレの未来の奥様なのに?」


「女の子は、いつでもチヤホヤされたいものだよ?」


 そんなことを話していると、オレの降りる駅に着く。オレが立ち上がると、高宮さんが声をかける。


「神坂君」


 オレはその声に立ち止まる。振り返ると、高宮さんの綺麗な瞳が真っ直ぐにオレを見つめている。少しの間見つめ合いながら、時間が過ぎる。


「どうした?」


 オレは、尋ねる。


 そして、高宮さんの唇が小さく動く。その言葉は、オレには聞こえないくらい小さな声で発せられたものだった。


 しかし、確かにオレの耳に届いた言葉だった。高宮さんは微笑みながら、小さく手を振りながら、ゆっくりとオレに背を向ける。


 オレは、そのまま高宮さんが見えなくなるまでホームにいた。電車のドアが閉まり、高宮さんを乗せた電車がゆっくりと動き出す。遠ざかっていく電車の赤いテールランプが、夕闇の中に小さく光っていた。


 高宮さんが言った言葉を、頭の中で何度も繰り返す。オレの耳元では、さっきの言葉がリピートされていた。


『私。君の奥様で良かった。ありがとう』



 ◇◇◇



 家に帰ったオレは、シャワーを浴びてベッドに横になっていた。あの時の高宮さんの顔が忘れられない。オレにだけ聞こえるような小さい声だったが、はっきりと口にしたのだ。


「君の奥様で良かった……か」


 オレは、天井を見ながら呟く。今まで自分の意思で何かを決めたことがない。ましてや誰かの為に何かをしたいなんて思ったこともない。それでもオレの心が叫んでいるんだ。


「……もう。高宮さんのことで頭がいっぱいだな。詐欺なら巧妙な手口だろ、これ……」


 オレは、目を瞑り眠りにつくことにした。きっと疲れていたんだろう。すぐに意識を手放すことができた。

『面白い!』

『続きが気になるな』


そう思ったら広告の下の⭐に評価をお願いします。面白くなければ⭐1つ、普通なら⭐3つ、面白ければ⭐5つ、正直な気持ちでいいのでご協力お願いします。


あとブックマークもよろしければお願いします(。・_・。)ノ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ