6. 余韻に浸って
6. 余韻に浸って
まさかこんなことになるとは……電車のトラブルに巻き込まれ、なぜかクラスメートで、将来オレの奥様になるらしい高宮さんとラブホテルで一夜を過ごすことになるとは。しかも、お互いバスローブ姿で、コンビニで買った夕食を食べているという、なんとも言えない状況だ。
「な、何もしないからな?絶対にしないからな?」
オレは念を押すように、高宮さんにそう言った。心臓がドキドキして、平静を装うのが精一杯だ。
「はいはーい。わかってますよ~」
高宮さんは、まるで余裕綽々といった感じで、軽く受け流す。こんな美少女だし、もしかして経験済みなのかもしれない。それとも、オレをからかっているだけなのか……どちらにしても、オレの心臓は休まる暇がない。
高宮さんは、身長が低いから、オレの位置からは胸の谷間がどうしても見えてしまう。正直、かなりエロい。でも、そんな目線を向けないように、必死で耐える。高宮さんって、意外とあるんだな……なんて、不埒なことを考えてしまう。童貞のオレには、あまりにも刺激が強すぎる状況だ。
「そう言えば、家に連絡は大丈夫だった?」
「ああ。友達の家に泊まるって言っといたよ。スマホ貸してくれて、ありがとな」
「うむ。善きに計らえ」
偉そうな口調だけど、その可愛さが全てを相殺してしまう。こんな状況じゃなければ、もっと素直に可愛いと思えたのに。
「まぁ、成り行きだけどさ。せっかく一緒にいるんだし、私は色々話したいかな?」
「成り行き?高宮さんは知ってたんでしょ?傘まで用意してたし」
「傘は、カバンにいつも持ってるだけ。それより、なんで着替えを持って来なかったのかな?裸で寝ようとしてたの?」
「いきなりこんな展開になるとか、想像しないだろ普通……」
「私のことを信じたら良かったね」
「それは……そうだな」
今回の件で、少しは高宮さんの『タイムリープ』を信じざるを得ないのかもしれない。いくらなんでも、偶然にしては都合が良すぎる。でも、まだ完全に信じているわけじゃない。
「なんか神坂君、緊張してるのかな?ぎこちないけどさ?」
「そりゃ、ラブホとか初めてだからな」
「私も初めてだよ?」
「それに、女の子と2人きりも初めてだ」
「私もだね」
……そんな風にはとても見えない。高宮さんはさっきから余裕綽々に見えるし。もしかしてオレをからかっているだけなのか?
それから、高宮さんから雑談混じりに色々なことを聞かれたが、適当に答えておいた。でも、高宮さんのその顔はすごく嬉しそうだった。本当にオレのことを……と、錯覚してしまいそうなくらいに。
これが、高宮さんの作戦なのかもしれない。落ち着いて対処しなければ。とか思っていると、ここ最近の寝不足が祟ったのか、瞼が重くなってきた。
「神坂君。眠そうだね?」
「最近、寝不足だったからな」
「じゃあ、もう寝たらいいんじゃない?」
そう言って、高宮さんはベッドを指さす。その瞬間、身体が一気に熱くなっていく。
「いや……オレがベッドに寝たら、高宮さんが寝れないだろ?」
「なんで?私もベッドに寝ればいいよね?ラブホのベッド広いよ?」
当たり前かのように、キョトンとした顔をオレに向ける高宮さん。まさか……本気で言っているのか?
「そう言う意味じゃ……もしかして高宮さんは、経験豊富なの?余裕あるね?」
「豊富?それは難しい質問だね。まぁ、それなりにはあるかな。でも今の私は処女だね」
「……意味わかんないんだけど」
「神坂君は童貞だね」
「うるせぇ!」
「図星だ。あはは!」
高宮さんはよく笑う子だ。可愛い笑顔だと思う。でも、オレはその笑みの裏にある真意を読み取ることができない。
「ほらほら、諦めてもう寝ようよ。神坂君は私が寝たら、ソファーにでも寝るつもりだったのかもしれないけど、神坂君のほうが先に寝そうだもんね!」
そう言ってオレの腕を引っ張り、そのままベッドにダイブさせられる。そして高宮さんはオレの隣に横になる。
「おい高宮さん!?」
「さぁ!一緒に寝るぞ!このヘタレめ!観念したまえ!」
そして高宮さんはそのまま電気を消し、オレは高宮さんに押し倒される形になり、身体を押さえつけられる。
このままじゃヤバい!オレは何とか抜け出すが、今度は逆に高宮さんに覆い被さる形になった。バスローブ姿の美少女を押し倒すオレ。何とも言えないシチュエーションである。
暗闇で目が少し慣れたのか、バスローブから高宮さんのピンク色の下着が見える。もう理性が崩壊しそうだ。
「いや高宮さん……これは……」
「うーん……これはこれでアリだね」
「何が……?」
「押し倒されたまま何もされないのも、それはそれでつまらないから、とりあえずキスでもしちゃう?」
「えっ?ちょっ……待っ……」
「ダメ。待たない」
オレの言葉を待たずに、高宮さんの顔が近づき、唇と唇が触れ合う。柔らかい感触が伝わると同時に、心臓が激しく鼓動し始める。ファーストキスはレモン味なんて聞いたことがあるが、そんな余裕などなかった。ただ、高宮さんのいい匂いが鼻腔をくすぐる。
どれくらいの時間だっただろうか。数秒だったかもしれないし、数分だったかもしれない。
「……ねぇ神坂君。私は余裕なんて全然ないからね?今だって、すごくドキドキしてるし。神坂君のせいだよ?」
「高宮さん……」
「もう寝ようか。あー……一応、どうしても我慢出来なくて、この美少女の私を襲うなら、そこにあるもの使ってね?さすがにまだ、妊娠とかはしたくないからね?おやすみ」
高宮さんはそう言って布団を被る。心なしか、高宮さんの顔は少し赤らめていたかもしれない。それよりもオレは、隣の席の美少女とのファーストキスの感触の余韻に浸っていた。
「……高宮さん」
小さく呟いてみたが返事はなかった。規則正しい寝息が聞こえる。本当に寝てしまったようだ。
「……まさか本当に寝るとはな」
オレはそっと高宮さんの寝顔を見る。すやすやと眠る姿は、まるで天使のようだ。
「……可愛いな」
思わず、そう呟いてしまう。こんな無防備な姿を見せられたらドキドキしてしまう。
「……でも、本当に何なんだろう、この子」
高宮さんの言動は理解不能なことばかりだ。未来から来たとか、オレの奥さんだとか、そんな突拍子もないことを平然と言う。でもどこか憎めない。むしろ惹かれてしまう自分がいる。
「……まさか、本当に好きになったりしないよな?」
そんなことを考えているうちに、オレも眠りに落ちていった。
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