3. アドバイスするね
3. アドバイスするね
翌日。今日もまた、あの不思議な少女に会うために学校へ向かう。教室に入り席に着くと、案の定、高宮さんが満面の笑みでオレに挨拶をしてきた。
「おっはよ~神坂君」
「おはようございます」
「敬語はやめてよ~」
「はいはい」
軽く受け流しながらも、心の中では少しだけ優越感を覚えていた。中学の頃は、女子とまともに話すことすらほとんどなかったのに、今こうして美少女と日常的に言葉を交わしている。それだけで、少し自分が変われたような気がしたんだ。相手が相手だけに緊張はするけれど。
「もう~神坂君は素直じゃないなぁ」
「オレはいつでも正直者だよ」
「どの口が言ってるのかな?」
「この口だな」
オレも負けじと自分の口を指して答えると、彼女は少し頬を膨らませた。
「むぅ~」
「膨れるなよ」
その仕草が、また妙に可愛いから困る。ただでさえこんな可愛い子と普通に話しているだけで心臓がドキドキするのに……そんな、他愛のないやり取りをしていると、チャイムが鳴り授業が始まった。
するとすぐに隣から熱い視線を感じた。横を見ると、案の定、高宮さんがこちらをじっと見つめていた。おいおい、今は授業中なんですけど?先生の話を聞いてるのか?
「またオレを見てるのか?」
小声でそう問いかけると、彼女は悪びれる様子もなく答えた。
「うん。また見ちゃった」
「見ちゃったって……オレは見世物ではないぞ?」
「でも見たいんだもん」
「いや、見られても困るだけだろ?」
「え?私は嬉しいけど?だって未来の旦那様だしさ」
高宮さんは、まるで当たり前のことのように恥ずかしげもなく言い切る。その言葉を聞いた瞬間、オレの顔は一気に熱くなるのを感じた。だから……授業中なんだってば……周りの人に聞かれたらどうするんだ?
「その言い方は誤解を生むぞ」
「大丈夫。本当のことだし」
「だからそれは高宮さんが言ってるだけであって……オレたちは付き合ってすらいないんだが?」
「やっぱり私と付き合いたいの?」
「そんなことは一言も言ってない」
「じゃあいいじゃん。私が見てたいんだし」
……やっぱり、この子は全く理解できない。でも、不思議と嫌な気はしないんだよな。そんな、脈絡のないやり取りをしているうちに、あっという間に時間は過ぎていき放課後になった。高宮さんは、相変わらずオレにまとわりついてくる。そして、昨日のデジャヴのように今日も駅まで一緒に帰ることになった。
「まだ2日だけど楽しいな~久しぶりの高校生活は。神坂君と一緒だしね!」
「オレは望んでないよ」
「こらこら、強がっちゃって。一応、こんな美少女が毎日のように話しかけてるんだよ?嬉しくないの?」
「嬉しいというより、謎」
本音を言うと、嬉しい気持ちも少しはある。でも、それ以上に彼女の言動が理解不能すぎて、頭の中は疑問符でいっぱいなんだ。
「でも、その謎の答えは私が教えてあげてるんだけどな?」
「その答えがぶっ飛んでて謎なんだよ」
「じゃあ、これから一緒に居ればわかるよ」
……だから、そういうことをサラッと言うのがずるいんだよな。いちいち可愛いんだから。そんなことを心の中で思っていると、いつの間にか駅に着いていた。
「それじゃあな。高宮さん」
「あっ、そうだ」
「なに?」
「神坂君にアドバイス。明日は予備の着替えを持ってきたほうがいいかもね。よろしく!」
「は?どういうことだよ!?」
「明日は金曜日でしょ?そのままの意味だよ。じゃあ、また明日ね!」
そう言って、彼女は意味深な笑みを残して、人混みの中に消えていった。一体なんなんだ……?予備の着替えって……もしかして、本当に何か起こるのか?まさか……誘われてる?いやいや、そんなわけないだろ。
「……期待してもいいのかな」
無意識のうちに、そんな言葉が口をついて出てしまった。待て待て!冷静になれオレ!相手はいくら可愛い美少女とはいえ、いきなり『タイムリープ』してるとか言い出す、ちょっと変わった女の子だぞ?そんな都合の良いことあるわけないだろ!
と、必死に自分に言い聞かせる。それでも、高宮さんのあの笑顔や言葉を思い出す度に、心臓がドキドキと激しく脈打つのを止められない。
「これじゃまるで、オレが高宮さんのことを好きみたいじゃないか……まぁ、嫌いではないけどさ」
そんな、誰にともなく言い訳のような独り言をつぶやいてみるが、結局のところオレは自分の気持ちがよくわからなかった。そして家に帰り、昨日の高宮さんの言葉が気になって、オレは言われた通り、予備の着替えを準備することにした。とはいっても、ジャージとTシャツくらいしかないのですぐに終わる。
「……なにやってんだオレ?バカじゃないのか?なぜ、言われるままに着替えなんて準備してるんだ?高宮さんとは、まだなんの関係もないだろうに」
そう思いながらも、なぜか少しドキドキしながら、オレはベッドに潜り込んだ。今日こそは早く寝なければ。そう思ったものの、頭の中は高宮さんのことでいっぱいになり、なかなか眠りにつくことができなかった。思春期の男子高校生にとって、あの美少女の存在は、あまりにも刺激が強すぎたようだ。
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