2. 気になっちゃった?
2. 気になっちゃった?
翌朝、少し寝不足気味の頭を抱えながら、オレはいつも通りに家を出た。昨日の高宮さんの言葉が、どうにもこうにも頭から離れてくれなかったんだ。一体、何が本当で何が嘘なのか。考えても考えても、答えなんて出るはずもないのに。
そんなことを考えながら歩いていると、後ろから明るく可愛い声がオレの名前を呼んだ。
「おっはよう!神坂君!」
振り返ると、そこには満面の笑みを浮かべた高宮さんが立っていた。
「……おはようございます。」
昨日の今日だ。どうしても意識してしまう。思わずよそ行きの言葉遣いになってしまった。すると高宮さんは少し不満そうな表情を浮かべる。
「敬語はやめてよ~。せっかく仲良くなったのに~」
「……その記憶なら、高宮さん、また『タイムリープ』してるんじゃない?」
だって、昨日はあんな突飛な話をしただけで、別に仲良くなった覚えなんてないんだけど。
「でも、こうやって話してるよ?」
「話したら仲良くなるわけじゃないからさ」
「え~、神坂君は屁理屈だなぁ」
「屁理屈は高宮さんでしょ」
そんな、まるで漫才みたいなやり取りをしながら、オレたちは教室にたどり着きそれぞれの席に着いた。昨日、家に帰って冷静になってから改めて考えたんだけど、やっぱり高宮さんの言っていることはどう考えてもおかしい。『タイムリープ』なんてSFの世界の話だ。非科学的なことを簡単に信じられるはずがない。
きっと、あれは新手の詐欺だ。そう結論付けようとしたんだけど、どうしてもあの笑顔が頭から離れない。そんなことを考えていると、ふと、強い視線を感じた。何気なく横を見ると、隣の席の高宮さんがじっとこちらを見つめていた。目が合うと、彼女はまた、人を惹きつけるような笑顔を向けてくる。
……可愛いな。
そう思ってしまう自分が情けない。同時に、彼女の笑顔を見た瞬間、心臓がドクン!と大きく跳ね上がるのを感じた。顔が熱くなるのがわかる。もしかしたら、もう真っ赤になっているかもしれない。今まで、まともに恋愛経験なんてないオレには、これはあまりにも刺激が強すぎる。お願いだからそんなに見つめないでくれ。
……恥ずかしくて、本当に死にそうだ。
結局、授業中ずっと、彼女からの熱い視線を受け続けることになった。先生の話なんて、ほとんど耳に入ってこない。そして、長かったような短かったような二日目の放課後。オレは案の定、高宮さんに呼び止められた。
「あっ、来た。神坂君。駅まで一緒に帰ろう」
「ごめん。オレは今、約束の場所に集まって、強大な敵と戦ってるんだ。だから今日は一人で帰ってくれないか?」
「そんなわけないじゃん。神坂君はぼっちだし。ほら、帰ろう」
そう言って、高宮さんは有無を言わさずオレの腕を掴み、歩き出した。
「ちょっ!ちょっと待て!」
さすがにこれはまずい。周りの生徒たちの視線が痛い。オレは必死に抵抗し、彼女の手を振りほどいた。というより……手の温もりとか、高宮さんの近くにいるとフワッと香るいい匂いとか……色々なものが、オレの理性を揺さぶるんだ。これは本当にヤバい。
「何?照れてるの?」
「うるさいな」
「あはは。やっぱり神坂君は面白いね」
全然面白くないと思うんだけど。むしろ、こっちは真剣に困ってるんだ。
「別に面白くはないと思うぞ?」
「ううん。面白いよ。」
「……あっそ。」
そう言って、オレは少し顔を俯きながら、彼女から視線を逸らして歩き出した。恥ずかしすぎて顔がどうしようもなく熱い。
「ねぇ、神坂君!私、一緒に帰りたいの。ダメ?」
「……腕を掴まないなら、いいぞ」
結局、彼女のペースに乗せられてしまう自分が嫌になる。
「ありがとう!」
そう言うと、高宮さんは今度は腕は掴まないものの、ピッタリとオレの隣に寄り添って歩き始めた。
……ううっ、近い。やっぱりめちゃくちゃ良い香りするし、この絶妙な距離感とか……とにかく、心臓がドキドキしてしょうがない。
「神坂君。朝、なんで私のこと見てたの?もしかして、気になっちゃった?」
「そうだな。色々な意味でな」
「どんな意味?」
「意味というか……まぁ、気になるんだよ」
「へぇー。私のことが気になって仕方ないって感じだね?」
高宮さんは、クスクスと楽しそうに笑う。オレはその言葉に、またドキッとしてしまう。
「いや、そういう訳じゃなくてだな……そう言う高宮さんも、オレのこと見てたよな?監視してるの?」
「私は、浮気とか許さないタイプだから」
「浮気って……探偵かよ?」
「時空探偵だね」
「いや……見られるのは、ちょっと恥ずかしいんだけど?」
「私も恥ずかしかったよ?」
「……オレのこと、気になった?」
「うん。もちろん」
高宮さんは、さらに上目遣いでオレを見つめてくる。そのあざといまでの可愛さに、オレはまたまたドキッとして、心臓が激しく脈打つ。くそっ。もしかしたら、これが高宮さんのやり方なのか?天然なのか、計算なのか、全く読めない。
「もちろんって……」
「そりゃそうでしょ。神坂君は、私の未来の旦那様なんだからさ」
「またそれですか」
「ふふ。それですな」
そんな、他愛もないような、でもどこか引っかかるような会話をしているうちに、いつの間にか駅に着いていた。
「それじゃあな。高宮さん。」
「はい!また明日ね!」
本当に、高宮さんは『タイムリープ』をしてきたのだろうか。そんな非現実的なことを、頭では全く信じられない。でも、一つだけ、嫌でも認めざるを得ないことがある。それは、高宮さんがオレに少なくとも好意のようなものを抱いているということだ。
そんな高宮さんの後ろ姿を、複雑な思いで見送った後、オレは電車に乗り込み、いつも通りの帰路についた。本当に監視をしているのか、それともただの彼女の奇妙なアプローチなのかは分からないけど、どっちにしても……正直に言うと、昨日の嫌悪感とは違って、今は少しだけ悪い気はしなかった。
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