17. 特別な関係
17. 特別な関係
そして翌朝。カーテンの隙間から差し込む朝の光で目が覚めると、隣には高宮さんが、まるで天使のように穏やかな寝顔を見せていた。規則正しい呼吸が、静かな寝室に微かに響いている。
一応、そっと布団をめくって確認する。服はきちんと着ているし、昨夜あれから何かあった形跡は見当たらない。ゴミ箱の中も当然空っぽだ。
どうやら、本当に大丈夫だったようだ。オレの理性警察も、昨夜はなんとか持ち堪えてくれたらしい。結局、あの後、二人で並んで眠ってしまったのだ。
無意識のうちに、昨夜キスをした自分の唇に指先で触れる。まだ、あの時の温かい感触が、微かに残っているような気がした。なんだろう……胸の奥に、ほんの少しだけ、言いようのない罪悪感が湧き上がってくる。
良く考えると、オレと高宮さんは、まだ正式に付き合っているわけじゃない。それなのに、キスをしたり、同じ部屋で一緒に寝たりしている。今どきの高校生はこれが普通なのか?そんな疑問が頭をよぎるけれど、やはりこのまま曖昧な関係を続けるのは良くないと思う。オレが、寝息を立てる聖菜さんを見つめながら、そんなことを考えていると、彼女がゆっくりと瞼を開けた。
「おはよう神坂君」
「ああ」
「早起きだね。私の寝顔が見たかったのかな」
「かもしれないな」
正直な気持ちを口にする。昨日の夜は暗くてよく見えなかった寝顔を、こうして明るい光の下で見ると本当に可愛いよな。
「将来、毎日見れるよ」
「なるほど。オレのほうが早起きなのね。もしかしてオレって将来、尻に敷かれてるのか」
「今もだよ」
「否定はしない」
なぜか、そう答えるのが、今のオレには精一杯だった。身支度を済ませてリビングに降りると、怜奈がソワソワした様子で、廊下をウロウロしている。その顔には、明らかに何かを期待しているような、ニヤニヤとした笑みが浮かんでいる。なんだかすごくムカつくんだが?
「おおおおはよう!おにぃ!聖菜さん!」
怜奈は、わざとらしく大きな声で挨拶をする。その声には、隠しきれない興奮が滲み出ている。
「うるさいぞ」
「おはよう怜奈ちゃん」
「おにぃ!今日はお赤飯がいいかな!?」
「初潮を迎えた女子かよオレは!何もなかったから。そもそも、オレと高宮さんはそういう関係じゃないし」
「うわぁ……本当にヘタレだ」
「え?何もなかったかなぁ?」
「高宮さん。遅刻するぞ。行こう」
オレは、高宮さんの腕を強引に掴んでそのまま家を出る。朝から面倒なことに巻き込まれるのは勘弁だからな。そのまま二人で駅に向かって歩き出す。
「うーん……少し身体が痛いかな」
オレの横で歩きながら、高宮さんが大げさに伸びをする。朝日を浴びた彼女のシルエットは、思わず目を奪われるほど綺麗だ。
……ボディラインがはっきり分かるので、正直やめてほしい。強調されると朝から刺激が強すぎる。
「ん?触る?」
「公然わいせつ罪とかで捕まりませんか、それは?」
「触りたいのは否定しないんだね」
「解釈は高宮さんに任せるよ」
そして駅に着き電車に乗り込む。朝の通勤ラッシュで、車内は少しばかり混雑している。高宮さんは、慣れた手つきでスマホを取り出しいじり始める。オレは昨夜のキスに対するほんの少しの罪悪感を拭いたい気持ちでいっぱいだった。
「スマホをいじってるとこ、ゴメン」
「ん?なにかな?」
高宮さんは顔を上げ、優しい眼差しでオレを見つめる。
「……高宮さんって、将来オレになんて呼ばれてるの?」
「ママ」
「……だよね。じゃあ、オレはパパだよな」
「そうだね」
高宮さんは、少し不思議そうな顔でこちらを見ている。しまった。つい、口走ってしまった。もう後には引けない。
少しでもオレは高宮さんとの関係を……
オレは意を決して、呼ぶことにする。
「……聖菜さん」
「え?」
高宮さんは、目を丸くして、驚いた表情を浮かべる。
「って、オレが呼んだりしたらどう思う!?」
「名前で呼びたいのかな?」
「いや、その、オレと高宮さんは……ほら、運命的な何かだろ?特別な関係っていうかさ!」
「なら、私も優斗君って呼ぶね」
「おっおう!」
そして、穏やかな時間が流れる電車の中。窓から差し込む春の陽射しが、聖菜さんの横顔を優しく照らしている。彼女の髪の毛が、微かに光を反射してキラキラと輝いているのを見ていると、なんだか心が安らいだ。昨夜のドキドキや、今朝の慌ただしさが、遠い夢のようにも感じられる。
「……顔真っ赤だよ、優斗君?」
「……それは、聖菜さんもだろ?」
「うん。だって、すごく嬉しいから」
聖菜さんはいつものように優しく、そして今までよりももっと可愛らしい微笑みをオレに向けてくれた。その顔を見た瞬間、オレと聖菜さんの間に、目には見えないけれど、確かに特別な温かい絆が生まれたような気がした。
今までの、どこか曖昧でもどかしかった関係がほんの少しだけ前に進んだような気がする。それと同時に、胸の奥に引っかかっていたほんの少しの罪悪感もようやく薄れていった。まるで心の中にあった小さな曇りが、晴れて青空が広がったようなそんな清々しい気分だった。
聖菜さんは再びスマホに目を落としたけれど、時折、顔を上げてはオレの方を見て、にこりと微笑んでくれる。その度に、オレの心臓は小さく跳ね上がる。ああ、この笑顔を守っていきたい。これからも、聖菜さんとこんな風に穏やかな時間を重ねていけたらどんなに幸せだろう……そんなことを思いながら、ほんの少しだけ、聖菜さんとの未来が想像出来たような気がした。
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