16. 今度は
16. 今度は
高宮さんを、まさか自分の部屋に泊めることになるとは。夢にも思っていなかった展開にまだ現実感が湧かない。自分の部屋に、異性のしかもこんなにも魅力的な女の子がいるというだけで、全身の血液が逆流するような変な気分になる。
意識しないように、他のことを考えようとすればするほど、高宮さんの存在が脳裏に焼き付いてどうにも落ち着かない。ベッドの下に投げ込んだ『アレ』の存在が気になって仕方ない。
「さてさて、夜は長いよね」
高宮さんはベッドに腰掛け、こちらをじっと見つめながら意味深な笑みを浮かべる。その瞳はまるで獲物を狙う猫のように、じっとりとオレを見据えている。
「いや、この世界線は24時間って決まってるからさ。」
「ずいぶん余裕だね~さすがラブホに泊まっただけはありますなぁ~」
「……さてもう寝ようかな」
これ以上、この話題を続けるのは危険だと判断し、強引に話を切り上げる。
「ふふ。私より先に寝て大丈夫?」
「オレは信じてるから、高宮さんのこと」
「それはどうかなぁ?」
なんでこんなに高宮さんは余裕なんだ。まるで、全てを手のひらで転がしているみたいだ。このままだと、オレの鋼の意思も時間の問題で崩壊してしまうかもしれない。すると、高宮さんはゆっくりと立ち上がり、興味深そうにオレの部屋を見渡し始めた。彼女の視線が部屋の隅々までをゆっくりと巡っていく。
「それじゃ、捜査でも始めようかな」
「ここは事件現場じゃないけど」
「うーん。イヤらしい臭いがしますなぁ」
高宮さんは、クンクンと鼻を鳴らす仕草をして、ニヤリと笑いながらオレに近づいてくる。その顔は、完全にオレをからかっている。
「高宮巡査長。この部屋は危険なので、大人しくしておきましょう。」
「まずは、クローゼットの奥から調べてみますか」
「勘弁してください」
「おや?犯人が自白したみたいですね」
そう言って、高宮さんはオレの隣に腰掛けた。距離が近いせいか、高宮さんの体温がほんのりと伝わってくる。そして、彼女の甘く、どこか色っぽい香りが鼻腔をくすぐる。この体勢だと高宮さんの胸元がほんの少しだけ見えてしまっている。お願いだからもう少しだけ離れていただきたい。
「せっかく神坂君の性癖とか、色々分かると思ったのに」
「知ってどうすんの」
「色々協力できるかもしれないでしょ」
「ずいぶん出来た奥様で」
「ご存じない?私。結構尽くすタイプだよ」
笑顔でそう言う高宮さん。いつものように、オレをからかっているだけだろう。でも……今日、西城さんの話を聞いた後だから、その言葉がいつもより深く心に突き刺さる。これは、オレにだけ見せてくれる特別な笑顔なのかもしれない。と、ほんの少しだけ期待してしまう自分がいる。
「あれ?美少女の私に見とれちゃった?」
「はいはい。明日も学校だからもう寝よう」
照れ隠しのようにオレはそう言って電気を消し、自分の布団を被る。もちろん、高宮さんには別の布団を使ってもらう。しかし……この布団、微かに高宮さんの匂いがする。恐るべし高宮さんのマーキング能力。
静寂が部屋を包み込む。その静寂が逆にオレの神経を逆撫でする。こんなにも近くにいるのに、触れることすらできないもどかしさ。それに耐えられず、オレは暗闇に向かって話しかけた。
「あのさ、高宮さん」
「……シたいの?いいよ。そっち行っても」
「それは困る。今は鋼の意志が休暇中だからさ」
「神坂君の会社は、すぐ休暇が取れるんだね」
「世界一のホワイト企業だからな」
高宮さんの匂いに包まれている今の状況じゃ、もうオレの理性がもたない。すると次の瞬間、高宮さんは勢いよくオレのベッドに上がってきた。
「……高宮さん。アポ無しは困るんだが?」
「アポ無し突撃が、私のモットーだから」
「すぐに黒服が来るよ」
「ふふ。黒服も休暇中じゃないの」
高宮さんの柔らかい感触が、腕に触れる。そして次第に、高宮さんの体温がじわじわと伝わり、自分の心臓の音がどんどん大きくなっていくのを感じる。
「ベッドの下の物、使わないのかな」
「見てたのか」
「見えただけだよ」
「優秀な捜査官だな」
そんな軽口を叩き合っているけれど、オレの心臓は、今にもはち切れそうなくらい激しく脈打っている。そしてそれは……きっと高宮さんも同じ。暗闇の中で、彼女の呼吸が少し早くなっているのが分かった。
「ねぇ、神坂君」
高宮さんの声は、さっきまでの明るさとは違い、少しだけ甘く、そして熱を帯びている。
「なんだ」
「無理にシなくてもいいんだけど。こんなに近くに、可愛い顔があるんだけどな?」
高宮さんの顔は、暗くてよく見えないけれど、その声のトーンだけで、どんな表情をしているのか、想像できてしまう。
「暗くて良く見えないけど」
「ふふ。嘘がヘタだね」
……高宮さんには、本当に敵わない。オレは暗闇の中、高宮さんの顔を想像し、そっと目を瞑る。そのまま、ゆっくりと顔を近づけていく。すると、高宮さんはオレの首の後ろに手を回し優しく引き寄せた。
「また寝不足になっちゃうね」
「もう慣れたよ」
そう言って、今度はオレからそっと高宮さんの唇を奪った。それは初めてのキスとは違う、もっと長くもっと熱く、そして、きちんと記憶に刻まれるような優しいキスだった。
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