14. イメージ変わったよ
14. イメージ変わったよ
そんなこんなで、オレは近所のドラッグストアに足を運んでいた。とりあえず牛乳は絶対に買っておかなければ。
店内に入り目的の牛乳を目指して歩く。牛乳を手に取ると、そのままの流れで、何となくコンドームのコーナーに足が向いてしまう。
いや、別に今すぐ使う予定があるわけではない。ただ念のためだ。万が一、本当に億が一、必要になる可能性だってゼロではないかもしれない。そんなことを考えていると、お目当ての物は意外とあっさり見つかった。ずらりと並んだパッケージを前にオレは立ち尽くす。
(……いや。本当に買うのか?オレ……)
誰に言うでもなく、心の中で自分に問い掛ける。もちろん答えなんて返ってくるはずもない。でも、もしも本当に今夜、高宮さんと何かあったとして、その時に持っていないというのはあまりにも間抜けすぎる。いや、でももし持ってると、それが目的だったとか思われたりしたらそれはそれで……
そんな風に、頭の中で堂々巡りの自問自答を繰り返していると突然、背後から声をかけられた。
「あれ?神坂じゃん」
「え?さっさっ西城彩音さん!?」
「なんでフルネームだし」
西城さんは、少し呆れたように笑う。なぜ、こんな場所に西城さんが!?しかもよりによって今、オレはコンドームを買おうかどうか迷っているという、一番見られたくない状況だ。心臓がドキドキと嫌な音を立てる。
「何やってんの?」
「いや……あの……男の生理用品を購入しようかなと」
咄嗟に出た言い訳は、あまりにも苦しい。自分で言ってて、顔が赤くなるのが分かった。
「ふーん。まぁエチケットだしね」
「ずいぶん寛容なんだな」
「高校生なんだから、そのくらい買うでしょ。別に普通じゃない?」
意外にも、西城さんは何も言わなかった。勝手に『キモッ』とか『お前ごときが買うなよ』とか言われそうなイメージを持っていたけれど、全くそんなことはなかった。拍子抜けするくらいだ。
そして、なぜか買い物終わりに、オレは西城さんと二人で帰り道を歩いている。夕焼けが空をオレンジ色に染め、二人の影を長く伸ばしている。
「西城さん。家はこの辺りなの?」
「うん。あたしは西区」
「意外に近かったんだ」
「神坂は?」
「ああ。オレは北区」
「ふーん」
それからまた沈黙が訪れる。オレと西城さんに共通の話題があるわけもなく気まずい時間が流れる。夕焼け空は綺麗だけど、今のオレには、ただただ気まずい背景でしかない。すると先に口を開いたのは西城さんだった。
「この前はゴメン」
「え?なにが?」
「せっかく聖菜とデートしてたのに、邪魔しちゃったよね」
「いや、いいよ。正直、オレも高宮さんと一緒にいれるか、自信なかったから」
あれはデートというより、高宮さんに振り回されていたような気がするしな。
「じゃあ、なんでデートしたし」
「あれは、高宮さんが一方的に……」
オレがそこまで言うと、西城さんは立ち止まり、少し考え込むように腕を組んで話し始めた。夕焼け色の光が、西城さんの横顔を照らしている。
「やっぱり不思議。聖菜から誰かを誘うなんて」
「え?」
「聖菜はさ。中学の時から一緒だけど、人見知りだし、引っ込み思案だし。今でも、あたしや舞子くらいしか話す相手いないんだよ。それを自分から神坂を誘うなんて、しかも異性を」
そんなことを言われてもオレも困るのだが。でも、もしかしたら高宮さんが言っている『タイムリープ』が本当だとしたら、中身は38歳だから、ある程度そういう部分での精神的なものは変わっているのかもしれない。
「だから心配になっちゃってさ。神坂がなんか弱みを握って、無理矢理聖菜とデートしてるんじゃないかって」
あの時も今も、弱みを握られているのはオレのほうだけどな。でも、西城さんは本当に高宮さんのことを心配していたんだな。意外に友達想いのいい人なのかもしれない。
「いや、オレがそんなことするように見えるか?普通の男子高校生だよ?」
「普通が一番怖いじゃん。凶悪犯罪の犯人とか、意外に普通の人だし」
「まぁ、一理あるな」
「なにそれ?認めてんの?」
「もしかしたら、オレの知らない隠された本能があるかもしれないしな」
「あはは。怖っ。神坂って意外に面白いね。イメージ変わったかも」
「オレもイメージ変わったよ、西城さんの」
「あたしのイメージ?もしかして、ビッチとか思ってる?」
「そこまでじゃないけど、多少ね。男付き合い上手そうだし」
「あはは。正直だなぁ。あたしはまだ処女だし、彼氏もいないよ。この外見のイメージでしょ?別に、今どきのようにオシャレして可愛くしてるだけ。軽くもないしギャルでもないよ?」
そう言って西城さんはオレの隣に並び歩き始める。そして再び沈黙が続きしばらく歩くとまた西城さんが話しかけてくる。
「あたし、こっちだからさ」
「ああ。気を付けてな」
「うん。また明日、学校でね。」
「おう」
「神坂」
「ん?」
「……聖菜のこと、お願いね。きっと聖菜にとって、神坂は……運命的な何かなんだろうからさ」
「尽力はするよ」
そう言ってオレは西城さんと別れ、一人、家路を急いだ。
「運命的な何かか……それが、将来の結婚相手ということなんだろうけどさ」
西城さんの言葉が頭の中でリフレインする。運命か。そんな大げさなものが、自分と高宮さんの間にあるのだろうか。
その帰り道。ふと空を見上げると、大きく丸い満月が、静かにオレを照らしていた。オレンジ色だった空は、いつの間にか深い藍色に変わり、夜の帳が降り始めている。満月の光は、どこか神秘的で、今日の出来事をまるで遠い昔の物語のように感じさせた。
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