第一話 出会い。
2022/12/07 20:58 朝馬大社
12月08日、明日は俺の亡くなった友達の命日だ。
毎年、亡くなった友達の誕生会を友達の家でやっている。
今年で行われるのは3回目になるが、俺は1年目にしか参加してしていない。
亡くなった友達の名前は「花園 桜」
小学校から高校、社会人になっても一緒にいた友達だった。
そんな友達の誕生日になんで行ってないかって??
いろいろ、あんだよ……おれにも。
俺の名前は「富山 啓吾」
彼女いない歴=年齢!無職!!のダメダメオワコン人間だ。
歳は23、好きなものは焼きそば。
好きな女性のタイプは……なんてどうでもいいか。
桜が亡くなったあの日から通っていた大学をやめて、働かないと生活出来ないのでバイトをしたり、工場で働いたりしていた。
俺にとって桜は大切な友達であり、家族ぐらい大切に思っていた。
まぁ、恋愛感情も無くはなかったかな。
亡くなってからこの3年間、ずっとあの時のことを後悔している。
桜がいない人生は退屈な上になぜか早く過ぎていく。
俺はこのまま死ぬまで桜のことを忘れずに生きていくだろう、それぐらい毎日、桜のことを思い出してた。
そういえば、なんでこんな時間に朝馬大社でぼーっとしているかを言ってなかった。
今年は桜の誕生会に出ようか、考えていた事もあったがもう一つある。
世間では、コロナの影響がまだ強く残っていて俺が働いている工場もその影響を受けていた。
ようはコロナの影響で工場が潰れるから明日から無職って話だな。
「明日から無職か、、、やりたい仕事ではなかったけど給料は悪くないし、仕事内容も嫌いじゃ無かったんだけどな」
俺には昔から何か嫌なことがあると景色がいいところや雰囲気がいいところで黄昏れる癖があった。
「今日も平和だな。そろそろ帰るか、仕事探さなきゃな」
朝馬大社、ここは静岡県富士宮市にある富士山信仰が古くからある神社だ。
春と秋には大きなお祭りがあって観光客などで人があふれかえるが、こんな平日の夜には誰も人などいない。
「めちゃくちゃ静かだ。そりゃあ、そうか。ん? なんか湧珠池のほうが明るいな、あとは帰るだけだし湧珠池のほうから帰るか」
湧珠池は富士山の湧き水から出来ているとても澄んでいる池だ、中央に架かっている朱色の橋も特徴的だ。
「なんか池の中で光ってんな、ライトかなんかが沈んでるのか??」
急に光が強くなる、まるで花火みたいだ。
「まぶしい。」
突然の光に驚いて目を瞑ったがしばらくは目が霞んでいて前が見えなかった。
「さっぶぅ!!どこ!?ここ〜!!」
え、なんか若い女の人の声が聞こえるんだけど。
目が慣れてきて先ほど光っていた場所を見ると綺麗な黒い髪、髪の長さはセミロングぐらいだろうか。目鼻立ちも整っていて年齢は俺より5つぐらい年上に見える。
しかし、一番目に止まったのは胸もとにあるほくろだ、スタイルもなかなか……って!! 裸⁈ なんでだ!?
「あの、すいませんが池から上がるのを手伝って頂いてもよろしいですか……?」
その女性は顔を赤らめながら俺に話しかけてきた。
「あ……はい。手を掴んでもらえますか??」
俺はその人の手を掴んで橋の上に持ち上げた、もちろん、あんまり身体を見ないようにしたよ?見たかったけど。
「へっ!きゅしょん」
とても寒そうだ、そりゃあそうだ12月だぞ?なんで池の中に。
「あの~服とかタオルとかって……あったりします??」
「……ない」
マジかよ、どうしよ。でも、このままおいていけないよな、そこまで鬼ではない。
「これ、とりあえず着て下さい。サイズ大きいんで大丈夫だと思います。少し、待ってて下さい!!」
俺は着ていたパーカーをその人に渡して自販機に飲み物を買いに行った。
「どうなってんだ、状況が読み込めない。はぁ、まぁ、いいか。ココアでいいかな」
ガシャン、自販機から出てきた温かいココアを持って湧珠池に戻った。
橋の上にはパーカーを着た先ほどの女性が立っていた。
「すいません、戻りました。これ買ってきたんで飲んで下さい」
「あ、ありがとうございます」
彼女はココアを開けて飲んだ。
「ふぅ~。初めてココアを飲んだかもしれません、暖まりますね」
ココア、飲んだことないやついる⁇
これを見ているきみ、飲んだことがなかったらぜひ、飲んでくれ。
「あの、あなたは飲まなくていいのですか⁇ 私が一度、口をつけてしまったものですがよければ……」
「俺はあたたかい飲み物はあんまし飲まないんですよ。気にしないでください」
「そうなんですね。では、ありがたく」
女性はそういって微笑むとまた、ココアを飲み始めた。
「あの、よければ名前、、聞いてもいいですか?」
俺はその女性に名前を聞いた、それ以外に聞くことはあっただろうに。
「名前……は、木ノ花かぐやです」
これが俺がかぐやと出会ったきっかけだった。