不思議なひと
彼女は、不思議なひとだ。
ガードウィンは改めてそう思った。
清らかな月光を思わせるような白銀の髪はすんなりとしていて彼女の性格を表すようでもあったし、磨かれた湖面のような深い水銀の瞳にははっきりとした知性と思慮があり、実際フェネルは賢い女性だ。
突然襲われた運命のいたずらにもめげず、噂にも囚われないでガードウィンの本当の姿を見つけ出した。
宰相を交えて、くだらない話ばかりをしていて、ココアを飲み終わる頃、彼女は幼いころに両親を亡くし、それから働いてばかりだと笑った。必死に働いて、ようやく読み書きと簡単な計算を覚えたのだというフェネルの手は少し骨ばっている。年頃の娘としては情けない、と彼女は言うが、それがどうして美しく見えないのかが、ガードウィンには分からなかった。
しなやかな、それでいて細い手は確かに可愛らしいというのに。
彼女を初めて見たときから、宰相の言う“条件”に当てはまっていることはわかっていた。
だからこそ、彼女には自由になってほしいと思う。
そう願っているというのに。
ぐらりと傾いだ彼女に、ガードウィンは戦慄した。
抱きとめて、熱があるのだと分かってからも、そのさざ波は心のなかでざわめき続けていた。
触れている指先から、移ったのかと思うほどの熱をもって。




