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05 あれ?この展開は知ってる

「それではお姉さま、わたしたちこれから家族として式の計画を立てるの」


その声にエリザベートは物思いから覚めた。


わたくし、少しうたたねしてた?なんだか夢を見た? 寒かったし、ギルバードを思い出してた。


えっとこの家族って言うのにわたくしは含まれてないってことね。


エリザベートは立ち上がったが、戸惑った。なぜかこの先を知っている気がしたのだ。




「最後の贈り物も気に食わなかったのか」と言った王太子の言葉でエリザベートは、知ってることを自覚した。今回は我慢しませんよとこう答えた。


「最後って?まるでいつもわたくしに下さっているような言い方でございますね」と。薄く笑ってやるのはいい気持ちだ。


「あのドレスだぞ」と王太子はロザモンドのドレスに軽く顎を向けた。


「ロザモンド様のドレスですね。いつものように王太子殿下が下さいましたね。妹に」と明るく肯定した。


そう言ったエリザベートを王太子は見知らぬ者を見るような目で見た。


「ほんとうに可愛げがないですね」前の侍従が急に辞めたため、抜擢された新顔の侍従が吐き捨てるように行った。





エリザベートは王宮の廊下を歩きながら自分の記憶を整理した。


確かに自分は死んだ。あの寒さを忘れない・・・・でもなぜあの生活を受け入れていたのだ。


何故、あの男の愛を乞うていたのか?何故、侮られたままでいたのか?あの男に愛されていないからと卑屈になって・・・・愛などいらない。


あの間違えた署名はどうなった?さすがに二度目の間違いはないだろう。あの時、ロザモンド・メンドーサと書くつもりで、エリザベート・メンドーサと書いてしまった。最後のご愛嬌ってことで・・・とエリザベートは笑った。そう二度目は間違えない。


結婚式を前にエリザベートは孤児院を訪ねた。そこでキャリーと言う女の子を引き取った。


この子はある貴族に引き取られるが、語学に才能があり各国語をあっと言う間に習得してロザモンドの補佐をするようになった子だ。今回はわたしの役に立って貰う。



エリザベートと王太子殿下の結婚式の前の夜、母親のセントクレア侯爵夫人が前回のように、エリザベートの部屋へやって来た。


「王宮でもロザリンドを守ってあげてね。たった二人の姉妹ですもの・・・あなただけが頼りよ。お願いね。今までのように」そう言うとエリザベートを抱きしめた。


手を下に下ろしたままエリザベートは夫人の耳元でこう言った。


「お母様、見事な手腕でしたわね。たった二人の姉妹のわたくしの婚約者を奪わせるなんて・・・・侍女との息もピッタリでしたね」


「なにを言うの、ロザモンドに王太子妃は無理だわ。だからあなたが助けてあげて」


「ロザモンドに王太子妃は無理。わたくしもそう思います。お母様と同じ意見なのですね。でもあなたはそこで諦めなかった。わたくしを利用する事を思いついた。お飾りの第二妃・・・・・見事です。ただ、ロザモンドは自信たっぷりですわ。どんな王太子妃になるでしょう。楽しみですね。


お母様が侍女に命令して殿下がいらしたことをわたくしに伝えなかったこと、贈り物はすべてロザモンドに譲るよう命令なさったこと、婚約者であるわたくしでさえ呼べなかった愛称呼びを咎めたわたくしをぶちましたね。妹をいじめていると言い張って。わたくしをぶつ時は侍女の面前でしたね、おかげで侍女はわたくしを侮り馬鹿にしましたわ。ロザモンドが王太子妃とはね。せめてカーテシーくらいできるようにして家を出して欲しいですね。古代ギリー語の習得が間に合えばよろしいですね。せめて読めるように。


ただ、婚約解消の日、わたくしへ送られたドレスをロザモンドに着せたのは悪手でしたね。サイズ直しがうまくいかなかったんでしょうか?それに珍しく王太子殿下は自分が贈った物を覚えていたようですよ」


「エリザベート、あのドレスはロザモンドへの贈り物と報告が・・・・まさか・・・嘘よね。そんなことしてないわ」


「そういう言い方頭がいいですね。そうですわ。したのは侍女ですものね。ただし・・・あなたのお仕込みでね」


「お願い、わたくしは知らない、なにも知らない・・・・・だけど謝るわ。いくらでも謝るわ。だからロザモンドを助けてあげて」


「夫人お引取りを・・・・明日は式ですもの美容の為に睡眠が必要ですわ・・・それにしても婚約解消してからほんとに楽になりました。ロザリンドはほんとうに優秀なのですね。わたくしは寸暇を惜しんで学びましたもの。眠る暇もありませんでした。ムチの痛みがたまによみがえりますのよ」


「お願い、あなたの為を思って、厳しくしたの」


「これからはロザモンドの為を思って厳しくしてあげて下さいね。あなたとロザモンドが遊んでいる時、わたくしはムチで打たれながら勉強してましたわ。それから前から聞きたかったんですが、夫人は侯爵夫人として務まりますの?お茶会の相手って子爵と男爵でしたね」エリザベートがこう言うと夫人は唇を震わせてエリザベートを見つめた。その目に涙が溢れて来た。


「お引取りを」と部屋から押し出した。


閉められたドアにエリザベートはささやいた。


「これからをお楽しみに」





王宮の礼拝堂で、王太子とエリザベートの結婚式が行われる。


エリザベートは父のセントクレア侯爵と目も合わせず、言葉も交わさず祭壇まで歩いた。


衣装は前回同様、準備中のものを仕上げて着用した。装身具はまともなものを持っていないので、一切付けなかった。



式は機械的に終わった。


式が終わると


「お母様、お父様、お茶にしましょう。お姉さまおめでとうございます」とロザモンドは王太子に腕を絡めながら言った。


エリザベートは無言で薄笑いを浮かべて見送った。エリザベートは家族とも王太子とも口を聞かなかった。


礼拝堂をでるとキャリーが待っていて、一緒に部屋に戻った。


ケイトはロザモンドのお茶会の準備に行っていた。





夕食の席に王太子は来なかった。部屋にも来なかった。白い結婚はすぐに王宮中に広まりエリザベートは嘲笑の的になった。




ロザモンドの王太子妃教育は進まなかった。エリザベートと同じ教師が教えていたが、


「なんで、そんな意地悪なことをするの?エリザベート程度が分かることだけ教えてよ」


「これをエリザベート様はもっと幼い頃に習得されています」


「嘘を言ってもわかるわ。あいつはいつも出来が悪いとお母様にぶたれていたのよ。あなたたちだってムチでぶつくらい出来が悪かったでしょ」


「ロザモンド様、それは・・・・・」


教師たちは青い顔で言葉を濁した。




ロザモンドにかまけた王太子の執務は滞り、エリザベートの元へ書類が回されるようになった。


エリザベートは黙って処理した。そのうち、王妃も書類を回すようになってきたが、エリザベートはそれも処理した。


ある日、回って来た文官の書類を見てエリザベートは


「来たね」と呟いた。


第二妃であるエリザベートの予算に関する書類だ。前回はゼロとしたが、今回は・・・・


数字の最初に「9」でも付け足す????!!ちょっといいかも。


やってみよう・・・ばれなきゃおもしろい事になるし・・・・ばれても誰かのせいにすればいいのだと「9」を足された額で書類を通した。




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