36 事件の後にまた事件
侍女長だったミネルバ・マキリーは、叔父のマキリー子爵が責任を持って、生涯、監督すると言うことで引き取られた。
マキリー伯爵は爵位をひとつ落とし、子爵となり王都の屋敷を売って領地に戻った。領地も半分を王家に返した。
マキリー子爵の娘は離縁されて家に戻って来た。この娘はミネルバに当たった。ミネルバは、足を骨折して歩けなくなり、這って移動していると言ううわさがあるが、真偽の程はわからない。
ロザモンドを襲った犯人は誰かに大金を渡されたと自供した。誰が依頼主なのか取り調べ中だ。
この事件が起きてすぐに、ケイトの両親が揃って病でなくなったとスニーク伯爵が発表して、葬儀を執り行った。
葬儀には、やつれたケイトも参列した。彼女はなにも語らなかったが、伯爵が代わりに
「両親を一度に失ったのですよ。無理もありません。わたしは妻が心配でここに来るのは反対でしたが、妻に泣かれて認めたのです。どうぞ、妻をそっとしといて下さい」と語った。
ロザモンドの傷は命に別状なかったが、唇を切られていた。
最新の医療が施されたが、言葉を発するのが困難になり、食事も取るのも難しくなった。
ロザモンドは一人で部屋に閉じこもり誰にも会わなくなった。
事件は国家に対する反逆でもない恨みによる犯行だと分かったが、王太子への襲撃だけに、どう発表するかが、難しかった。
王宮として事態をどう収束させるかの問題もあったが、前回、この時期大きな問題が起こっていた。
王宮が事態をどう収束させるか、悩んでいる時に、災害が発生した。
土砂崩れで道が寸断されたらしい。道は時間をかければ復旧できる。だが、エリザベートは引っかかるものがあった。
南の穀倉地帯・・・・中心地はディザース・・・エリザベートはこの名前を最近、耳にしたような気がした。
いつ聞いた?・・・・・・・・前回だ。書類をもう一度貰いに行った先で・・・・・
「雨が多いからって、大げさ」「ディザースだろ」「雨くらいどこだって降るさ」
エリザベートは、急いだ。急いで歩きながら、情景を、会話を、思い出して行く・・・・・
役所に着くと、同行したタバサとアルマが手早く、報告書の束をめくって行く。
「妃殿下、一体なにを」と所長が憤慨して言うが、
「別にあなたがたの手抜きを責めるつもりはありませんが、邪魔はしないで」とエリザベートが返した言葉に、
所長は言い返して来なかった。
ディザースからの報告書を束ねると、エリザベートは王太子の執務室へ、向かった。
そこでは、フレデリックとギルバード、宰相が集まって協議していた。
「現地からの報告書」と言いながら、机に置くと、アルマが持って来た椅子に座った。
「これをどこから?」とフレデリックと宰相が呟くのに
「もちろん、書類棚からよ」とエリザベートは答えた。
「道を復旧させて小麦を輸送するまえに水が来るとエリザベートは思うのか?」と言うギルバードの問いかけに
「はい、小麦を救わなくてはいけません」とエリザベートが答えると
「妃殿下それは悲観的過ぎるのでは?氾濫が起こるなんて」と宰相が言った。
「そうなればそれでいいと思います。わたくしは最悪を想定して最悪に対処する方法を考えたいと思います」
「どちらにしても他国のわたしだけが現地に行くのは無理があります」とギルバードが言った。
「王族として現地へ行ける者は?」のギルバードの問いかけに
「わたくししかいないでしょう。ロザモンドは怪我してますし、殿下の付き添いがなくては・・・・・その不安定ですし・・・・・」とエリザベートが答えると、宰相がほっとしたように
「妃殿下お願いします」と頭を下げた。
「・・・・危険だ」と呟いたフレデリクは、しばし無言でエリザベートを見たが、
「そうだな、我が妃に行って貰おう」と言いなおした。
エリザベートが思い出したのはディザースの河が氾濫したことだった。
大雨が原因で小麦が水に浸かったのだった。
今回、調べると現地から報告と警告が来ていたが、いつものことと、事態を甘くみて上へ上げられていなかった。
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