35 襲撃犯の話
襲撃犯、マイク・ガーナが仕えていた主人、アルフ・バークは子爵の跡継ぎだったが、婚約解消された。
マイクはアルフの面倒をちゃんとみていなかったと、解雇された。
そのため、弟の学費が払えなくなり、鉱山で働くつもりで、準備しているとアルフ・バークから、ミネルバ・マキリーと言う女性を紹介された。
彼女は王宮で侍女長として働いていたが、理不尽な理由で解雇された。その為、アルフ・バークが、不遇な身の上になってしまったと説明された。
ミネルバは王太子妃のロザモンドに、身の程を教えてやりたいので、マイクの力を借りたいと言う事だった。
それによって、ロザモンドが反省すれば、ミネルバは侍女長に復帰できるし、アルフ・バークも元に戻れる。そうなるとマイクも元に戻れる。
『王太子妃に身の程を教える?正気なのか?』とマイクは思ったが、マイクの立場で断れる話ではなかった。
そこで前金で弟の学費を全額払った。家の籍も抜いた。
「失敗は許されないぞ。おまえだけの問題ではない。おまえの家の問題だ」とアルフ・バークが得意顔で言って来たが、返事をせずにその目を見返した。
いつもと違うマイクに戸惑ったようだが、アルフはなにも言わなかった。
当日は、友人同士の賑やかな一団の一人として入場した。武器は友人の友だちが、スカートの下に隠して持ち込んだのを受け取った。
「わかってるな」とアルフが肩を叩いて来たが、無視した。
ロザモンドを脅そうと機を見ていたが、誰かに先を越された。それなら、こちらは王太子を脅そうと思った。
ここで、なんで王太子を襲おうと思ったんだ。ダメだろとあちこちで声がした。
それにマイクは
「なにもしないわけにはいかないでしょう。お金を貰ってますので」と答えて、説明を続けた。
急なことなので、慌てたが、どうにか切りつけて逃げ出した。
打ち合わせ通り、バーク子爵家の馬車に隠れた。なかなか馬車が動かなかったが、じっと待っていたら、なにやら話し声がして、馭者がどこかに行った。
不安だったが、自分に落ち着け、落ち着けと言い聞かせて待っていたら、いきなり馬車に人が来て捕まった。
わけがわからない。とマイクの説明が終わった。
ここで再び、ギルバードが話し出した。
馭者に食事を出して、その間に馬車を調べさせて貰った。異常があったのはバーク子爵の馬車だけだった。
バーク子爵の家と、ミネルバが同居している、マキリー伯爵の屋敷は昨晩、調査させて貰った。ここまで、説明した所で、一人がマイクに殴りかかった。
アルフ・バークだった。マイクはおとなしく殴られた。
「アルフ様、あの時、令嬢を個室に連れ込むのを、もっと力づくで止めなくてすみませんでした。その為、この話を持ちかけて来た、あの侍女長さんが首になったそうで・・・・・すみませんでした。これであの時の人たち、多分全員が廃嫡でしょうね・・・・本当にすみませんでした。ロザモンド様の襲撃に失敗して・・・・脅され・・・いえ、指示されたのに失敗してしまいまして・・・・」と、ここで頭をあげてぐるりと周りを見ると大声で言った。
「くたばりやがれ!!」
部屋は静まり返った。
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