34 取り調べ
取り調べは、大広間で行われた。容疑者たちは、同室だった者同士、固まって部屋に連れて来られ、お互いに話さないように言われた。
だが、知り合いを見つけると、近寄ってひそひそと話をしてしまった。しかしそれを咎める者はいなかった。
そして、会場に集まったなかに、誰かを探すようにまわりを見回している者がいた。
やがて、会場に王太子と、隣国の王子であるギルバードが現れた。王太子は右腕を首からつっていた。
礼を解くよう王太子が言うと、頭があがり王太子に視線が集まった。
「ゆうべの騒ぎで、負傷してしまい取り調べが今日になって、すまなかった。話が済んだ者から帰宅して貰う」
広間はざわついた。
「なにがあったか、よく見なかった者もいるようだな。正確な情報を知らずに噂に振り回されるのはよくない。わたしから説明する」とぐるりと見渡して
「我が妃の、ロザモンドが襲われた。犯人は給仕に化けていて、隠し持ったナイフで、彼女に斬りかかった。幸い命に別状はなく、静かに休んでいる。犯人はその場で取り押さえられた。
同時にわたしも別の者に襲われた。犯人は客としてやって来ていたが、その場から逃げてまだ捕まっていない」
部屋のざわめきがおさまると
「知っていると思うがこちらはギルバード。隣国の王子だ。彼とも協力して犯人を見つけるつもりだ」
ギルバードは黙って頭を下げた。
「それではひとりずつ、係員と話してくれ」
その言葉を合図に紙の束を、持った者がなまえを呼びながら相手を探し、椅子に案内する。
紙には質問事項が書いてあるようで、それについて答えて行く。
◎ロザモンド妃殿下を恨んでいる人に心あたりがありますか?
この質問に大抵のものは、口ごもりながら、噂を聞いただけだとか、前置きをして、ケイト。ケイトの両親
そう答えた。
◎王太子殿下を襲撃した者の顔を見ましたか?
この質問に対しては見たけど、はっきり見たわけではないと答えた者と、遠くにいたので見てないと答えた者に分かれた。
もちろん、これ以外の質問は雑談に混ぜられて、それとは知らずに答えていた。
質問に答えた者は、別の部屋でお菓子とお茶を出され、バルコニーに出て王宮の眺めを楽しんだ。
「お城に泊まってお菓子も食べて、逆によかったかもね。エリザベート様とお話したし」とある令嬢が友人に話しかけると
「うん、そう思う。でね、このお菓子貰って帰りたいね」
「うん、やっぱりお城だよね。やっぱ古代ギリー語を混ぜて話したのがよかったのかね」
「そうだよ、必死こいて覚えてよかったよ」
「エリザベート様もちょっとびっくりしてたよね」
大半の者が広間を出て行った。残された者は不安そうにお互いを見ていたが言葉は交わさなかった。
静かな部屋に緊張が溜まって行った。
そこに男が一人広間に入って来た。
その男を見て一人が
「何故、お前がここにいる」と言った。何人かが慌てたが、すぐに、そしらぬ振りをした。
ギルバードが口を開いた。
「この男は夕べ、バーク家の馬車に潜んでいる所を捕まえた」
必死に素知らぬ振りをする者、逃げようとする者。犯人を睨む者、下を向いて涙をこらえる者、流す者
「ここにいる者は王太子の襲撃を知っていた者だ」
「違う、ロザモンドを・・・ロザモンド様を襲うはずだった」と一人が言うと全員が
「そうだ、そのように頼んだ。いくらなんでも王太子殿下を」などと口々に言い始めた。
静かになった頃、
「そのつもりかも知れないが、王太子を襲撃した事実は変わらない」とギルバードが言った。
「自分で皆に説明して」と言われて、襲撃犯は話し始めた。




