26 劇は大成功
さて、王妃主演の演劇、「わたしの理想がここにいる」の本番を前に会場の小広間で、衣装合わせが行われている。
主役の王妃の衣装は当日のお楽しみと言うことで、王妃はここにいないが、他の出演者は全員、揃っている。
妃殿下二人の母親の侯爵夫人は結局一度も現れず、ヒロインの家庭教師の役は無くなった。
ロザモンがやっていたヒロインの家の使用人も無くした。その分、ロザモンドがやっているヒロインの侍女役の出番が増えた。つまり、セリフが増えて当初の目的がかなうようになった。
ロザモンドはセリフが増えたのと、衣装が王妃に比べて地味なのが不満だった。
フリージアの衣装はとてもよく似合うし、セリフの発音もきれいで、エリザベートは彼女に朗読の仕事をさせてみようかと考えている。
ディング夫人が、皆にどこか気になる所はないかと尋ねるが、皆首を横に振った。
それではこれで終わりだと、後を任せて退出しようとするエリザベートの所に、珍しく宰相自らがやって来た。
「妃殿下。お話が」とエリザベートに向かって話しかける。こんな人目の多い所でとエリザベートはいやな予感がした。
「実は見学したいという申し込みがたくさん寄せられていまして・・・」
「断ればいいでしょ。王妃殿下の為の舞台ですよ。それに陛下でさえこっそりなんですよ」とエリザベートが言い捨てようとすれば、素早く前にまわり
「それがですね。王妃殿下に直接、お願いした方たちが・・・・・ご友人が王妃殿下を応援したいと・・・だいたいですね。劇をやるのに客を断るなんて言うのは」と宰相は正論を吐いた。
思い切りいやな顔をしたエリザベートは宰相に向かって、
「それは・・・ご存知のようにこれは勉学として・・・いいでしょう。宰相閣下、あなたが判断なさればいいのでは?」と早口で言えば
「妃殿下、ご謙遜を・・・あなたの作り上げた舞台は素晴らしいですよ。みなが楽しみにしております」
「・・・・・どうぞ、お好きに。王妃殿下のご友人たちを、宰相閣下がご招待するのを断れませんわ」
出演者たちはこの会話をわくわくして聞いていた。エリザベートが見学者を入れないと言う考えを理解していたが、大反対だったのである。
王妃殿下の友人の友人や、城で働くもので、小広間に用意された椅子は埋まった。
年の割に可愛い服を着こなした王妃殿下も注目を浴びたが、フリージアの人気が高かった。
それに可愛くて動き安い衣装にも、注目が集まりこれは、貴族の部屋着、庶民のおしゃれ着として流行の服装となった。
終演後に、王妃を訪ねてセリフの美しさと、可愛い舞台姿を褒めたあと。エリザベートはロザモンドの所に行った。
よくセリフを覚えた事を褒めて、もっと早く教えてあげればよかったわねと抱きしめて背中を撫でた。
それから、実家のことを話した。
ロザモンドの反応は思った通りで、養子のことよりそんなことで舞台にでなかった母親に怒りを覚えたようだった。
「まぁいいんじゃない。あの人、劇の稽古にいくら誘っても来なかったのよ」どうやらロザモンドも誘っていたようだ。
「お母様はわたしがやればちゃんとできることを認めたくないのだわ・・・・・だから勉強したいわたしの邪魔をしていたのよ・・・だいたい養子を貰うなんて早くわかっているのに急に来ないなんて・・・・」とロザモンドは舞台用に地味に結った髪を解いてもらいながら、憤慨してこう言った。
「養子?二人の好きにすればいいわ。お姉様お祝いのお手紙はわたしが書きます。お姉様は書かないで」
「お願いね」とエリザベートはガーベラとジャスミンに笑いかけると部屋を出た。
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