22 通し稽古
今日は通し稽古だ。
ラズは朝から王妃殿下の髪を結いに行った。舞台に映えるような、大きなリボンをつけ、動き安いようにとディング夫人が、考えた衣装を着た王妃は興奮で目をキラキラさせていた。国王も準備の様子をちらっと見ては追い出されて楽しそうだった。
ラズはお菓子が買えなくて泣く少年役をやる為に、男の子の衣装を着込んで、髪を帽子で隠した。
エリザベートの姿がないのを王妃殿下が気にしているので、ラズは妊婦さんのガーベラに聞きに行った。
「それがね・・・・」とガーベラが話しだした時、エリザベートが、珍しく取り乱した様子であらわれた。
「お待たせしました。母が急病のため、わたくしが代役を致します」
エリザベートが手にした丸めた台本は、なんだか危ないものに見えた。いくら注意してもうろうろするのをやめなかった国王が、執務室に戻って行った。
執務室に行っても国王はなにも出来ない。でもその足取りが昔のようなのを見た王妃の目は潤んでいた。
さて、通し稽古と言うことで、発音には目をつぶり流れを確認していく。
剣でちゃんちゃんやり合う場面では、モップを剣に持ち替えたフリージアの同僚が
(せいいぎの味方をやっつけろ)(せいぎいの味方をやっちまえい)(せいぎの味方うぉやつけろ)とか意外に上手な発音でくるくる回っている。
ディング夫人は舞台をしっかり見ながら、そばに置いた助手二人にいろいろ言っている。二人はそれをどんどん記録していた。
王妃の侍女は台本に印をつけながら、舞台を見ていた。
最後にフリージアと王妃が抱き合うと、出演者も含めて拍手をしてエリザベートが戸惑った顔をしたのが皆にとって新鮮だった。
「(正義の味方をやっつけろ)ってずいぶんわかりやすい演出だね。(我が妻はいまも謎めきて微笑む)」とフレデリックが入って来て笑った。
「母上、(永遠の若さの泉・・・)よくお似合いで」
「ロザモンド、似合うぞ」
「楽にしてくれ、邪魔しに来たのではない」とエリザベートに近づいて
「剣の手ほどきは?少なくとも持ち方くらいは」と王太子が言うと
「けっこうです」「「「お願いします」」」「「「「王子様が、」」」」後ろを見て黙らせたエリザベートは
「いりません。出演者は皆、可愛くて悪役の顔じゃないのです。だから、主役の(正義の味方)を強調してます」
「なるほど・・・・」と王太子が言うと王妃が
「邪魔だから出て行って」と追い出した。王太子が部屋を出るとケイトがすっと部屋を出て行った。
それに気づいた者たちは目配せをし合った。気がつかない振りをしているエリザベートは誰が目配せしているか確認した。
講評の為に、前に出たエリザベートは、出演者を見て
「セリフはゆっくりでいいので正確に、覚えてないものは台本を持ったままで大丈夫です。悪役の人はこんど、発音をじっくり教えます。連絡しますのでその時来て下さい。衣装のことでディング夫人からなにかありますか?」
「ありがとう妃殿下。動きやすさ、着心地を教えて下さい。後で話を聞きに行きますし・・・その皆さんを見ていたらもっといい物を作りたくなりました」
「はい、それでは悪役の所と最後の所をもう一度やります」
王妃お気に入りの場面を、もう一回やって通し稽古を終わりにした。
稽古が終わると王妃は迎えに来ていた王と侍女と共に帰って行ったが、お茶とお菓子を用意してくれていた。
隣の部屋に行って遠慮なく食べるように指示すると、ガーベラがフリージアの同僚を誘い、ジャスミンはこめかみを押さえているロザモンを助けながら連れて行った。
「セリフが多いと大変よね」と笑うジャスミンをロザモンが「もう」と言いながら、軽く打った。
ロザモンドは部屋に戻って休むと言って、ラズと一緒に帰って行った。
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